新規開拓

気になるお店があったものの、なんとなく入りづらく結局はいつものお店に吸い込まれていたここ最近。それでも、頭痛が朝から酷かったので、いい気分転換になるのではないかと思い、勢いで入ってみました。すると、スタッフさんもお店の雰囲気も感じがよく、ほっとしてブース席へ。名古屋のモーニング文化に慣れてしまっていたので、モーニングのポスターがずっと前から気になっていたんだな。そして、ピザの選択に迷い、男性の店員さんに好みを聞き、ベーコンと卵のピザと紅茶を注文。最初から選択肢から外れていたマルゲリータ。毎回マルガリータと間違えるのは私だけ?頭痛いとどうでもいいことがぐるぐる回ってしまいます。こんなで書ききれるのか?!

風来坊の父は、私に自分の考えを押し付けることはありませんでした。自分の中で信念があるのに、それを子どもに伝えることもなく、ただ後姿を見ていました。そんなある日、祖父がキッチンで隣町のちょっとした噂話を私に話してくれた時のこと。祖父とまともに話さない父が、素通りするかと思いきや、たまたま聞こえてきたらしく、わざわざ立ち止まり、二人に聞こえるか聞こえないかぐらいの声でぼそっと呟いてきました。「そういった差別はよくない。」と。もちろん祖父も私もそんなつもりはなく、ただ風に流れてきた内容をなんとなく話しただけのこと。それでも、父の中で何かが引っ掛かったらしく、珍しくはっきり自分の意見をたったひと言伝えて去っていったので驚きました。偏見や差別というものをとても嫌っていた父、私に“ニュートラルであれ”と伝えてくれたのは、何よりの愛情だったのだと思っています。知らず知らずのうちに、父の信念を引き継いでいたのだろうと。

何気なく和室で父とテレビを観ていた学生時代。父子家庭のお父さんが、幼稚園の男の子の為に、朝早く起きてエビフライを揚げている姿に、涙が一滴こぼれました。「お母さんがいないということで、この子が寂しい思いをしないように、お父さんだから適当なお弁当だって思われないように、自分ができることを精一杯やってあげたいんです。」そう語っていて、言葉になりませんでした。ふと横を見ると、父もまた沢山の気持ちがこみ上げたのかぐっと涙を堪えていて、優しい時間が流れました。その子は、どれだけのお父さんの愛情に包まれて成長していくのだろうと思うと、なんだか堪りませんでした。

父が実家を出る時、私に伝えてくれました。「籍は抜かない。Sが大学を卒業して就職するまではと思っている。」銀行員という立場ももちろんあったと思います。それでも、どうしようもない人でも、親のことで社会から何か思われてはいけないと感じてくれたのだと思いました。そして、大学を卒業し、籍はそのまま。姉にそのことを話すと、「お父さん面倒くさがり屋だから、今の状態が楽なんじゃない?」とあっけらかんと言ってくれて、なんとなく落ち着くところに落ち着いたのかと安堵していました。そんな時、父と姉妹で会う機会があり、そろそろ籍を抜きたいとのこと。彼女もいるし頭では分かっていても、安心した後だったので気持ちの整理がつかず、どうしようもなく悲しくなってきて、父の家を飛び出しました。泣きながら車を走らせ、あの時もどこへ行っていたのやら。驚くほど記憶がそこだけ飛んでいることが不思議。その後、姉がとても冷静に話してくれました。「お父さんには、Sの気持ちは全部話した。どんな思いで実家を出てもらい、お母さんとおじいちゃんを支え、大学を卒業してもお父さんが法的に繋がってくれていることで、娘として嬉しかったかということ。でも、あの人鈍感だから、人の気持ちが深く分かる人じゃないし、そもそも分かっていたらあんたはこんなに傷ついていないから、本当の痛みはピンと来ていないと思う。それでも、もう少し考えてみると言っていたよ。もう勝手にしてって私は思うんだよ。それでも、Sのこれまでの気持ちを思うと、悔しいし腹が立つし、結局自分のことかって情けなくなるけど、いつかお父さん、あんたの気持ちに気づく時がくると思う。もう、遅いわ!って言いたいけど、Sが諦めていないから。」「・・・ありがとう。もうお父さんを法的にも解放してあげた方がいいのかも。別の幸せが待っているのなら。でもね、熱しやすく冷めやすいお父さんが、その道を選んだら結局後悔する気がするんだよ。体が弱った時、やっぱり家族だって思うんじゃないかって。」「本気のお人よしだな。あんたのバカさ加減に笑えてきた。気持ちも分かった。でもね、これから先、そんなSの優しさを都合よく使う人も出てくる。自分を守ること、もう少し覚えなさい。少なくとも私は、あんたを振り回す両親を好きにはなれない。」大阪に大学を決めて二人で暮らそうと言ってくれたこと、オーストラリアに短期留学した時、もう帰ってこなくていいからと言ってくれたこと、“自分を守れ”と全力で伝え続けてくれていたのだと改めて思いました。

新規開拓、一緒にしようよ。過去に振り回されることなく、未来が見える場所。そこで、自分を大切にすると約束する。