時空を超えて

6年生になり、初めての参観日がやってきました。来ないでねとは言われなかったので、最初から行く気ではいたものの、分散参観日ではなく大人数なのが分かっていたので、また気合いがいるなと親子でプチ騒動。それでも、いつものように送り出し、やることをやって家を出ました。途中で地区長さん宅へ書類を投函する予定になっていたので、遠回りをし、駐輪場に停めると近くを通りかかったややご年配の男性が自転車で思いっきり転がるのが視界に入り、慌てて駆けつけることに。ヘルメットを装着し、頭から落ちていないことも分かり安堵していると、膝を擦りむいていることが分かりました。「大丈夫ですか?」「ちょっと転んじゃって。いやいや、擦りむいただけだから大丈夫です。」そう言っても、なんだか辛そう。とりあえず、壊れて転がったベルを拾い、男性の自転車を端によけ、様子を伺うとゆっくり起き上がってくれました。それを見て安心し、「お大事にしてください。」とベルを手渡しするとお礼を言われ、恐縮されながらお別れ。この間、公園の管理人さんに息子の自転車を直してもらったんです。その優しさを今日渡せて良かったです、そんな気持ちを心の中で届け、その場を離れました。時計を見ると、まだ時間に余裕があって。何があるか分からないから、早めに出て良かったな。

そして、門をくぐり、ゆっくりと教室の前に着きました。すると、後ろから声をかけてきたのは、幼稚園時代からお互いなんとなく挨拶はしたことのある男の子のお母さんでした。「いつもR君と仲良くしてもらってありがとうございます。」「こちらこそ、ありがとうございます。算数の問題、時々助けてもらっているみたいで有難くて。」そう話すと和やかな空気が流れ、息子が繋げてくれるご縁に今日も感謝だな、そんなことを思いました。そして、その場から離れ、廊下で待っているとすぐに違うお母さんが声をかけてくれて。「Sちゃん!」彼女は3年生の時に同じ広報委員で、クラスが離れたのですっかり疎遠になっていたので、弾けた声が懐かしく、期間が空いてもぐっと距離が近くなるこの関係の心地よさを感じました。「あのさあ、私、転職したの!」久しぶりに会ったのに、彼女はいつも直球勝負。行間はなく、上がってくる言葉と再会を嬉しそうに喜んでくれた彼女の真っ直ぐさにちょっと笑ってしまいました。「え~!そうだったの!」ととりあえず同じ温度に到達。「今ね、保育園の調理をやっているの~。」「栄養士の資格持っているから、それは良かった!」「でもね、別に資格なくても働けるんだよ~。」とどこまでも飾らない友達は今日も素敵だ。育児と仕事の両立って難しいねと明るく弱音を吐いてくれたこともあったので、彼女が磨いてきたものが活かされる時が来て、嬉しくなりました。そして、時間になり教室に入ると、息子もこちらに小さく手を振ってくれて。教科は国語、先生若いし、超爽やかスポーツマンではないか!と息子の情報と答え合わせをしながら驚いていると、友達がぼそり。「先生ね、3年生の時に教育実習で来ていて、○○も一緒に遊んでもらっていたんだって。」!!なんと?!とびっくり。授業はみんなでざわざわ考えるいい感じの時間が流れていたので、また彼女が伝えてきて。「あのさあ、○○そろばんやめちゃったんだよ~。」授業に全然関係ないし!と思ったら、なんだかツボにはまってしまい小さく爆笑。「学校に元気に行ってくれるだけでまあいいかって思ってさ。」終始賑わっている授業なので全然迷惑にはなっていなかったのだけど、会えて嬉しかったという感激を前面に出してくれるので、その気持ちに沢山の元気をもらえたようでした。友達っていいね、あなたに会うといつも思うよ。

さてさて、先生は3年前に実習生でこの学校に来てくれていたのかと思っていると、たばこの匂いが鼻を掠めて。それは、父が実家を出て、学費の為に深夜まで日本料理店でバイトをしていた日のことでした。教職課程も受講し、タイトなスケジュールで毎日疲弊。仕事の前に予め着物を着て、休憩スペースで教職のレポートを書いていました。すると威厳のある調理長がタバコを吸いながら、さらっと自分の苦労話をし応援してくれました。「Sちゃん、頑張れよ!」そう言ってタバコの匂いを残し、片手を挙げて去って行く調理長の後姿を見て、涙が溢れそうになった二十歳の頃。投げ出したいと思ったことは山程あって、それ以上に助けられ、教育実習の前日まで来ました。嬉しくて、全然寝られなくて。その夜のこと、過ごすことのできた4週間の光ある実習を忘れることはありません。
ふと我に返ると、グループ学習の席に配置換え。そして、保護者も子供の近くに行き、まさかの参加型が待っていました。子供達が説明する料理は、どんなメニューなのかその伝え方を学んでいくというもの。4人の席でみんなが順番に発表し、和気あいあいとした雰囲気がそこにはありました。すると、プレ幼稚園の時に知り合った女の子のお母さんが久しぶりの再会で伝えてくれて。「この間ね、駅の近くで見かけたの!仕事行く前だったよね?!」これまた全然関係ない話を振ってくれるので、余計に笑えてきて。私にとっては今この瞬間も仕事であり、大事なひとコマで綴られていくよ、そんな気持ちでわいわい。もう出会って10年か、一緒に成長してきたね。そんな感慨にふけっていると、先生がケースを渡してきて、良かったらお母さん達も即興でどうぞ!とまさかの無茶ぶり。それを見た息子の友達が、さっと一枚取りお母さんに渡し、うまいこと発表してくれました。そして、それを見た息子もささっと取り、にやっと笑って私に渡してきて。もうやるしかないじゃないか!「ええと、玉ねぎと鶏肉を小さく切って、ケチャップと一緒に炒め、そして、最後は卵で丸めますっ。」分かった!と7人に言われ、「せーの、オムライス!」と言ってくれた後、息子のおっとりした友達がぼそり。「それって作り方じゃん!」その言葉でみんなが大笑い。ツッコミどうもありがとう~。

そんなこんなで楽しい時間は終わり、懇談会はさぼっていつもの公園で息子を待っていました。すると、元気よく帰る途中で先生の話になり、教えてくれて。「先生ね、○○先生(4・5年時の担任、今は隣のクラス)の小学校時代の教え子なんだって。」え~!!!そんな巡り合わせってある?!教え子ということだけでなく、同じ6年生の担任だなんて。どんな想いで日々お互いが向き合っているのだろうと思うと、堪らない気持ちになりました。旧担任の先生に、直接ありがとうが伝えられなかった、いろんな感情があり過ぎて。今の担任の先生に託そうか。こちらが驚く程、大事に届けてくれるかもしれない。感謝が人を通し何倍にも膨れ上がる、この一年、どれだけの感動が待っているだろう。