ナゴヤドームで1日バイト

野球が大好きな私は、大学時代にたった1日だけナゴヤドームでアルバイトをしたことがありました。

同じ学部の男友達に、「どうしても一人スタッフが足りないから友達を連れてきて、と頼まれちゃったんだよ。」と懇願され、とても困っているのが分かったので、1日限定で引き受けることに。
内容を聞いてみると、シーズンシートを買ったお客様の準備をする場所で、裏方の仕事だから大丈夫と安心させてくれて。

友達の車で大学から直接ナゴヤドームへ。なんとも言えない不思議な気分で到着し、友達の上司にあたるチーフに挨拶をし、ロッカールームを案内されると、とっても短いキュロットスカートの制服を渡されて、固まりました。聞いてないよ~。
と、友達に心の中で毒づいていたのですが、お客様のいない試合前にスタッフの皆さんとテーブルの上にランチョンマットや箸を並べる仕事が、なんだかとても新鮮で、腹立たしさも消えていました。

その後は、レフト側の売店を案内され、そのシートは1ドリンク付きだったので、ビールの用意をすることに。
試合は中日対ヤクルト戦。レフト側はヤクルトファンが多く、ビールを売店で注ぎながら話しかけられました。「ね~ちゃん、何ファンだい?」
もちろんドラゴンズファンだったのですが、ちゃんとスタッフの方に対応を聞いていたので、「野球は好きなのですが、特に好きな球団は決めていないです。」と無難に答えて、ほっ。
でも、ヤクルトファンの方と直接話す機会もあるなんて、裏方の仕事じゃないよっ。

売店内にはモニターもしっかり設置されていて、試合の様子を見ながら、攻撃や守備が終わるタイミングでお客様が増えることを把握し、商品の在庫も減ってきたので、私が取りに行くことに。
たまたまチーフと遭遇し、一緒についてきてくれました。倉庫に着くと数脚の椅子があり、「少し座って短時間だけ足を揉みましょう。」と声をかけてくれて、感動。
私が1日限定バイトなのは知っていた、それでもこちらのことを気遣い、裏でこうしたことをして、スタッフは最後までやりきるんだよと身体で教えてくれた、タイトスカートとパンプスを履きこなす、格好いい女性でした。

売店に戻り、スタッフの方達にどうしてドームで働いているのか率直な疑問を投げかけてみたら、「野球のルールはよく分からないけど、この雰囲気がとても好きだから。臨場感がありますよね!」と可愛い女子学生さん達が、目をキラキラさせながら話してくれて、そこにいられてとても胸がいっぱいでした。
試合が終了し、ロッカールームに向かう途中、沢山のスタッフの方達とすれ違い、充実感一杯の「お疲れさまです。」を何度も言ってもらった時、選手やお客様だけでなく、こんなにも多くのスタッフの方が裏で支えて、一つの試合が行われていたのだと、じーんときた帰り道。

車で待ってくれていた友達に、「お金よりも、経験の方が勝ったでしょ。」と言われて、やられたと思いました。私が仕事後に何を感じるのか、最初から分かっていたのね。