6年生、最後の音楽会がやってきました。なんだか、子供よりもこちらの方が緊張してしまって。今年度のイベントは、全てが最後なんだなと。前夜、息子が舞台に立つ位置を二人で確認し、就寝。そしていつもの朝がやってきました。青空を見上げ、気持ちのいい秋の空気を感じながら、ハイタッチをしてお別れ。後でね!こんな日も、あと少し。
そして、家事をこなし、学校に着くとすでに体育館前には大勢の方が並んでいました。すると、後ろから声がして、目の前に広報委員で一緒だった友達が現れ、嬉しくなって。パッとその場が明るくなり、久しぶりの再会に大盛り上がり。「男の子の服ってすぐにサイズアウトしない?」と彼女。「そうなんだよ~。少し大きめのズボンを買っても、すぐに膝を擦って穴を開けてくる。」「だよね~。もう少しで中学の制服になるから、それまで頑張ろう!」とわいわい。そして、順番に体育館の中へ。味わうことが全て一度きり、だからその分私の中で濃度が高くなるのかもしれないな。そんなことを思いながら、二人で席に着くと前に座っていたのは、彼女の男の子ママの友達でした。どうやら、体調が悪く少しの間学校をお休みしていたよう。「うちはたて笛だから、その他大勢で良かった~。」男の子ママならではのさっぱり感なのか、ツボにはまってしまい初対面なのに一緒に笑ってしまいました。一体人は、生まれてから亡くなるまで、どれだけの人に出会うのだろう。そういった気持ちでいると、他の学年が終わり、6年生が入ってきました。1秒1秒が愛おしい。息子がこちらに気づき、小さく手を振ってくれて。撮影は下手くそだけど、ビデオに記録を残しておくよ。心の中で届け、始まった合唱。息子からKiroroの『Best Friend』(作詞作曲:玉城千春)を歌うことを聞いていて、イントロが流れた時に一気にこみ上げそうでした。その曲は大学時代に良く聴き、何度も励まされていて。画面越しから息子が歌う姿を捉え、左隣には学生時代をいつも思い出させてくれる友達がいて、これまで自分を支えてくれた沢山の人達の笑顔が頭を掠めていきました。その中で、ふと塾の講師をしていた頃の仲間を思い出して。元々理系で、一浪をして国立大学に入学した苦労人。頭がキレッキレの彼女はなぜか私のことを気に入ってくれて、時々お茶をするように。手紙を書いて渡したこともあり、伝えてくれました。「Sちゃんがしてきた苦労って、こちらの想像を超えるようなもので、だから簡単なことは言えない。でも、Sちゃんの筆跡ってしなやかで、どこか自信のようなものも感じた。それだけの思いをしてきたからで、超えた人だから届けられるものがあるんだなって思った。私ね、女友達と話していても、論破しちゃうからよく喧嘩するんだけど、Sちゃんは何か違う。そういう人に出会ったのは初めてで、だからSちゃんがやり残したことがあるって思っているなら、司書の夢を本気で応援したい。」元々左利きだった私は、幼稚園の先生に鉛筆と箸を右利きに矯正させられて以来、字を書くことがコンプレックスで、書道の時間は苦痛でしかなかったのに、こんな風に感じ、深い優しさを自分の言葉に変換して伝えてくれる人もいるんだな。こういう人に出会うから、まっすぐ生きられるのかな、そして、そういった気持ちを伝えてくれた彼女もまた、浪人中きっと苦しかったんだろうなと。合唱が終わり、合奏の準備の為の間ができました。こんな“間”も好きなんだよな。そして、軽やかなサンバを6年生みんなで演奏してくれました。照れながら合奏をしたあなたのたて笛、覚えておくよ、おばあちゃんになってもずっと。曲が終わり、ビデオを閉じ、息子に手を振り体育館を後にしようとすると、担任の先生の後ろ姿が見えました。怪我をし、運動会に来られなかった先生、今回の音楽会が先生にとって特別なものであったことが、その表情から伝わり、動かない背中がいろんな思いを届けてくれました。先生、ありがとう、子供達も分かっていますよ。
さてさて、友達と体育館の外で、笑顔で別れ、高くなった秋の空を吸い込みゆっくり帰ってきました。すると、ポストには一通の手紙が。よく見ると、教育委員会からのものでした。『指定学校変更通知書』その文字を見て、大泣きしてしまって。息子の中学への学区外申請が認められ、今の友達と一緒に進学できることが決まりました。すごいタイミングだなと感極まった時間。父が実家を出て、母や祖父がおかしくなり、途方に暮れそうになっても、途方に暮れている場合じゃなくて、誰にも相談せず一人で越えようとしました。誰に相談すればいいかさえ分からなかった、本気で泣くのはもっと後にしようと。今回、学区外申請をするにあたり、まず5年生の段階でその当時の担任の先生に相談しました。中学校の定員がいっぱいで、R君が入れないということはないので、まずその点については心配しないでくださいね、そして時期が来たら教育委員会に問い合わせてみてくださいと。その安心をもらい、上の方と面談をさせて頂きました。息子の風邪が移り、まともに声が出ない状況で、それでも目一杯彼の繊細さを伝えました。すると、中学3年間、心と体の成長が著しいこと、その時間を大切にしてほしいと伝えてもらい、胸がいっぱいに。その後、今の校長先生に連絡して頂き、おそらく今後通う中学の校長先生にも伝えてもらったはず。それだけの大人の方達が、息子の心を守ろうとしてくれた結果の変更通知書だと思うと、感謝の気持ちが溢れました。一人でがむしゃらに頑張ってしまったあの頃の自分も、報われた気がして、こんな風に私の心を守ろうとしてくれた方達、きっと沢山いたんだろうなと。息子のベストフレンド、中学でも、長いこれからの道のりの中でも見つかるといいな。もう連絡は取っていないけど、司書の道を照らしてくれた友達は、私の中で一生の宝物。