支えてくれる人

どんよりとした天気で、全く食欲がわかなかった今日、雰囲気で食べられるのではないかと出向いたカフェのモーニング。ぼんやりしていると、入り口近くで手を振ってくれたのは、ミルキーのKさんでした。どうやらテイクアウトだったらしいのですが、せっかくなので席を勧めると嬉しそうに座ってくれました。「お食事の邪魔をしてしまってすみません。」「いえいえ。意外なところでお会いしましたね。」そう言いながら、楽しく談笑が始まりました。そして、こちらの話をする中で伝えてくれて。「○○さんが大きな手術を乗り越え、今も治療中と聞いて、なんだか僕の話ばかり聞いてもらっていて、悪いことしたなとも思ったんです。でも同時に、ご自身が辛いからこそ、相手の痛みを深く感じ取ってくれているのかなって。僕もあなたの力になりたいです。再発することなく、完治されることを本気で祈っています。」なんだか、沁みるなと思いました。食べていたパニーニの味よりも、この時感じた想いを忘れないでいたいなと。自分の投げた球が、なんの狂いもなく真っ直ぐに返ってきた時。「○○さん、自分が苦しい時に傾聴ってなかなかできることじゃないです。僕は、あなたのそんな思いに助けられました。ありがとうございました。」もうね、こんな言葉をかけてもらったら、吹き飛んでいくよ、その日の不調も、なかなか越えられていないことも。彼の人生を心から応援したいと思った、店員さんまで微笑む温かい空間でした。

高校受験の時に覚えたスリランカの首都、スリジャヤワルダナプラコッテ。これを覚えたからといってここまで役に立ったことは一度もないのですが、みんなで弱音を吐きながら受験を頑張ったなという達成感だけはしっかり自分の中に残っていて。その当時、テニス部のキャプテンでいてくれた彼女は、しっかり者で生徒会副会長にもなりました。ダンスを習い、気が付くと場所を選ばずくるくる踊っているのが印象的で、そこにはいつも華やいだ雰囲気が漂っていました。ある日、何気なく開いたSNSの画面で、『友達かも』と出てきたのはそのキャプテンでびっくり。プロフィールの写真は、思いっきりジャンプをしている写真で、プロスポーツの試合前に踊るチアリーダーのメンバーなのではないかと直感で思いました。夢が叶ったんだ。勉強もでき、スポーツもでき、みんなを引っ張るリーダー的存在の彼女の口癖は、「ダンスがしたい」ただその気持ちだけでした。有名私立高校、有名大学へ進学し、掴んだものはやっぱりダンス。弾けた笑顔でジャンプする友達の夢が叶ったことが嬉しくて、テニスコートで見事な開脚を見せてくれたことが蘇り、泣きそうでした。彼女を支えたのは、何よりも自分自身。なりたいという気持ちが夢実現に繋がったのだろうと。どこかのスポーツ観戦で、華麗に踊る友達に会えたら素敵。

そんな彼女は、生徒会副会長として、卒業式の後に行われる先生達へのサプライズに奔走。式が終わり退場のアナウンスが流れると、歴代の先輩達もまた「ちょっと待った~。」と誰かが叫び、そこから合唱が始まり、3年生の先生達一人一人に、一人ずつが花束を渡す特別なイベントでした。学年全体の仲がよく、みんなで沢山話し合い、当日を迎えました。式が終わったと思った中で、3年生の先生達が、生徒達が表彰状を受け取ったあたりに並び、順番に花を渡しに行きました。一本、また一本と先生達が受け取る度に花束のようになっていき、堪らない気持ちに。そして、私の順番になり、学年の担当になってくれた音楽の若い女の先生へ。テニス部の顧問でもいてくれた先生が、慣れない教員生活の中で苦戦していることを知っていました。思いがけない生徒からの反発に、先生大丈夫かなとそっと見守っていたことも。それでもいつも笑顔を絶やさず、強くあろうとしてくれた先生の姿をずっと見てきただけに、学ぶことが沢山あって、最後に気持ちを届けました。「先生、テニス部で可愛がってくれてありがとう・・・。」もっと伝えたいことがあるのに、言葉にならなくて大泣き。そんな私にもらい泣きし、背中をさすりながら伝えてくれました。「Sちゃん、いつもあなたの頑張りに元気づけられていたよ。こちらこそありがとう。」うんうんとまだ泣いていると言ってくれました。「隣にいる○○先生にも挨拶していってね。」と。私は非常勤講師だけど、あなたを本気で支えようとしてくれた担任の先生に挨拶していって。そんな気持ちが込められているようで堪りませんでした。担任の先生にも泣きながら感謝を伝えると、その姿を温かく見守ってくれていて。先生、身分なんて関係ないよ、私はあなたから沢山の優しさをもらいました、そんな気持ち届いただろうか。そして、1年の時に担任になってくれた男の学年主任の先生が、そのまま3年間上がり、イベントが終わると、目を真っ赤にして山盛りの花束を抱え、マイクなしで生徒達に向かって伝えてくれました。「みんな、ありがとう!」体育館にいるみんなの想いが一つになった時。入学から卒業までの3年間を、見続けてくれた先生の気持ちが全て詰まったその言葉に、胸がいっぱいでした。

時は流れ、二十歳の成人式。そこには、学年主任の先生が来てくれていました。さりげなくスーツのポケットから一枚の写真を出し、生まれたばかりの赤ちゃんを見せてくれて。「かわいい!先生、パパだ!!」そう言うと、そこに輪ができ、先生も照れ笑い。みんなのことを叱り、嫌われ役を買って出てくれていた先生もお父さん。でもね、私の中で卒業式の先生が一番格好良かった。生徒達皆と心を通わせてくれたあの瞬間、支え、支えられる喜びを教えてもらったかけがえのない卒業式。どちらがどれだけはなく、ひとつの円になった時。