頭の中で繋がった

相変わらず事務的なことに追われていた日、弁護士の先生から一通のメールが来ました。氏の変更の許可の審判が必要になるということ。あれ?名字はそのままで当分行くので、息子の戸籍を私の戸籍に入れてもらうための裁判所の許可が必要になるということですよねと改めて返信をすると、伝えてくれました。名字を変えず同じ「○○」でも、元配偶者と私の戸籍の氏は異なるので、その変更の許可が必要であることを教えてもらい、納得すると同時に少し楽になったようでした。全く異なると言われ、そこで線が引けたような気がして、その手続きが終われば、ようやくほっとできそうな気がしました。大きく新しい空気を吸い込む日まで、あと少し。

そして、なぜか随分前の記憶が鮮明に蘇ってきました。それは、祖母の弟さん、自分を可愛がってくれたおじさんの葬儀の時のことでした。祖母は次女、長女のお姉さんの所には母の従兄であるおじさんが同居し、奥さんと葬儀に参列。その奥さんが私に気づき、声をかけてくれました。「あら~Sちゃん、素敵な女性になって・・・。」そう言って、半泣きして感激してくれるので、一緒に泣きそうになりました。「小さい時は、お母さんがおばあちゃんの介護に付きっきりだったから、色々大変だったね。でも、お母さん本当に頑張っていたよ。テンションを上げていかないとあの介護はなかなかできないなって思った。寂しい気持ちもあったと思う。それでも、お母さんの頑張りを分かってあげてね。」思いがけずそんな話を目に涙を溜めてされたので、感極まりそうになりました。なんて温かい人なんだろうと。そして、葬儀が終わった後、おばさんがお母さんの介護を労っていたよと母に伝えると、教えてくれました。「Sが生まれて4か月目ぐらいにおばあちゃんの乳がんが見つかったの。お姉ちゃんは大分手がかからなくなってきていたんだけど、Sはまだ赤ちゃんだったから、入院先の病院に行く途中で、おばさんちに車で預けて、一日ずっと見てもらっていたの。消灯の時間になって暗くなった頃に、また迎えに行ってそのまま自宅に帰るような生活をしていた。その頃はまだ、布のオムツだったの。お母さんの従兄のお嫁さんだから、Sとは全く血が繋がっていない。そのおばさんが他人の赤ちゃんのオムツを手洗いして、ずっと可愛がってくれていたの。そのことは忘れたらいけないよ。」その話を聞き、おばさんが久しぶりに私に会って感激してくれた理由が分かったような気がしました。どれだけの愛情をかけて育ててくれていたのだろうと。そして、色々なことが頭の中で繋がっていきました。母の精神状態が悪化し、距離を取った数年前、相当滅入っていた私に漢方内科の主治医が伝えてくれて。「三つ子の魂百まで。幼少の頃から張り詰めた環境の中にいたから、自律神経に影響してしまったのかもしれないな。それにしても、お母さんに常に怒られるような状態だったと思うのに、どうしてこんなにいい子に育ったの?」と素朴な疑問を投げかけられて笑ってしまいました。先生が見てくれたのは、表面で取り繕っている表向きのいい子ではなく、芯に触れてくれるような優しさを含んでいて。「一歩外に出ると、友達のお母さんであったり、職場の先輩であったり、心の母が沢山いたんです。その人達に愛情をもらったから、ここまで来られたのかもしれません。」そう話すと、穏やかな表情で納得してくれました。三歳どころかもっと前、赤ちゃんの時に大きな愛で包んでくれていた人がいたなんてね。

そして、息子の特性であるHSC(人一倍繊細な子供)について学び、本人にも色々と聞いてみると、驚くほど胎内記憶や幼少の頃の記憶が残っていて、それは彼の持つ力が自然な形でそうさせているのかなと思うように。同時に、私もおばさんとの記憶が引き出されました。それは、もう暗くなった夜、少しふくよかなおばさんの胸の中で気持ちよく眠っていると、慌てて車から降りてやってくる母がいました。もう少しおばさんの温もりの中で寝ていたかったのに、そう思いながら母の元へ。あまりにも優しくて、心地よくて、温かいおばさんの柔らかさを覚えていて、それはきっと心にも体にも沁みついていて、大人になったのだと思うと堪らない気持ちに包まれました。オグリキャップの内容を読み、どこかで自分と重なっていたからこそ胸を打たれたことも、今になって分かりました。人のぬくもりが、心を育ててくれたのだと。おばさんが、一番最初の心の母だったという事実、血の繋がらない方と深く繋がることを教わっていたから、私は沢山の方と手を繋ぐことができたのかもしれません。神秘、そして奇跡。そのひとつひとつに感謝したいと思います。

「おばあちゃんって次女だったでしょ。長女の方のこと、お姉ちゃん知ってる?」と随分前に聞いたことがありました。「ああ、よくうちに来て、おばあちゃんにお嫁さんの悪口言って帰っていったよ。」「え~!」「いつの時代も嫁姑問題は色々あるんじゃない?ただ愚痴をこぼしたかっただけだと思うよ。」その意外な話を聞いて、笑ってしまって。でも、私の知っているおばさんは人間ができている人。何十年も前の母を気遣い、泣いてくれる人。そんな清らかな女性に、抱っこをされミルクを飲ませてもらっていたと思うと胸がいっぱい。おばさんにがっかりされない生き方をしよう。人が好きという理由、分かったかもしれない。