息子の冬休み明け、まだ半日授業だったので慌ただしくしていた午前中、何気なくスマホを見ると着信があったので、折り返すと役所の方でした。どうやら提出した書類に不備があったらしく、再度送ってほしいとのこと。そこまで急ぎではないことが分かったものの、後回しにすると忘れそうで、慌ててパソコンを開き自宅でプリントアウト。そして、息子のお迎えの前に自転車を走らせ、無事に提出してきました。すると、今の住まいに引っ越してきたばかりのことが思い出されて。まだ籍は入ったままの状態での別居、市役所も教育委員会へも出向き、弁護士の先生にも書類を揃えてほしいと言われていたので奔走していました。何か立ち止まったら、涙が溢れてしまいそうで、あの忙しさはある意味それで良かったのかなと今になって思ってもいて。その人その人が抱える辛さは本当に人それぞれで、本人にしか分からない傷みがきっとある、それでも分かろうと、荷物を少しでも軽くしようとそっと寄り添ってくれた人達に沢山出会ってきました。新居に住んでからもう3年、変わらずここに来てくださるみなさんに画面を通し、いっぱい助けられてきたなと改めて思っています。そんな読者さんお一人お一人に幸あれ。
最近になり、息子に胎内記憶についてもう一度聞いてみたことがありました。すると、全く覚えていないと。結構前に聞いた時、随分と明確に合っていたので驚いたことがあって。陣痛が来たのは、祖父の誕生日の次の日、2月2日の深夜でした。そのタイミングで、祖父の死が近いことを悟り、激痛と共に泣きそうになって。そして、慌てて病院へ行くと、まだ出てきそうにないからと陣痛室でもがくことに。そんな中、息子は元気が良すぎてへその緒を自分の首にぐるぐる巻きにしてしまい、身動きが取れなくなって苦しかったと胎内記憶の中で話してくれました。「暇だったから動いていたんだよ。お部屋も狭くなってきたし、早く出たいなって。そうしたら動けなくなっちゃったんだよ。」外の世界では、へその緒に気づいた助産師さん達が大騒動だったんじゃ。それから、2月3日、日曜日に近くのホテルで待機していた主治医が状況を知り、駆けつけてくれました。今日はスタッフの数が足りない、明日一気に出そうと。陣痛も微弱陣痛に変わり、なんとか一晩耐え、その日は来ました。あまりの痛みと吐き気で、もう帝王切開にしてくださいと懇願しても、婦長さんにここまで頑張ったんだから自力で産もうと説得され、本気モードが伝わってきて。そして、夕方5時に分娩台に上がり、大勢のスタッフさん達に囲まれ、5時9分に無事生まれました。「もうすぐ泣くよ。」取り出した主治医がそう声をかけてくれた途端、息子の泣き声が聞こえ、涙が一滴。その表情を見て、そこにいたみんながあたたかくその瞬間を見守ってくれました。「ボクね、お腹にいたら急に頭をぎゅっと押されたの。そうしたら、頭を引っ張られる感覚があって、気が付いたら眩しかった。ママの声がしたの。ボクね、お腹の中にいたのに、ママの顔が見えていたんだ。外の世界に出て、やっぱり同じ人で嬉しかった。」そんな話を何度もしてくれたことがありました。お腹を押してくれたのは、産婦人科のセンター長、そして新しいセンター長にバトンは渡され、その方に卵巣腫瘍を摘出してもらいました。新しい命を授かり、自分の命を助けてもらった病院、そして、医療関係者の方達の優しさ、忘れることはありません。
手術後、ホルモン治療の合間に、10年ぶりに名古屋で再会したマブダチK君。そこまでのことになったのは、絶対に無茶したからだろと散々説教を受けました。今になってその真意が分かって。学生時代、母と祖父のことを優先し、訳の分からない毎日で忙殺している私を間近で見ていたのは彼だけでした。「S、いつ寝てるんだよ。お前にばっか、しわ寄せ行ってるじゃねえかよ。なんか違うだろ。なんでそんな思いしてるんだよ。大学中退した俺が言うのも変だけど、今しかできないこと沢山あるだろ。」それでも、若いから大丈夫だと言い張る私をどんな気持ちで見ていただろうと。手術前、とんでもなく大事になってしまった、良い方に転がるまで絶対にK君には言えないと思っていました。そして、快方に向かう中で案の定本気で怒られた訳で。あの時のお前を知っているのは俺だけだ、また限界超えていただろ、Sと子供を全力で守れ、それが最優先事項なのだと。目は鋭く、もうごまかしは利かないなと。まだ学生の頃、電話で伝えてくれたことがあって。「Sの方が誕生日は早いから、俺は後に生まれて、死ぬ時は絶対に俺の方が先だ。そうしたら、俺はお前がいない世界を知らなくて済む。いずれSもこの世を去る。でも、生まれ変わって虫になってもお前のことを見つけてやる。前世でも友達だったように、来世でも友達だ。」一生ってなんだか神秘的だな、K君との会話を思い出し、改めてそんなことを思いました。私は仏壇をいずれ引き取るけど、息子に強制はしたくなくて、超ミニチュアでもいいと思っていて。部屋の片隅に、それこそガチャガチャにでもありそうなミニ仏壇に向かって手を合わせる成人した息子を想像したら、ちょっと笑ってしまいました。生まれてきてくれてありがとう、エンディングノートにはどんな言葉を記そうか。もう読むのが面倒くさいわ!!っていうぐらい書いておいたら、きっと寂しくない。どこまでのロングストーリーを、この場所に残せるだろうか。