気持ちの持っていき方

息子が夕飯を食べている時に何気なく伝えてきました。「ボクね、そういえば1年生の時に、廊下の掃除中、雑巾をかけていたらバケツをひっくり返しちゃったことがあったの。」「え~!大丈夫だった?」「もうね、びっしょびしょ。マンガのような世界でクルッって回って自分にかかちゃったの。そうしたら、その時の担任の先生に体操着に着替えるように言われて、ボクの服を絞って教室のベランダに干してくれたんだ。目立つし、ボクだけ体操服だし、もう恥ずかしくって。」「そんなことがあったんだね。先生もRも何も言わなかったということは、学校で一件落着していたんだろうな。1年生の時の先生、ベテランの女の先生で、本当にお世話になったね。」「うん。帰りはちゃんと乾いた服着て帰れたよ。5年経って、急に思い出した!」どんだけタイムラグがあるねん!!と思いながら、二人で大盛り上がり。息子の記憶の片隅にそっと残ってくれていましたよ、先生の優しさ、定年退職された恩師もまた懐かしい思い出を微笑んでくれているだろうか。

ずっとここ数か月悩まされている顎関節症のかみ合わせを、もう一度歯医者さんで診てもらおうと思い予約を入れたものの、日によって微妙に変化もあったので、もう少し様子を見ることにしましたと前日にキャンセルをさせてもらうことに。そして今日、メジャーリーグのオールスターゲームで、大谷選手のスリーランホームランと今永投手の好投を観ることができ、やっぱり歯医者さんを一旦見送ったのは正解だったなと一人で歓喜し、テレビのスイッチを切りました。すると、昨晩のことが思い出され、涙がやはり溢れそうでした。いつものように慌ただしく過ごしていた夜、LINEの音が鳴ったので見てみると、連絡があったのはネネちゃん、何かあったのではと直感で思いました。今回のことを記事にしてもいいのだろうかと正直書いている今も思っていて、それでも届けたい想いがあり、こうして書かせてもらうことにしました。二人の友情がどれだけ深いか、知っている私だからこそ。
『Sちん元気かな?天気不安定だから体調に響く季節だね。お時間あるときにちょっと会えたら嬉しいです。』姉から届いたこの文面を読んで、ネネちゃんのSOSを感じました。彼女は、辛さが10kgあったとしても、1kgだけを取り出し、しかもプチプチにくるんでそっとこちらに渡してくるという配慮がいつもある。言葉は少ないけど、苦しそうな気持ちを感じ、私になかなか余裕がないことを謝り、夏休みに子供達も交えて遊べたら嬉しいよと、間口は開いているよというやんわりとした内容を返信すると、伝えてくれました。『○○から先程突然電話があってね。がんが見つかりあとどれぐらい生きられるかわからないって・・・古い友達だから動揺しちゃって・・・Sちんも検査は必ず行ってね!』その文面を読み、泣きそうになりました。その友達は、姉が岐阜にいた頃に仲良くなった旧友で、それこそ中学生の時からの大切な親友でした。ネネちゃんはあまり心を開かない、それでもその友達の前では本気で言い合えることを知っていました。彼女は、産婦人科医に。不妊治療で、沢山辛い思いをしていた姉を支えてくれていて。そして、懐妊が分かった後、その朗報を聞いて安心した私も1か月経ってから妊娠、その話を友達に話すと、不思議な姉妹だなと笑ってくれたよう。それから姉の悪阻が酷くなり、そして時間差で私も悪化、トイレにバスタオルを敷きそこで寝て、水を飲むことさえ辛く、ネネちゃんに電話をするとピークを越えた姉が励ましてくれました。「○○に聞いたら、入院しても点滴は打ってもらえるけど、気持ちの悪さは変わらないから、頑張れるなら慣れた自宅にいた方がいいって。だからSちん、頑張れ!」何度も会ったことのある友達のエールも感じ、なんとか乗り切った日々。ネネちゃんの会話にはよく彼女が出てきて、いつもそうやって高め合ってきたのだと思いました。姉からのLINEを見て、一番の親友を失う悲しみが伝わってきたので、なんとか日程を合わせて会おうと思っても日にちはずれてしまい、お礼と共に続けてくれました。『ありがとう。今日は仕事にならなかったわ。』そのひと言を吐露してくれて、少しだけ安堵。それでも姉が具体的に伝えてくれた文字は、涙色でした。気づいた時には手術もできない状態、あと二か月だと言われたのだと。産婦人科医として、沢山の患者さんを助け、新しい命を抱きしめ、一体どれだけの方達が彼女にありがとうと伝えたのだろうと。その友達が、医学ではどうにもならないなんて、やっぱり本人が一番辛いし悔しいだろうなと、しかも3児のお母さんなんだよな、この気持ちは本人にしか分からない。

姉の結婚式前、嬉しそうにネネちゃんが話してくれました。「○○が結婚式で振袖を着てくれることになったの!」仕事で忙しい友達が、自分の結婚式に振袖を着てくれること、それが姉にとって特別なことなのだと思いました。そして、母からも言われていて。「お姉ちゃんの友達で、中学の友達は○○さんだけで一人になってしまうから、Sが合間合間に話しかけに行ってね。」と。小学校の時から知っている彼女は、それこそ姉と類友で、二人の関係性が好きでした。いつも白衣を着ている友達が、真っ赤な振袖を着て、ソファに座っている姿が凛として本当に美しくて。声をかけると、Sちゃん久しぶりだねと笑ってくれました。彼女にだけは勝てない、それが姉の口癖で、ネネちゃんが大阪にいてもカナダにいても向上心が常にあったのは、友達の存在も大きかったのではないかと、そのスマートな佇まいを見て思いました。披露宴で、何人かの方が指名され、マイクを持ってご挨拶。その中に彼女もいて、立った瞬間、姉が泣きそうになったのが分かりました。姉の結婚式で、妹が心に残っているのは、誰にも分からない二人の深い友情だったのではないかと。今の私に何ができる?
アメリカ出張中の義兄に、こっそり連絡を入れようかとも思った。ネネちゃんの寂しさを抱きしめてほしくて。でも、裏側で自分が動くのはやめました。本当に大切なのは、私が姉と向き合うこと。『ネネちゃん、これまでお姉ちゃんとして頑張ってくれてありがとう。でも、姉と妹は上下の関係ではなく、横だと思っているから、同じママとして友達としてもこれからもよろしくね。』少し前に伝えたメッセージ、覚えてくれていたなら。一人じゃないよ。