怒涛の冬休み、イベントが多く、冷えの辛いこの時期が一年の中で一番苦手なのだと痛感しながらも、息子とののんびり生活が楽しく、無事に乗り切れたことにほっとしています。去年のクリスマス数日前、姉から一通の連絡が。日曜日、下の子と二人で予定が空いたので良かったら一緒に遊んでくれないかということ。何かそこには、緩んだネネちゃんの雰囲気があり、予定も空いていたので快諾すると喜んでくれました。そして、待ち合わせのスケート場へ。小さな時からクリスマスはあまりいい思い出がない、だから嫌いだと言っていた彼女の気持ちを知っていたので、私達親子を見つけると、表情がぱっと明るくなったことになんだかぐっときました。辛かったネネちゃんの記憶を今日少しでも上書きすることができたなら。「来てくれてありがとう!」その言葉には色々な意味が詰まっているようで。これからも、こうやって色を染めていこうよ、きっと笑って思い出せる日が来る。
その後、従弟同士は久しぶりの再会だったのに、3歳違いもなんのその。スケート靴を履くと二人で盛り上がり始め、トイレに行くからと姉に二人をお願いし、戻ってくると、驚く程息子が上達していて笑ってしまいました。姉の子供は3回目、息子は2回目だったので、二人で手を繋ぎあっさり滑り方のコツを掴んでいて、こうやって少し離れた方が子供は自分の足で立つんだよねと学びが多かったクリスマス。それでも、朝から空手で疲れている姉を休ませるためにもサポートで私もリンクに入ると、3人でわいわい楽しくなってしまい、そんな姿をネネちゃんは微笑ましく見てくれていました。そして、何周か滑った後、こちらはリンクの上、彼女は地上で少し談笑することに。「お母さんから聞いたよ。Sが大掃除に来てくれたから助かったって。忙しいのにありがとうね。でも、もうそんなことしなくていいよ。今度は私がお金を出して業者さんにお願いするから。」もうこれ以上、Sちんはお母さんのことで自分を下げなくていいんだよ。それは妹の仕事じゃない、もっと大切にしてほしいのはR君との時間だから。そんな姉の気持ちが伝わり、胸がいっぱいになりました。でも以前と違うのは、そこに両親への怒りが消えていて。Sはあんた達の家政婦じゃない!と心に刃が刺さった状態で両親に怒ってくれたネネちゃんは、もう昔の姿なのだと思いました。自分の気持ちひとつで、過去の色が変わってくる、そんな話をカフェでしたこともあったな。姉の怒りがゆっくりと溶けだしていることを感じ、険しかった峠を越えた人の包容力がそこにはありました。「ありがとうね。もうしょうがないなって笑いながら手伝っているから。Rもかなり冷静に両親のことは見ていて、たまに慰めてくれるから救われているよ。おばあちゃん、子供じゃん!とか言っていた。ずっと親と子の関係が逆転していたこと、Rは気づいているよ。M伯母さんと二人で大変だったねとか言われる。」そう話すとスケートリンクで思いっきり笑ってくれるので、その笑顔を見て何十年もの苦しみが和らいでいくようでした。ネネちゃん、おじいちゃんも会社員でお父さんも銀行員だった時、職場から大きないちごのショートケーキをホールで持って帰ってきてくれたことがあったんだよ。イブの日に2つも大きなケーキが目の前にあって、パラダイスだった。そうしたら、翌日のクリスマスもおじいちゃんが会社で余ったからと言って、もう一つ持って帰ってきてくれたの。そのケーキお姉ちゃんも食べたよ。私達、辛いことばかりじゃなかった。苦しいことが沢山あって黒く塗りつぶしてしまいそうだけど、確かにそこにあったあたたかい記憶、大切にしようよ。彼女の心がもう少し落ち着いた時、この話を届けよう。
それから、子供達の休憩に入ると、姉が私の手を見て「Sちん・・・。」とだけ呟き、自分のハンドクリームをさりげなく付けてくれました。ひび割れたところから出血し固まっていた赤い手の甲を見て、自分のメンテナンスよりも子供を優先させている妹を感じてくれたんだろうなと。言葉よりも行動で包んでくれるネネちゃんは昔のまま。そして、散々滑った後フードコートへ。4人でマックを食べ、笑い転げた後、お別れの時間がやってきました。綺麗なイルミネーションの駅で、子供同士がハイタッチしてバイバイ。その光景を見た時、姉の目が一瞬潤んで、その表情を見て私も泣きそうになりました。上書き保存、できたんだなと。ツリーを見て思い出すのは、ダブルデートをしたスケートの日。小さい頃のネネちゃんが小さく笑った。
「ママ、ライくん(旭山動物園で買ってきたライオンのぬいぐるみ)ね、今日動物園のバイトはお休みするんだって。」「え?どうして?」「大事な会議があるんだって。」「・・・なんの会議?」「このおうちにもうひとつ動物園を作るみたい。その話し合いがあるんだよ~。」ん?すでにひとつ動物園はあったのか?そもそもこのマンションペット禁止だし。部屋に動物園作るなら、ライくんは管理会社のお偉いさんと会議??とくだらないことが次々に出てきて、息子と笑ってしまいました。そう言えば、このマンションの審査待ちの時、シェアオフィスでパソコンを開いていたら電話がかかってきて、慌てて電話ボックスのようなスペースにスマホを持って入っていったな。それは、審査を通してくれた管理会社の男性からのもので、安堵と共に涙が溢れそうになりました。「これからよろしくお願いします。この物件はペットも楽器も禁止になります。ただ、お子さんが少し演奏するリコーダーぐらいでしたら大丈夫ですので。」そう笑いながら話してくれた時、息子の下手くそ過ぎるリコーダーを思い出し、一緒に笑ってしまいました。「ピーピコピーピコうるさ~い!」と注意していた自分も蘇り、年齢の近い管理会社の方が、私達親子を新しいステージへ呼んでくれたのだと思うと、沢山の方達への感謝が押し寄せ堪らない時間でした。ライくんはもしかしたら、その方と大事な会議なのか?!と勝手な想像がどんどん膨らんでいく。住み始めてもうすぐ1年。Time flies.(光陰矢のごとし)時が経つのは早いけど、本当に大切なことは立ち止まって覚えておきたい。吸い込んだら前へ。分厚いエッセイ、最後は何ページになっているだろう。