ぎゅぎゅっと詰めてみる

格好つけないと決めているので、若干弱っている私にも良かったらお付き合いください。副作用、ここまでメンタルを直撃するとは思ってもいませんでした。何をするにも億劫で、お料理も、大さじ一杯など量ることさえもうあかん状態。それでも、手を抜きながらなんとか家事をこなしている自分を小さく褒めてあげたいと思います。そうそう、自分に優しくね、これが合言葉。

そして、アクセルを踏むためにも図書館に来ると、なぜか大学時代の女友達を思い出しました。仲良くなった頃、思いがけないことを言われて。「私さ、大体相手がどんな人か話していたら分かるんだよ。でも、Sだけは掴めない。」なんだそれと吹き出しそうになってしまいました。「Sと話していると、色々考えさせられるんだよ。そうきたか!みたいな。言葉に出てくることが全てじゃないよね。内側でもっと沢山のことを考えているんだろうなって思うんだよ。」なんだかある意味鋭いなと思ったものの、彼女もまた複雑な悩みを抱えていたからこそ、感じ取ってくれたものがあったのかなと思いました。そんな友達が、ある時打ち明けてくれて。「私ね、妻子ある人と付き合っているの。」と。その話をしてくれたのは、大学二年の時でした。うちの父、随分若い女性と付き合っているよなんてもちろん言えず、ただ聞いていました。いけないことだとは分かっている、でもお互いが精神的な支えで、別れられないのだと。そして、Sなら分かってくれると思い話したと伝えてくれました。神様も、なかなかの難題を持ってきてくれるな。何も我が家が大混乱の時期にと思いながらも、だからこそ彼女の痛みに気づいてあげられるような気がして、複雑な気持ちを抑え、聞き役に徹しました。

時が経ち、自分の話をしないのはやっぱり何か違う気がして、友達を傷つけないように伝えることに。「今から話すことは紛れもなく本心。お父さんね、若い女の人と半同棲しているの。籍は抜かずにね。○○が彼の話をしてくれた時、ちょっと複雑だったんだけど、とっても罪悪感で苦しんでいて、少しだけ救われた気持ちにもなったんだ。アポなしでね、お父さんちに行ったら彼女が出てきて、チェーンロックも外してもらえず、泣きながら帰ったの。その後、お父さんから電話が入って取らなかったんだけど、今思えば、本当に意地悪な女性だったら娘が来たこと黙っていたんじゃないかなって思った。その後ね、家に入ることがあって部屋の中が綺麗に片付いていて、お父さんを支えてくれているんだって思ったら、少しだけ吹っ切れてね。社会的にはいけないこと、それでも、実家で居心地悪そうにしていたお父さんの姿も見てきたから、彼女の存在で頑張れるなら、娘としてそっと見届けようと思ったよ。」そう言うと、講義が始まる前に、友達がポロポロ泣いてくれました。色んな思いがこみ上げてくれたんだろうなと。そして、伝えてくれました。「今まで聞いてもらってばかりでごめんね。Sはずっと複雑な気持ちだったよね。でも私、Sが辛い時にはやっぱり話を聞きたいよ。」うん、ありがとう。あなたがやっていることを、公然と肯定はできない、でも沢山の痛みを抱えているその気持ち感じているよ、娘の立場で怒ってもいない。もちろん、そのご家庭によって違うけど、少なくとも私はそう思っているから。そんな気持ち、届いただろうか。

そして、卒業後、二人で飲みに行く機会があり、横並びで大学時代を振り返り、散々笑い転げた後、最後に伝えてくれました。「Sは、沢山の苦労をしてきた。男性に対して、すごく警戒もしていると思うし、逆に優しくされるとあっさり心を開いてしまうところもあると思う。Sには幸せになってほしい。私、妻子ある人と付き合っているから、幸せそうな人を見ると勝手なんだけど悲しくなることがあるんだけど、Sに対しては心からそう思う。もうね、人のことじゃなくて自分のことを考えてほしいんだよ。Sの優しさに甘えるような人は選んじゃだめ。」お酒が入っているせいか、彼女の本音をさらけ出してくれて、分かった分かったからと笑いながら、友情を感じる柔らかい時間を過ごしました。友達っていいな、そんなことを思わせてくれたお酒の席でのひとコマ。

ふと顔を上げると、図書館の書斎を思わせるライトが目に飛び込んできました。母に、名古屋に帰ったら何をやりたい?と聞かれた時、頭に浮かんだのは大学のキャンパスでした。「今、コロナの影響で卒業生は入れないかもしれないけど、大学の中を歩きたいんだ。」そう伝えると微笑んでくれた母。あまりにも凝縮された4年間で、簡単に言葉にできる訳もなく、それでも母なりに何かを感じ取ってくれているようでした。たまたま4限目しかなかった日に大学に行くと、その講義も休講になっていて空振りで終わった私に、何人もの友達が学食で話し相手になってくれたこと、法学部の男の先輩が、ポンコツの車で東山線沿線まで送ってくれたこと、一人暮らしの女友達の家に泊まり、女三人で夜が明けるまで語り合ったこと、そんな全ての時間が私の中にある。いつもスキンヘッドで、スタバマークを描くのがやたらとうまかった同じ学部の友達は、どうしているだろうか。卒業アルバムを開いたら、泣きそうだよ。