中から見えた運動会

今年の運動会も、半日をさらに前半後半に分けた開催となりました。広報委員も、4対3人に分かれ写真撮影の段取りを確認。そして当日の朝を迎えました。「お母さんね、役員のお仕事で早く出ないといけないから一緒に行こう。」と息子に伝え、一緒に出ることに。秋晴れの気持ちのいい空の下、入院していた総合病院を横目に、色んな気持ちが通り抜けワイワイしながら学校へと向かいました。「ボクの競技は、ママ見られる?」「それは大丈夫よ。お母さんずっと楽しみにしていたよ。」「良かった~。」競技の数が減っても、運動会が無事に開催され、こうして体操着で登校できるそんな今日が、光り輝く一日となりますように。

そして、予定通りに朝礼台の前へ行くと、待っていてくれたのは同じクラスの広報委員の親子。なんかいいな、非日常の中にいつもの日常がある安心感。「おはよう。」と友達に声をかけ、「いってらっしゃい。」と見送り、あっという間に他の男の子も混ざり、ぎゅぎゅっと詰め込まれた団子状態の朝に嬉しくなりました。その後、広報委員のメンバーが集まり、学校から借りたデジカメの確認。前半は奇数年の子供達なので、広報の黄色い目立つビブスを着ながら、息子の応援をさせてもらうことに。すると、仲良しのKちゃん夫婦を見つけご挨拶。たまにしか会えないけど、少し話すだけで心が和むよ、そんなことを思いながら笑顔でお別れ。その後、1年生のダンスが始まり、あまりの可愛らしさに担当でもないのに写真撮影を始め、よく見てみるとKちゃんの二番目の娘ちゃんが踊っていて泣きそうになりました。まだ、仲良くなって間もない頃、よく遊びに行っていた公園で、赤ちゃんをおんぶして連れてきていた彼女。苦しい時いつもそばにいてくれた友達と、もうこんなに長い月日を過ごしていたのかと、成長した娘ちゃんの姿を見て、いくつもの思い出がこみ上げました。優しく温かい日の数々、辛さの裏側にあったひなたぼっこの時間。Kちゃんが、私の凍り付きそうな笑顔を解凍してくれていたね。そんなことを思っていると、あっという間に3年生の競技がやってきました。ダンスと台風の目を組み合わせたなかなか粋のある種目に嬉しくなりながら、音楽に合わせて皆がノリノリで登場。YOASOBIの『夜に駆ける』(作詞作曲:Ayase)の曲が流れると、踊り出した息子を見て涙が一滴。歯の矯正で、寝かしつけで苦戦している最中に、寝ながら踊り出し笑い転げた夜。大きくなった時に思い出すのは、大変さの中で感じた心がキュッとなる瞬間なのではないか、そんなひとつひとつを今刻んでいるのではないかと、夢中で踊る彼の姿を見て思いました。1年生の運動会は台風で延期、各地で被害も多く心を痛めた校長先生の挨拶から始まり、途中から雨が降り、まさかの平日またぎの開催へ。2年生はコロナの影響で半日の予定となり台風でまた平日に延期。3年生になり、開催そのものも危ぶまれた中で、リレーも削り、競技数を減らしての運動会は土曜日に行われ、お父さん達の姿を見ることができた時、そこに集まった力のようなものを感じました。熱気とでもいうのかな。この凝縮された時間をどう写真に収めたらいいのだろう、その一枚が先生達へのプレゼントになってくれたなら。友達3人で台風の目を走り、80m走も激走した息子を見た後、こちらに気づき小さく手を振ってくれて。お母さん見ていたよ、よく頑張ったね、前夜に作った糸電話がそこにあるかのようなアイコンタクトで、息子との時間は終了しました。

いよいよ後半、広報委員としての本領発揮。デジカメを持って、徒競走の子供達を撮る為に、トラックの中へ。こんな機会は、最初で最後だろう。内側から見えるもの、何を残せるだろう。以前、プロカメラマンの友達がこんな話をしてくれていました。「親御さんが子供を撮る時、何とも言えない笑顔の写真があって、敵わないなって思うことがあるよ。」と。プロの視点ではなく、そこにある親子の愛、きっと彼女はそういったことを伝えてくれたのだと思いました。力いっぱい走る子供達の姿を、いろんなアングルから捉え、最後の種目がやってきました。深呼吸を一つして、メンバー1人と朝礼台横のテントの前方に座り込み、時を静かに待つ。衣装に着替えた6年生が整列し、女性の担任の先生も同じ格好で私の隣に待機、そしてソーラン節の音楽が流れ始めました。すると、全ての動きに「うんうん。」と頷いている先生が視界に入り、先生のこれまでの思いが流れ込んできて、涙が溢れそうに。運動会が開催出来て本当に良かったですね、先生が届けた気持ち、今こうして子供達が返してくれているんですね、そんなことを心の中でそっと伝え、一枚でも多く残そうと動きが変わる度に撮影。すると、後半になり先生が急に飛び出し、踊りに参加。すっかり見失ってしまったのですが、その瞬間が堪らなくて。あなた達と一緒に踊れることを誇りに思う、先生のそんな気持ちが自分の胸の中に残りました。最高学年が魅せてくれた圧巻のフィナーレ、このひとときを忘れることはないだろう。彼らが感じた“今”は、大きな力になっていくのだと思いました。

その後、片付け前にテントに集合すると、広報担当のT先生の水筒を発見。息子の担任でいてくれた遠足の時、「T先生の水筒、醤油を入れるお魚の形をしていたんだよ!」とゲラゲラ笑いながら教えてくれた情報を思い出し、実際その形をしていて笑ってしまいました。空っぽだったので、黒ウーロン茶でも入れて、本当の醤油のようにいたずらしたい衝動に駆られていると、ご本人が登場。広報委員を労い、お互いがお礼を言ってお別れ。先生、いろんな関わり方がありますね。角度を変えると、また見える景色も違っていて。休校中に自宅まで届けてくれた宿題、オンライン教材のメッセージ画面で繋がった時のこと、ようやく行われた貴重な一回の授業参観、もうすぐ先生ともお別れだなと思っていた矢先の卵巣がんの疑い。今も薬物療法中だと知ってくれているのは、先生だけ。苦しさは心の奥底に隠れていたりする、見えているものが全てではないから、目の前にいる人と真剣に向き合いたい、顔で笑って心で泣いているのではなく、お腹の底から笑ってほしい、こんな時代だから、こんな時代だからこそ。どれだけの想いの中で気持ちを届け合っただろうと、先生のゆっくりとしたトーンを聞く度にこみ上げるものがありました。水筒にコーラを入れて、わざと振っておいても良かったかな。先生、思いっきり笑ってください、人のためだけではなく、たまには自分のために。

最後は広報委員のメンバーとデータを整理し、同じクラスの友達とグラウンドで待ってくれていた息子に疲れたね~と言いながら帰宅。するとKちゃんからメッセージが入っていることに気づきました。『Sさん、広報のお仕事お疲れさまでした。みんなの成長した姿に感動してしまったよ。』以心伝心だね。あなたの友達でいられて良かった。つらいことも嬉しいことも何もかも、子供達の成長と共に思い出を作っていこう。
半日の運動会、力強いソーラン節が未来に繋がった日。中から溢れる感動はきっと自分の糧になる。