ぬくもりをまとった運動会

今年は、分散ではなく、全校児童が一斉に行う半日の運動会になりました。6学年が揃うということだけでなんだか胸がいっぱいに。そして、息子が伝えてくれました。「ボクね、徒競走ときつねダンスをすることになったの。本当に恥ずかしいよ~。」「北海道日本ハムファイターズのきつねダンスでしょ?!いいじゃん!かわいいよ~。お母さん、プロ野球ファンだからめちゃくちゃ嬉しい!」「え~。みんなの前で踊るんだよ~。」とずっとぶつくさ。そして、iPadから一緒にYouTubeできつねダンスを見て、温度差はあったものの二人で盛り上がった夜。後日、栞を渡してくれて、どの位置にいるかボールペンで描いてくれました。「ボク、このあたりで踊って、その後きつねの格好でリレーもあるから、反対側に行くの。ママ、絶対に見逃さないでね!どんなことがあっても絶対に来てね!」「はいはい。どんなことがあっても、絶対に行くよ。」固い約束、二人の絆は強いんだ。

運動会当日、体操服に着替え、お友達と待ち合わせをしていたようなので、玄関でお見送り。「早めに行くからね!いってらっしゃい。」そう言って、家事をこなし、学校へ向かいました。その日は、土曜日。お父さん率は高く、息子にこの光景は入っているだろうと少し胸が痛くなって、4年生の席の後ろまで行くと、一生懸命に私を探している息子を発見。彼が振り向いた時、目が合いほっとしてくれたことが分かり、泣きそうになりました。どんなことがあっても、あなたのことを守るから。この言葉は息子に向けたもの、彼はその言葉を大切に受け取りながら、私のことを守ろうとしてくれているのではないかと、そんな彼の強さを感じ、胸が熱くなりました。ママ、お父さん達沢山来ているけど、ボクにはママがいるから。お互い気にしないでいようよ、この時間楽しもうよ、そんな気持ちを届けてくれているようでした。人は人、だね。
そして、4年生の徒競走がやってきました。慣れないビデオ撮影に何度もピントを合わせようと練習していると、近くにいたお父さんが声をかけてくれて。「こちらへどうぞ、うちの子まだ後なので。」「ありがとうございます。うちの子もまだなので、こちらで大丈夫です。」笑顔でそう伝えると、一緒に微笑んでくれました。同じ学年の誰かのお父さん、優しい気持ちをありがとう。その気持ち、もらって帰ります。そんなことを思っていると、息子の番が来て、手が震えないようにビデオ越しから真剣に走る姿を捉えました。80m走、ほんの数秒の話。でも、そこには確実に子供の成長があって、背の高さも足の速さも、振る舞いまでもが大人に近づいていくようで、全ての時間を忘れないでいたいと思いました。息子が挫けそうになった時、投げ出したくなった時、そんな時もあるよって彼の成長に心を震わせた時間を持って、大きな器で元気づけられたらいいなと。泥んこになりなよ、そういう人、格好いいと思うな、色々な経験が味のある人になっていくんじゃない?そんな言葉をかける日は来るだろうか。

ひと呼吸置こうと、きつねダンスの前に、今日は誰にも会わずに帰ろうと思い、トイレへ。すると、広報委員で一緒だった友達と偶然会い、思いっきり喜んでくれて二人でわいわい。お父さん達が集まるイベントに慣れていかないとなと、若干沈んでしまいそうだった気持ちが、シャボン玉のようにパチッと弾ける感覚があり、彼女に助けられたようでした。一緒にトイレを出ると、そこには知らない男性が。去年ご主人とは挨拶させてもらっていたので、どなただろうと思っていると友達がひと言。「新しい旦那。」は?「うそうそ、うちの弟。今日は旦那が出張で、弟を連れてきたの。替え玉!」彼女らしい表現に一緒に笑ってしまい、なんだか吹っ切れたようでした。なんだ、私も替え玉を連れてこれば良かったかななんて思わせてくれて。Sちゃん、何かあったよね?彼女は私の異変に気づいている、それでも、こちらが話す時をそっと待ってくれていることが分かり、本当に有難くて。広報委員で一緒だった時、みんな忙しいから二人で進めようと彼女の家で広報誌の最終確認をしたことがありました。その後、本当に小さな確認漏れが見つかり、友達が私にメッセージを送ってくれて。『やっちゃったね。』その言葉には、色々な思いが込められていることを知っていました。なんだかそこに、彼女そのものを感じて、出会えて良かったなと思いました。その時は、体調面も精神的にもぎりぎりの状態でした。そんな時に私を呼び出したと友達が知れば、きっと責任を感じるだろう、だから一連の話を全く伝えられなくて。それでも、あなたは私に沢山の元気を届けてくれているよ。楽しいこと、辛いこと、共にあるということ、友達っていいね。そんな気持ちを抱き、物腰の柔らかい弟さんにも挨拶し、お別れ。栄養ドリンクは受け取った。

その後、いよいよきつねダンスへ。息子が並んでいる入場門へ走り、きつね姿を激写。照れながら手を振る息子にバイバイし、予め伝えられていた場所へスタンバイをすると、耳としっぽを付けたかわいい4年生が並んでやってきました。そして、音楽が流れると、キレッキレのダンスを踊っている息子がビデオ越しから見え、吹き出しそうになりました。あんなに恥ずかしいと言っていたのに、ノリノリじゃないか!!その時、オールスターゲームを一緒に観ていた時のことが蘇ってきて。2対2で迎えた9回裏の攻撃、ツーアウトランナーなしという場面で、1戦目は引き分けに終わるだろうと思っていると、日本ハムの清宮選手が見事なホームランを決め、まさかのパ・リーグサヨナラ勝ちに。ヒーローインタビューで、新庄監督も見ていると思います、ひと言ありますか?と聞かれた清宮選手は、「やったぜ!」と満面の笑みで答えてくれました。監督と選手のこんな近さ、なんだかいいなと思わせてくれた優しい終わり方でした。その清宮選手もYouTubeで照れながら踊っていて、それを見て練習を重ねた息子も一生懸命で、今年は北海道にご縁があるなと嬉しくなりました。白い雪を被ってひょこっと顔を出す、北の大地のきつね。北海道の雄大な景色を思い出し、感無量でした。その後は、きつねリレーへ。慌てて運動場を走り、息子の出番を待ちました。すると、子供達を並べているきつねの格好をした担任の先生の姿が。あまりにも可愛らしくて、ほっこりしました。先生、Rは痛みよりも優しさを持って育っています、ありがとう。心の中で届けると、目の前を息子が猛ダッシュで駆け抜けていきました。瞬きしている間に子供は成長していく、だから私もお母さんでいる時間を楽しみ、大事にしようと無事にゴールした彼の背中を見て思いました。かわいいきつね、大きな人になれ。

「ただいま!!」「おかえりなさい!」いつもの時間が流れる。グラウンドで感じた透明の毛布が息子と私にかけられた。周りの人達は見えている。でも、私達、あたたかい毛布にくるまれているよね。あなたと私の世界。それはもう、もふもふでいつもほっとさせてくれて。そのぬくもりを感じられたら、何もこわくない。「ビデオ、ちゃんと撮れたよ~。」「後で一緒に見よう!ママ、すぐに分かったよ。」ね、一人じゃないよ。途中ですれ違った仲良しのKちゃんの娘ちゃんと広報委員の息子君がきつねの格好で手を振ってくれました。幼稚園時代からのD君は応援席から私に気づき、照れながらバイバイしてくれて。優しい温度に助けられた運動会、下を向いている場合じゃない。グラウンドから見上げた空は、北海道の空と重なった。浴びた光を今度は誰に届けようか。