深さを感じる時

今朝、息子を学校へ送り届けた後、ゴミ置き場が荒らされていたので一旦自宅に戻り、ビニール手袋とゴミ袋を持ってもう一度出ました。そして片付け始めていると、30代ぐらいの男性の住民がゴミ出しのタイミングで声をかけてくれて。「手伝います。」そのトーンが優しくて、なんだか沁みました。「いえいえ、大丈夫です。手が汚れてしまうので。」散乱していた中には生ごみもあり、素手で手伝ってもらうのは申し訳ないと思ったこちらの心境を感じ取り、もう一度伝えてくれました。「家に帰って洗えばいいので。猫ですか?」と、一緒に片付けながら質問が待っていました。「ありがとうございます。多分、カラスだと思います。対策が難しいですね。」「たまに何羽か来ていますよね。」そう言って、初対面とは思えないフレンドリーな様子で手伝ってもらい、あっさり片付けは終了。お互いにお礼を伝え、気持ちのいい朝の始まりでした。分譲マンションから賃貸マンションへ、それでも人の繋がりを感じたよ。丸3年が経ち、受け取った人のぬくもり。

週末は、いよいよ息子のスマホを買いに行くことになり、渋谷でプログラマーのMさんと待ち合わせ。ちょっとしたデイトリップでした。息子は首をなが~くしてその日を待っていたので、黒のiPhoneが手に入り大喜び。長い契約の説明中、ふと賃貸契約をした時のことが蘇ってきました。二人暮らしが始まる、その責任と、信用して貸してくれたことへの感謝と、やや緊張していたこちらを和ませてくれた担当者の方の温度が、ふわっと時を越え自分の中へ流れ込んできて。息子と歩いてきた月日、そしてまだその途中の景色がここ、渋谷なんだな。それにしても人が多い!とスクランブル交差点で息子とやや混乱。そんな中、立ち寄ったマックで三人座れる席が空いておらず、別々に座ろうとすると、金髪のお兄さんが気づき空けてくれました。お礼を伝えると、「気づかなくてすみません。」と去り際に謝ってくれて。「にいちゃん、優しい。」と心の声がだだ漏れで伝わってしまい、笑いながら退店する姿がとても素敵で。人は中身だな、そう思わせてくれたほんわかとした時間でした。さてさて、息子はマイスマホに感激し、またスクランブル交差点を歩いていると、もう20年程前に、札幌の叔父と再会した時の記憶が再生されました。待ち合わせたのはハチ公前、再会を喜び、今日姪っ子と久しぶりに会うんだと職場の人に話してきたと嬉しそうに教えてくれました。時に、父よりも心の距離が近かった叔父さん、父性を感じさせてくれた存在にいつも助けられていました。佐賀で祖母の葬儀に参列した時、また長い間会っていなかったのに、叔父との血の濃さを感じて。葬儀場の外でタバコをふかしている時に再会し、目が合ってお互いがにっこり笑って挨拶した時、もしかしたら叔父さんも同じようなことを感じてくれたのではないかと、慌ただしくてまともに会話もできなかったのだけど、懐かしい思い出と共に近さを感じてくれているような気がしました。一番最初に会ったのは、名古屋の実家。姉はもう大阪勤務で、父はまだ出ていなくて、それこそ崩壊前のわが家でした。みんなが私を頼るその状況を知った叔父は、栄でのデートを提案し伝えてくれました。「家に泊めてもらえなければ、Sの大変さは分からなかった。中に入ったから気づけて良かったよ。叔父さんには頼っていいんだぞ。」「うん、ありがとう。」そう笑って見上げたテレビ塔。離れていても、辛さを分かってくれる血縁がいる、18歳の私にはあたたかい血がまた巡ったかのような喜びでした。自分の部屋のライトが切れた時には、手伝おうとしてくれて。「いいの、自分でやれるから。」そう言うと、黙って椅子に乗り、取り替えてくれた後にひと言。「Sがいいのって遠慮した時に、そのまま受け止める人とは一緒になるな。彼氏の前では我慢するなよ。」いいか、今家で起きていることがスタンダードだと思うな、外の世界でも自分一人で頑張ろうとするな、そういうSを理解して守ってくれる人に心を許せ。そこには、叔父さんの沢山のメッセージが込められていたのだと改めて思いました。そのお守りは、ずっと有効だな。

その後、山手線で新宿に行き、Mさんに夕飯とカフェをご一緒させてもらい、すっかり遅くなったので特急に乗ってテンションMaxの息子と帰ってきました。すると、LINEにはスタンプまみれと『おやすみ』の文字が。散々会話をしたのに、これからは新しいツールでのコミュニケーションも増えるんだなと思うと笑えてきて。大学図書館勤務時代、カウンターで画面は見えない位置からこちらがキーボードの操作に苦戦していると、記号の場所だったか教えてもらったことがあり、一緒に笑ったことがありました。院生の方になるとそんなに年齢も変わらず、ITに強い学生さんに助けられたことが懐かしくもあって。段々息子もそうなっていくんだろうな。
1月の最終日、今の気持ちを今月中に伝えておこうと思い、父にメッセージを入れる用事と共にひと言付け加えておきました。『佐賀から新幹線で帰ったのは、大学4年の時に、おじいちゃんが一緒に乗ってくれた時間をたどりたかったからだよ。』すると返信はありませんでした。そりゃそうだ、この気持ちを簡単に分かってもらって堪るか!その文字の裏側に、祖父が心を込めて渡してくれた言葉と想いと切符と幕の内弁当がある。叔父さんが言ってくれたように、おじいちゃんは私の遠慮を遮り、包んでくれた。その大きさは、永遠なんだ。朝起きると、『おはよう』という文字と共にまた大量のスタンプが息子から送信されていました。これはもしかしたら、拡大解釈ができるかもしれないと微笑んでみる。『毎日楽しいね』、そんな日々にこちらの方こそありがとう。