先程、ワールドシリーズが終わりました。ドジャースの優勝、感無量です。息子が野球を好きになってくれてから、何度も伝えてきた言葉がありました。野球は9回ツーアウトからだと。最後のアウトでゲームセットになるまで、本当に何があるか分からないし、そんなドラマを沢山の試合で観てきた、その諦めない姿勢に何度も感動してきた話をしました。今回、ドジャース対ヤンキースの第一戦、延長戦までもつれ込み、あとアウト一つで敗戦が決まるという緊迫した場面、フリーマン選手がサヨナラスリーランを打ってくれた時、息子と絶叫し大きくハイタッチ。二人とも興奮しすぎて、タッチも軽くずれてしまい、それでも劇的な幕切れに泣きそうになりました。フリーマン選手も、ドジャースの選手や関係者の方も、ファンのみなさんも誰一人諦めていなかったからこそのサヨナラ勝ちだったんだろうなと。その流れのまま、4勝1敗でワールドチャンピオンに。途中怪我をしてしまっても、最後までグラウンドに立ち続けてチームを鼓舞してくれた大谷選手、沢山のものを、画面を通しもらったような気がしています。その感動を持って、来季へ。ボク、週末の午前中、何をしたらいいか分からないという息子のぼやきが聞こえてくる。
風邪が長引き、それでも新宿の主治医の元へいつもの薬を処方してもらいに、昨日行ってきました。が、途中でなんらかの不具合により電車がゆっくりと進むことになってしまい、1時間も受診が遅れてしまいました。慌てて病院に駆け込み、受付のスタッフさんに謝るといつものように対応してくれてほっ。そして、先生に呼ばれたので開口一番に伝えました。「今日、電車が随分遅れてしまっていて、来るのが遅くなりすみません。」「○○電車でしょ。僕の患者さん、ほとんどその電車を利用されていて、みんな遅れているから大丈夫だよ。みんな遅れたらこわくない!」いやいやそういうことじゃなくて・・・と思いつつもその茶目っ気たっぷりの先生の表現に笑ってしまい、どこかでハプニングを楽観的に捉えてくれたこの医師にこうやって何度も助けられてきたんだよねと改めて思いました。すると、ふと大学時代を思い出して。最寄り駅に着き、バス停に並ぶとすでに長い行列。時間はどんどん過ぎ、あっさり1限目の講義が始まってもまだバスの中でした。それでも、これだけの学生が遅れたら同じ講義を受ける人もいるだろうし、まあいいかと開き直ってゆっくり講義室へ。すると、何人も遅刻することが分かっている教授は出席を最後に取ってくれて助かりました。みんな遅れたらこわくない、主治医の言っていたこと、なんだか納得だなと今さら学生時代のことが懐かしくなって。先生は、どんな学生時代を過ごしたのだろう。「次の診察は予定ではクリスマスなんだけど、何かと忙しい時期だから1週間前にずらしておくね~。」お子さんとのイベント、きっと大切だろうからいい時間になるといいね。裏側に滲み出る主治医の想い。自分の細胞ひとつひとつまで感謝と敬意を払いたくなる、そんな優しいひとときでした。先生にもいいことがありますように。
そして今日、ついに声が掠れてしまい、息子とコミュニケーションをとるのも一苦労で、それでも自分がやっているこの仕事は声を届けることができたなと嬉しくなり、こうして言葉を紡いでいます。まだ大学図書館で勤務していた頃、同じように声があまり出なくなってしまい、カウンターの業務を代わってもらい、ひたすら事務仕事をこなしていた時がありました。外線電話は控えるけど、内線電話は取りますと周りに伝え、短いコールだったのでさっと受話器を取ると、私に用事があった経理の女性。「え?○○さんの声?」「はい、本人です。ちょっと風邪を引いてしまって。」と説明すると、いつもと全然違うだの帰らなくて大丈夫なの等々、すっかり長電話になってしまい、早く切り上げたそうにしている私を見て、みんなも半笑い。そんな方達だからこそ、不調でも頑張ることができたのだと柔らかいエピソードを風邪が運んで来てくれました。そして少し前、銀行に行く用事があり、カウンターで女性行員さんと手続きをしていると、後ろ側にいたスーツの男性が一瞬父に見えて、ちょっとこみ上げそうに。まだ学生だった頃、父の働く支店へ行き、いろんな手続きをしてもらったことがありました。予め行くことを父には伝えていたので、女性行員の方にも話を通してくれていて、こちらの姿を見つけると、みなさんがウェルカムで迎えてくれて。その後、通帳記入もついでにお願いすると、父がちらちらこちらを振り向いてくるので小さな声でひと言。「あの~、通帳の中身、父には内緒にしておいてください。」と伝えると、ふふっと小さく笑い、人差し指で自分の口を押さえ、「内緒ですね!」と言ってくれるものだから一緒に笑ってしまいました。上司の娘とこそこそ内緒話をしているのは、不思議な感じだろうなと思いながら色々と盛り上がってしまって。「お父さんになんとなく似ていらっしゃいますね!」いやあ、喜んでいいのやら。父は遊び人ですよ!とぶちまけたい衝動に駆られたものの、きっちりスーツを着こなし、お客様にも行員の方達にも笑顔を向ける表情を見て、ここが父のフィールドでありこの姿を忘れないでおこうと思いました。その佇まいは、尊敬に値するのだと。支店長代理まで登りつめた父、そこが頂点でその期間はそこまで長くはなかったのだけど、その景色を共有させてもらえたこと、共に働く仲間を大切にしていたこと、銀行員として貫いた父の信念は私の中に今でも流れています。
本好きと図書館好きはずっとそのままで、大学図書館で働き始めると、新1年生を対象に図書館ガイダンスが待っていました。先輩が、私もついてきていいと言ってくれたので、喜んで学生さん達の一番後ろへ。先輩が書庫の説明をする中で、「へえ、そうなんだ~。おもしろ~い。」とかなんとか自分の心の声がだだもれで、近くにいた女子学生さん達が振り向き、一緒に笑ってくれました。IDカードをぶら下げているから図書館職員だよね?という顔をされながらも、学生さん達と同じ目線で楽しんでいるので先輩も半笑いで、なんとも言えない喜びを感じました。初めて父に連れて行ってもらった名古屋市立図書館、『三匹のこぶた』の紙芝居が、私の司書への始まりでした。いくつかの遠回りをして辿り着いた場所、大学図書館で優しい仲間に囲まれ、夢が沢山詰まった学生さん達と笑い、膨大な本が陳列する書庫で埃と紙とインクの匂いの中で、自分が掴んだものを実感しました。簡単じゃなかった、だから喜びがどんどん膨れ上がっていって。その気持ちはずっと変わらず、声が掠れた今もこうして届けられる毎日を大事にしています。
みなさんのストーリーにも、さくらの花びらが舞い降りますように。そっと色づくさくらいろ。