今の自分にできること

調子に乗って、まだ療養期間中なのに出向いたシェアオフィス。やはり、乗ってきた自転車の影響で傷口が痛くなってしまい、大人しく帰りは押しながら歩いて戻りました。そして、もしかしたらラガーマンTさんからのプレゼントが届いているかもしれないと思い、ポストを覗いてみると、入ってた!!自宅に帰り、喜んで開けてみると、思いがけない贈り物に大泣きしてしまいました。それは、彼がコーチをしている大学ラグビーチームのTシャツと、所属していたトップリーグのTシャツでした。大学チームの方には、Tさんのサインと『Never give up!』の文字が。めちゃくちゃ大きなサイズだなと思っていると、右下には彼のイニシャルが刺繍で入っていて、実際に使用するものだということが分かりました。大きな体だな。そして、トップリーグのTシャツは、なんと20人を超える選手達のサインが入っていて、Sサイズにも笑ってしまい、感無量でした。僕にできることは何だろうと沢山考えてくれた彼は、クラブハウスに行き、事情を話し、練習していた選手達に声をかけてくれたのだろうと。その気持ちも行動も、手に取るように分かり、彼にしかできないことをやって、励まそうとしてくれたのだと思いました。

元気になったら、大学ラグビーもトップリーグの試合も観に行きたいと伝えた時、満面の笑みで喜んでくれた理由が分かりました。そのTシャツを着て応援に来てくれることを願っていてくれたのだろうなと。後援会に入ってくれてありがとう、大学の試合を観に来てくれてありがとう、そこには沢山の想いが込められていて、私が苦しい時に返したいと届けてくれた気持ちに胸がいっぱいでした。もうね、永久会員でしょ。そして、棺桶に入れてもらうよ。苦しかった先にこんなご褒美が待っていたなんて。そして、まだまだ続く薬物療法の不調も、挫けそうな時、ものすごい力になって励ましてくれるのだと思いました。こうやって、どれだけのファンの方達に勇気をくれたのだろう。ラグビーの精神は、グラウンドの外に溢れ出しているんだな。もったいなくて着れないよ、一生の宝物。

そして、そんな感激の翌日、いよいよ久しぶりの運転で隣街にある主治医のいる総合病院へ。この日をどれだけ待ちわびていたことか。伝えたいことが沢山あるので、運転しながら頭の中を整理して、ドキドキしながら待合室で待っていました。そして表示された受付番号。ノックをし、ドアを開け、先生の顔を見た瞬間、泣きそうになりました。ご挨拶をすると、第一声、「大変だったね。」という労いの言葉が。そこには色んな気持ちが込められていて、その温かさに、どこまでも先生らしいなと嬉しくなりました。こちらから説明を始めようとすると、優しく教えてくれて。「紹介状の返事が来たから、心配していたんだよ。卵巣がんの疑いと出ていたからね。それで、同じ系列の病院だから電子カルテが見られる状態にあって、ずっと見ていたんだよ。本当に良かった。」思いがけない話の展開にこちらの方がびっくりしてしまい、手術日までぴったり把握してくれていて、先生にしかできないことを、先生の気持ちでやってくれていたことに感極まりながら、思わず一緒に笑ってしまいました。それでもきちんと伝えなければ。「先生が気づいてくださらなければ、どうなっていたか分からなかったです。先生に助けられました。本当にありがとうございました。」そう言って頭を下げると、微笑みながら言ってくれて。「結果的に良性だったんだから、僕は何もしてないよ。」と。どこまでも謙虚なこの先生に、これからも助けられていくのだと思いました。持ってきた手術の一連の資料も先生は全部把握し、今始めている薬物療法にも触れてくれました。こちらの副作用を伝えると、心を痛めてくれて。「偽閉経療法により、科学的に更年期の症状が起きてしまっているね。それは辛い。電子カルテを見て、少しずつ癒着部分を剥がしていったとあるから、相当酷かったのが分かるし、どうしても再発の可能性があるんだよ。薬を飲めば苦しいし、飲まなければ再発の不安がある。どちらに転んでも辛いよね。」こちらが1話すと10気持ちを汲んでくれる先生の優しさにどうしようもなく救われたようでした。本当に、こんな先生にもう出会えないだろうなと。

その後、主治医の頭の中で行われるスーパーコンピュータが働き、更年期に効く漢方を勧めてくれました。そして、術後の腸閉塞の心配もしてくれたので、別の漢方も追加。「先生、これまでの漢方はお休みですか?」「当分の間、婦人科系の治療に専念するよ。優先順位を明確にする。それだけ酷かったし、再発を防ぎたい。二つ目に出す漢方は、雷おこしにピリ辛の七味がかかったような味だから。」そう言われ、思わず笑ってしまいました。どんな味やねん!!患者さんの辛さに寄り添い、何を優先させ、その苦しみを取るにはどうしたらいいのか、いつもどんな時もベストを選んでくれる、そしてそこには和みがあって、この先生にしかできない医療があるのだと、また助けられたようでした。全然診察を終えようとしなくて、先生がいろんな角度から話を振ってくれた時、術後の患者さんのダメージがどれだけのものなのか知ってくれているからなのだと思うと、堪らない気持ちに。雷おこしにピリ辛の漢方、楽しみにしていますよ、そう思いながら笑顔でお別れ。どこまでも付き合うから、そんな主治医の心のありようが、とんでもない薬なのだと思ったお会計の時間。

そして、そのままの優しい気持ちで、一凛珈琲へ。ようやく来られたと思い、ほっとした時間を過ごし、いつもの店員さんとレジ前でお会いすると伝えてくれました。「緊急事態宣言中で学校がないかなと思っていたんです。」「今回は学校があってくれて平和です!」そう話すと一緒に笑ってくれました。お元気そうで良かった、そんな気持ちが感じられ、待ってくれている人がいるっていいなと思わせてくれたこれまた癒しのひととき。

そんな数日後、またシェアオフィスに来ると、ようやく不動産関係のHさんを見かけ、私の方に寄ってきてくれました。「お元気でしたか?僕、今日も短パン履いてますよ~。」と言われ、二人で大笑い。「全然会えていなかったから、お年玉ではなくチョコです。」そう言って渡すと喜んでくれて。「色々あって・・・。」そう言葉を濁すと、Tさんとサイトを閲覧してくれたことに気づかないふりをしてくれて、その気持ちが沁みました。僕、本当は状況を知っているんですけど、○○さんが元気に戻ってきてくれたからそれが何よりです、でも話したくなったら話してくださいね。顔がそう言ってくれていました。なんて優しい人。
そして、かわいい受付のスタッフさんまで。「○○さん、お元気そうで良かった!スタッフ皆元気です!またいつでもいらしてくださいね。髪の毛ばっさり切って可愛い~。」そんな言葉をかけてくれるあなたの方が3万倍かわいい。それぞれの方達が、それぞれの優しさを届けてくれる。今の自分にできること。
帰ってきたよ。副作用があっても、沢山の人達がエンジンをかけてくれているんだ。だから、空を見上げることにする。