天気のいい日に軽やかにシェアオフィスに来ると、荷物を沢山抱えた男性がいたので、すれ違いざまにドアを開けて通過するのを待っていました。お礼を言われ、またお会いすると、「ランチ会に出ないんですか?」とオフィス内のイベントに声をかけられ、「ランチ食べてきちゃったんです~。」と伝えると残念がりながら一緒に笑ってくれました。気持ちのいい方。何かとイベントには色々な方が誘ってくださるのですが、なんとなく一人が楽なんだな。それでも、気持ちが付いて行った時には、喜んで参加させてもらおうと思っています。強要をせず、こちらの意向を大切にしてくれる、そんなふわっとしたここで働く仲間が好き。
そんな前夜、息子の『生活』の宿題に付き合わされ、0歳から8歳までの写真を一枚ずつ貼り、誰かのインタビューを記入するというものでした。「ママ、0歳の時の話をして~。」「寝返りの練習を頑張っていました。」「え~、他にない?」「高熱を出してうなされていました。」「う~ん。」「ぬいぐるみが大好きで、よくかじっていました。」「それにする~。」基準がよく分からん!!「どのぬいぐるみもかじるから、みんな散々な目に遭っていたよ。」「でもくみちゃんだけかじらなかったよ。ボクその頃から大事にしてた。」「ああ、そうかも!」と言って二人でワイワイ。年末ぐらいに、喧嘩の休戦協定を結んで以来、すっかり仲良し。入院し、自宅で療養しながらも副作用にやられ、そんな話を息子には全部説明してきました。なんで今辛いのか、理由が分かることで本人なりに納得し、わがままを言ってもいいポイントかどうか見極めているんだなと。そのしわ寄せが母にいったのか、そちらでわがまま炸裂。バランスの取り方も分かっているのか、やはり子供らしくてよし。
手術当日の朝、姉から入ったメッセージでずっと気になっていた『私の卵巣嚢腫は良性だった』という言葉。退院し、改めて母に聞いてみました。「私が一人暮らしを始めてから、お姉ちゃん婦人科で手術をしてるよね?」「そうなのよ。あまりにも辛そうだったからお見舞いに行ったわ。」その言葉を聞き、色々思い出してみると、蘇ってきたいくつもの会話。それは、私が30歳になる頃、姉が34歳の時にかかってきた電話でした。「S、結婚するとかしないとか、子供を持つとか持たないとか関係なく、いいから婦人科検診に行ってきなさい!私ね、いざ子供を考えた時に婦人科系で病気が見つかってまずは治療をしてからになったの。あんたは前から生理痛が酷かった。同じ姉妹だから、何かあってからでは遅いから行ってきて!」「一応職場で毎年健診には行っているよ。あ、でも市から婦人科検診の案内も来ていたかも。」「この際だから徹底的に調べてもらってきて。私と同じような後悔をあんたにもさせたくないから。もうね、ブライダルチェックとかしてもらったら?」「まだ結婚の予定ないし。」「ごちゃごちゃ言ってないで、診てもらってきなさい!」すごい勢いで言われたので、圧倒されてしまい、大人しく出向いた婦人科では全く異常が見つかりませんでした。あの時の会話は、退院した後の話だったのではないかと思えてきて。そもそも、姉が入院していた話は、直接聞いた訳でもなく、私に隠してくれていたような気もしています。受けたのは、きっと腹腔鏡手術、その時もっとそばにいてあげられたらと、私が姉の言葉で助けられたのに、その時の私は姉を助けることができなかったのだと思うと、色々な気持ちを届けに行きたくなりました。ありがとうとごめんねと、お姉ちゃんのアドバイスは正しかったということ。
そんな姉がまだ大阪にいた頃、帰省をした時、今日はK君と遊んでくると伝えると、「ああ、タカツ?」と聞き返してくれて。たまにうちにもやってくる幼なじみのような関係だったので、ヤクルトの高津臣吾選手(ヤクルトの現監督)に似ている彼は、すっかり姉から“タカツ”と呼ばれていました。K君にはお姉さんが二人。「上の姉貴はお前みたいで、下の姉貴は風来坊でSのお姉さんに似ているんだよ。」と話してくれて。だからコイツは女性の扱いに慣れているのか?と思うことも多々あり。そんな彼と姉となぜか私の3人で、ファミレスでお茶をすることになりました。「お姉さん、コイツほんとバカなんですよ。」「ああ、知ってる。」何なんだこの会話は。「貧乏くじばっかり引いているよね。K君がさ、もっと上手に世の中すり抜けていく方法を教えてやってよ。」「俺色々言ってるのに、コイツ結構譲らないから。火事が起きていたら、まずは周りに助けを求めるとか、水を被ってから入るとかできると思うんですよ。でもSは、自分一人で突っ込んで大やけどして帰ってくる。実はこんなことがあったんだって後から話してくれて。ちょっと待てよ、コイツぜっていバカだって何度思ったか分からないです。」「分かるわ~。あんたさ、ボロボロになって、そんな姿を見ているのも周りは辛いってこと、もう少し自覚しなさい。でも、K君のような友達がいてくれて良かった。アホだけど、うちの妹をよろしく。あんたたち、こんなに仲がいいなら付き合えばいいのに。」「そういうんじゃないんだよ!!×2」「あ、今はもったな。」「ね、はもったね。」と二人で盛り上がるものだから、姉が呆れてしまいました。「なんか、双子のきょうだいみたい。」と姉。「お前がおねえさんだろ。」「なんでいっつも私が上なのよ。」「はいはい、Sが対等に喧嘩できる相手がいてくれて安心した。友達だから本音でぶつかれるのかもしれないね。なんか、羨ましいわ。」「俺、お姉さんとSの関係も羨ましいです。真逆なのにお互いを信頼しているから。」「あんたさ、幸せ者だね。」「本当っすよ、心配して損した。まあ好きなだけ壁にぶつかれ。」「そうだ、誰かしら助けてくれるわ。」
そんな会話から何年経っても、姉は言う。「K君は若い頃から、彼なりの哲学を持っていた。本当にSのことが人間的に好きなんだなって思った。そういう人と離れたらダメだよ。どうしようもなく自分が嫌いになっても、K君はそばにいてくれるから。」姉勘、当たったよ。
口は悪いが、いつも、どんな時もそばにいてくれた。