季節を感じること

小学校が半日だったある日、息子が幼稚園時代からのD君と、一緒に帰るT君と待ち合わせをしてプールへ行くことになりました。パパっと準備を済ませ、満面の笑みで出て行く様子に、友情の深さを感じハイタッチをしてお別れ。その後、公園でも目一杯遊んだらしく、汗だくになって帰宅すると伝えてくれました。「T君ね、プールの後、アイスを3つも食べたんだよ~。ボクとD君は1個ずつ。」「T君、相変わらず面白いね~。前もかき氷4つ食べたんだよね。」「そうなんだよ。それでお腹壊したの、ぷぷっ。学校にも消しゴム4つ持ってきているの。そんなに使わないよね~。」と彼の話で大盛り上がり。とてもユニークなT君、今度機会があったら絡んでみよう。武勇伝が沢山出てくるかもしれない。そんな彼は、息子のことを“Rちゃん”と呼んでくれていて。その呼び方に何とも言えない近さを感じて嬉しくなりました。男の子の“ちゃん”づけ、なんだかいいな。

季節はもう秋。春に名古屋で再会したマブダチK君のことが思い出され、もう半年経ったのかと時間の早さに驚きました。その時、彼がふと私に伝えてくれたことがあって。「少し前に、娘が俺の後姿を見て、パパはげてる!って言ってきたんだよ。一か所だけ丸くなってそこだけない!って。おいおい冗談だろと思って鏡で見たら、本当に500円玉ぐらいの大きさで、そこだけ綺麗にはげていてさ。病院に行ったら円形脱毛症だと分かって、だから今、ちょっとロン毛なんだよ。上手に隠してる!」そう言って、ゲラゲラ笑ってくれるので、一緒に笑ってしまいました。彼の苦悩は全部笑い話になるんだなと。それだけ越えられる力を持っているから。「俺もさ、会社で本当にいろんなことがあって、すり減らしてる。でもさ、みんなその大変さの中で頑張っているんだよ。俺だけじゃない。妻は、掃除もしないで、夕飯準備もしない時がって、昼間何やってるんだろうって思ってしまう時もあってさ。だけど、娘の運動会のお弁当、深夜の2時から作り始めたんだよ。不器用だけど頑張っているんだな、そういう所認めてあげたいなって。」そう言って微笑む彼を見て、なぜか私の方が救われた気持ちになりました。K君のこの器に、私はずっと助けられてきたのかもしれないなと。「俺さ、Sには言っていなかったんだけど、前に婚約していたんだよ。」は?「高校の同級生、Sも知っていると思う、○○だよ。」「友達の友達だから挨拶ぐらいはしたことあるよ。」「うん。そいつと婚約中に、俺の会社が急に倒産したんだよ。もうドラマのような世界でさ。出社したら監査が入るからすぐに帰れ!とか言われてさ。こっちはパニックだよ。その時、婚前旅行に行く予定だったんだけど、とにかく会社のことが落ち着いてからって思って、残務処理に追われたんだ。その時に、取引のあった会社からこっちにも手伝いに来てくれって言われて、結局そのままそこで就職させてもらうことになったんだよ。そんなバタバタの中で婚前旅行に出かけたら、彼女が急にお腹が痛いって言い出して、緊急手術になった。Sと同じような婦人科系疾患だったよ。その後、うちの両親に婚約破棄をしてほしいと向こうの両親が伝えてきて、それっきり。」「・・・K君はその理由知っているの?」「うちの両親は知ってるよ。でも俺は知らない。」首を横に振った彼の表情はあまりにも切なくて。分からないまま、彼女の気持ちを大切にしようと離れたんだろうな。これは推測に過ぎない、でも手術をして分かったことは、女性にとって大切な臓器が無くなるということはあまりにも辛いこと。彼女はもしかしたら子供を望めない体になって、自分を責め、そっと離れたのではないか。色々な気持ちが交錯し、色々な人の痛みを感じ、泣きたくなりました。私が関東で、一人で頑張っていたことを知っている彼は、黙っていたんだろうなとも。「そんなことがあったとは思わなくて、驚いているし、辛かったよね。本当のところ、本人じゃないからどういった状態だったのか分からない。でも、私も卵巣や卵管を摘出して、いろんな気持ちが渦巻くから、女性として悲しかったのは本当によく分かるよ。その時に、そっと離れてくれたK君、なかなかできることじゃないよ。」彼の会社の倒産により、彼女に強いストレスがかかり、婦人科系に影響した、向こうのご両親がそこを結びつけるのは無理もないだろうと思ったものの、そこは彼に黙っておきました。それを伝えたら、K君はきっと苦しむことになると思うから。

「俺の中でSとY(男友達)は、とても信頼しているし、二人は別格だ。でもな、Sが一番でYが二番目、そこには大きな開きがあるんだ。」名古屋駅に向かう車の中で、そんなことを言われ驚きました。「どうしてそこまで特別に思ってくれるのか不思議だよ。Yが結婚したのは知っているけど、お子さんはいるのかなあ。」「一度流産したのはなんとなく分かった。でも、少し前の年賀状で名前が増えていて、子供を授かったのが分かったよ。」その話を聞き、胸がいっぱいに。お父さんの自殺の理由が分からず、ずっと苦しんでいた友達。彼に子供ができて父親になった時、少しでも心が解放されていたらいいなと願っていました。いつの日かお父さんを許せない自分を許してあげてね、この言葉を思い出してくれていたらいい。
時は高一の春、同じクラスになったK君と仲良くなり、彼は中学時代の沢山の友達に囲まれていました。その中に、Yも、整備士だった彼もいて、テストの多さに辟易しながらもどこかで笑いが絶えなくて。今の季節は秋。桜の木が黄色の葉っぱになり、空が高くなった。彼らも秋の気配を感じているだろうか。こんなにも励まされていたのだと、痛みと向き合ってきたみんなの強さを改めて知る。同窓会はみなとみらいで!と声をかけたらブーイングが待っているだろうか。どんなに季節が巡っても、共に過ごし、悩み、笑った時間は消えることはないだろう。