懐かしさがこみ上げて

気持ちのいい空が広がっていた日、息子と野球をするには持って来いの公園があるので、グローブとふわふわのバットを持って行ってきました。その日は、七分丈のカットソー、プニプニの柔らかいボールを緩く投げると、ピッチャー強襲ヒットのようなボールが私の左手首付近に当たり、イタッ!と言いながら大騒ぎ。よりによって丁度肌が出ている箇所だったので、本気で痛くて。柔らかいボールとはいえ、バッティングセンターにも通っているし、息子の成長を舐めていたな。嫁入り前ではなく、嫁に行った後軽快に戻ってきたから、傷の一つや二つ大したことではないのだけど、一応女の子じゃ!と心の中で思いながらも、息子とゲラゲラ笑ってしまいました。その後も、キャッチボールをしながらピッチングを教えると、コントロールが少し良くなって彼がぽつり。「中学になったら部活があるんでしょ。ボク、他のスポーツも気になるけど、野球ももう一度考えてみるよ。」その言葉を聞いて、なんだかぐっときました。今の言葉、野球チームの監督達が聞いたらきっと喜んでくれただろうなと。チームを離れたらそれで終わりではない、いろんな経験をする中で、選択肢の一つとして息子の中に野球があってくれることに胸がいっぱいでした。どの競技のユニフォームを着ても応援するよ。

以前、ネネちゃんが伝えてくれたことがありました。「Sちんは、相手に選択肢があった場合、自分の意見を持っているのにそれを言わない。その人がどうしたいのか、そういった気持ちを大切にしてくれるの。結論が出た後、選んだことを尊重して、その時ようやく自分が感じたものを伝える。そんなSちんにずっと助けられてきたんだなって思った。R君は、伸び伸び成長するよ。」そう言われ嬉しかったのと、ネネちゃんが大きな決断をする時、こちらが思っていることを何かしら感じ取っていたのだと思いました。言葉はなくとも、伝わる想い。深い所で繋がっていたからこそ。
時は、息子の幼稚園年中。園内で仲良くなった男の子ママの友達も、野球チームを検討していて、気になっている所があるから一緒に練習を見に行かないかと誘うと、喜んで日曜日に向かってくれました。元々草野球をやっていたお父さんも見学に来ると、気に入ってくれて友達の方が先に入部が決定。その後、小学校に入る前がいいと思い、友達がいてくれたこともあって息子の入部も決まりました。すると、彼女が面白い話をしてくれて。「実はね、野球チームでキャンプがあった時、パパも参加することになって、監督達と一緒にキャンプ場へ行ったの。そうしたらお酒の席で、コーチに誘われて、これから一緒に練習することになったの。」え~!!お酒の力ってすごいなと笑わせてもらった一日。その後、息子は毎週日曜日にグラウンドへ行くことに。練習を見に行くと、低学年の子達がみんなでわーっと何かを追いかけていて、なんだか楽しそうにしていました。帰ってきた息子に聞いてみると、みんなでバッタを捕まえていたそう。練習そっちのけで面白そうだなと思いながら、息子の成長を見守った日々。またある時は、大きめのヘルメットを被り、なんとかバットに当てて一塁まで全力疾走。練習終わりに横一列でグラウンドに並んだ時、一番年齢が低かった息子が、少しだけお兄ちゃんになって整列する姿を見て、時の速さを感じました。そして、学校が休校になるという異常事態のコロナ禍へ。野球の練習ももちろんなくなりました。少しずつ日常は戻り、検温とマスクをして数か月後にチームへ合流。そんな中、息子のモチベーションは下がり、行かない日が続いてもみんなは待っていてくれて。引っ越しをし、今住んでいるマンションからユニフォームに着替えて、練習に参加した時、後からこっそり様子を見に行くと、みんなが変わらない笑顔で迎えてくれました。新しい環境の中で始まった生活、それでもいつもそこにあってくれる優しい場所は、息子にとっても私にとっても大きなものでした。そして、前を向いて辞めるという決断をした彼。その気持ちを見守ろうとコーチ達に最後のご挨拶に行き、一区切りしてから一年。秋の空の下で、息子の中にずっと野球熱は残っていて、野球部も視野に入っていると分かった時、今のマンションからユニフォームを着て練習に向かい、砂だらけで帰ってきた日を思い出し、その一日をとても大切にしていた自分に気づきました。夢の続きを見せてくれてありがとう。でも十分よ、本当にやりたいことが見つかったなら、迷わず進め。このスタンスは変わらない。

中学のテニス部、3年になりダブルスのコンビが顧問の先生の判断で変わりました。テニスコートで発表があった時、それがなんとなく先生の戦略なのは分かったものの、後輩達も一瞬「え?」となったのを見逃しませんでした。2年の時に組んでいた友達との相性の良さも知っていたみんなは、少し違和感を覚えたよう。最後の公式戦は、先生の読みが当たり、団体戦で金星をあげることができた、それでもまだやり残したことがあるような気がして、夏休みに実行することにしました。どの部活も陸上部の長距離を残して、3年生は引退。受験モードに突入の雰囲気の中、2年の時にペアを組んだ阪神ファンの友達をテニス部の練習に誘いました。ラケットを持って二人でコートに入ると、みんなが歓迎してくれて。そして、試合形式の練習で彼女と組み、なんだか懐かしくて、和やかな空気も流れ、これで友達と私の中で本当の夏が終わったのだと思いました。その意図を、後輩達はなんとなく気づいているような気がしていて。そして、顧問の先生が、せっかくだからS達、みんなになにか挨拶してと言ってきたので、丸く円になって座っている中で立つことに。「何か言えってといきなり言われても・・・。」といつもの調子で話すと、みんなが笑ってくれました。「今日は迎えてくれてありがとう。部活の仲間っていいなって離れてみて改めて思ったので、一緒にいる時間を大事にしてください。」そして、彼女もひと言。拍手が送られ、二人にとって大きな一区切りであり、忘れられない一日になりました。結果も大切、でもその過程や心に残るエピローグも生きる上で大事な糧だって思う。空を見上げた時、涙がこぼれそうになるのは、そういうことなのかも。