ヤクルトスワローズの観戦日、甲子園を観た後、ドジャース対エンジェルスの試合を観たかったものの、息子の自由研究が思いのほか苦戦中だったので、音だけ消すことに。そして行く準備をしていた最中、ダイニングテーブルで勉強していた息子が絶叫。何事?と思いながらリビングに戻ると、42号のホームランを打ちダイヤモンドを一周している大谷選手が目に入りました。「大谷君、打った!」と息子が大盛り上がり。見逃した~と思いながらも、二人分見てくれたならまあいいかと一緒に喜ぶことに。そして、試合も終わり、天候も不安定だったので雨具を持ち、応援グッズも詰め込んで家を出ました。駅に着くと、すでにDeNAファンの方を見かけ、なんだか嬉しくなって。雨で試合が途中で終わりませんように。
今季最後の観戦三試合目、村上選手が復帰し、来期はメジャーに行くことが分かっていたので、二人にとって特別な日でした。いろんな気持ちで、どんよりとした空を見上げながら神宮球場に到着。すると、暑さは和らいでいたので、ほっとしながらライトスタンドに入り、椅子に座って早めの夕飯を食べ始めると、弱い雨が降り始めました。もう祈るしかない、そう思っていると、後ろに座ったのは前回お会いしたラグビーファンのご年配の男性。驚きながらこちらからご挨拶をすると、同じように再会を喜んでくれました。なんかね、また会える気がしたんだ。「あっ、ラグビーの!」と私の顔を見るなり嬉しそうに談笑が始まって。「よく来られるんですか?」「神宮の試合は半分ぐらい来てるよ。」「え~!すごいですね!」「いやいや、年間シートも買って、アウェイの試合でも年間シートを買っている人もいるから。上には上がいるよ。」と笑ってくれました。滲み出るスワローズ愛は、今日も健在だなと。その後プレイボール、ミストのような雨が降る中、息子とレインコートを着て本気の応援が待っていました。2回裏、村上選手の打席が回ってきて、久しぶりに応援歌を歌ったら、懐かしさや寂しさや海を渡っても応援していますといろんな思いが混ざり合い、ちょっと泣きそうに。すると、見事なツーベースを打ってくれて、みんなで歓喜。それから1点を先制し、傘を広げた東京音頭が待っていました。小雨の天気の中で、色鮮やかに傘がくるくる、おじさんと定番になったグータッチを私達と交わし、大盛り上がり。その後、ランバート投手が1点を取られたものの、安定した投球で同点のまま5回まで終了しました。そしてライトスタンド上空には、スタンドにいるみんなの気持ちをひとつにしてくれる綺麗な花火が。クルーのユニフォームを着て見る花火は、やっぱり格別だなと思いました。なんて贅沢なひととき。その後、試合の途中でおじさんが息子にスナック菓子をプレゼントしてくれて、二人でお礼を伝えなんだか胸がいっぱいに。「次回はいつ来るの?」「今シーズンは今日で最後なんです。」「そうか~。今度はラグビー場で会えたらいいね!どんな格好してる?」「リコーブラックラムズのファンなので、基本的に黒のユニです!」そう伝えると、笑ってくれました。おじさんは、いくつかの質問をしてくるのに、決してお父さんは?とは聞いてこない、それがもしかしたら息子を悲しませてしまうかもしれないと配慮をしてくれているのがなんとなく分かって。お互いのプライベートスペースがある、ぐいぐいこない、名前も知らない、でも同じスワローズファンとラグビーファンであることは分かっていて、会えば友達のように接してくれるこんな関係も素敵だなと思いました。「前回会った時、勝ちゲームだったっけ?」「そうなんです!」「じゃあ、今日も期待したいね!」そんな話でわいわい。そして、同点のまま最終回がやってきました。9回表、DeNAのチャンスの中、大西投手が抑えてくれてみんなで安堵。さらに裏の攻撃、先頭バッターの内山選手がヒットで出塁。ピンチの後にチャンスあり、そう思いました。代走で丸山選手、そして村上選手がバッターボックスに。ライトスタンドのボルテージは最高潮、神宮球場の打席に立つ村上選手を目に焼き付けておこうと思いました。手術をした後、息子と家を出て、離婚調停が待っていて、ようやく離婚が成立して、小学校の卒業式も中学校の入学式もあり、どんなことがあってもいつもスワローズは、つば九郎は、村上選手は、息子と私を励まし続けてくれていたなと思った途端、カーンというものすごい音が。うぉ~!!とみんなで打球を見送りながら叫び、バックスクリーンに入った途端、これまでにない大歓声に包まれて。村上選手の見事なサヨナラツーランに、ライトスタンドのみんなと感動を分かち合いました。おじさんとまずは力強いグータッチ、そして左に座っていた女性の方とダブルハイタッチを何度もして喜び、目の前に座っていたご年配の男性ともハイタッチし、斜め前の女性とはにっこり目を合わせて喜び合っていると、隣の島から通路まで来ていた女性とも手を伸ばしハイタッチ。気が付いたら雨も止んでいて、村上選手がもたらしてくれたものはこれまでも今日も、きっとこれからもとんでもなく大きなものなのだと改めて思いました。興奮冷めやらぬ中、ヒーローインタビューを聞いて、ライトスタンドのみんなと二次会が待っていて。おじさんとは来年の再会を楽しみにお別れ、そして応援団の方達がメドレーで応援歌を演奏し、一緒に歌い続けました。村上選手の応援歌の時、涙が溢れそうになって。こんな感動をありがとう。「いいぞ!いいぞ!応援団!」一番最後はみんなでこの言葉で締めくくり、熱い試合は余韻と共に終わりました。すると、帰り際、通路で息子が50代の女性からカードを渡されていて。二人でお礼を伝え、驚きながら見てみると、それは村上選手のカードで、これは神様からのプレゼントなのかと思いました。まだ思考が追い付いていない中、彼がひと言。「今の人ね、他の人にも配っていたの。」「すごい人がいるね。自分だけのものにしないで幸せを分けてくれる。なかなかできることじゃないよ。」「嬉しすぎるんだけど!ボク、村上がサヨナラホームラン打ってくれた時、鳥肌立った!今まで見た試合で一番感動した!」「本当だね。去年も三回目の試合でサヨナラ勝ちだったね。なんだかすごいことを経験させてもらっているな。」そう言って、二人でずっと心地の良い疲れの中、特急電車に乗って最寄り駅に着きました。
すると、前から歩いてきたのはヤクルトのユニを着た大学生らしき男性で、あまりの嬉しさにすれ違う時、思わず会釈をすると、同じ温度で会釈を返してくれてじーんとしました。コンマ数秒の世界、ほんの一瞬だった。それでも、こちらの想いが伝わったのだと。応援お疲れ様です、感動的な試合でしたね、一日の最後にお会いできて良かったです。時に、言葉はいらないのかもしれないな。カーン、夢を乗せたその一打は未来へと続く、最高のプレゼントを受け取った日、またここから歩き出そう。