誰かの持ち物

今日も天気が良かったので、自転車で隣の市にあるベローチェへ。食器を戻す場所を何気なく通過すると、テーブルの上には空になったリポビタンDが。ここは、ビジネス街。私よりも早く来たビジネスマンの方が、モーニングと共にグイッと飲んでいったのねと思うと、不思議とその光景が浮かび、自分も元気をもらったような気持ちになりました。それで、一日乗り切ってください。

まだ一人暮らしをしていた頃、アパートには若い男性が多く、特に挨拶をすることもなかったのですが、後ろ姿から持っていたスーパーの袋が見えて、勝手に応援。その袋の中には盛りだくさんのカップラーメンと野菜ジュースが入っていたから。一応栄養状態も気にしているあたりが、女性心をくすぐります。

最近、『銀翼のイカロス(半沢直樹4)』(池井戸潤著、文春文庫)を全部読み、まだ余韻に浸りたくて、終章だけもう一度読み直しています。池井戸さんが、直木賞を受賞した時の会見の記事をこの間たまたま見つけ、なんだか色々と考えさせられ、同時に反省しました。『今回「下町ロケット」という作品を書いて、おそらくこの小説の中の舞台では2年ぐらいあると思うんですけど、その中で登場人物が30人いれば、30人なりの30個の人生が輪切りにされている。人間の生き様を書いていくのが、もしそれが文学と言えるのであればそうかもしれないですね。』
そして、最後には、女性へのメッセージとして、企業小説はあまり読まれていないと思うので、食わず嫌いではなく、他の小説と同じように読んでくださいと。

思いっきり、食わず嫌いでした。苦手意識が先行し、全く手に取っていなかったジャンルです。こういった世界観があったのだと、驚きと感動が渦巻き、今この時に気づいたのも何か意味があるのかなとも思っています。そんな私の文庫は、いずれ息子に渡す予定。本人に強要するつもりはもちろんなく、とりあえず解説を付けて、こっそり誘導するつもりです。社会人になる前に読んでくれたら、自分が思い描く自分の姿が少しだけ見えてくるのかも。そして、表面だけではないその人の胸の奥底にある、熱い想いも。

そろそろパソコンを閉じて、自転車を走らせて帰らなければならないのに、帰りたくなくなってしまいました。だって、お昼の時間帯になったら、近隣で働く方達がどっと押し寄せ、レジ前で渋滞ができていたから。ものすごく広いので、満席になることはないのですが、忙しい合間にランチに来た人達の熱気を感じました。スマホと本とノートパソコン。皆さん持っているものは似ている。凝縮された時間の中だから、充実できることもありますね。

半沢直樹の決め台詞は、「倍返し」。でも、本文中に出てくる「基本は性善説」という言葉が私は好きです。やられたらやり返すのだけど、彼にはいつも信念とどこかで大きな優しさがある。私にはまだまだ足りませんが、やっぱり見習いたいと思います。

時間に追われながら帰ってくると、その後に息子が帰宅。学校でやった算数のプリントを楽しそうに見せてくれました。小鳥さんが5匹いるので、丸が5個ある所まで線を引いてあり、その絵にぬり絵もしてあったのですが、1匹だけ色が違ったので、本人に聞いてみました。「だって最近生まれたから。」芸が細かいな!
彼の持ち物には、いつも沢山の夢が詰め込まれているようです。