ご縁を大切に

息子が行き始めた学習ボランティア、ある日帰宅すると伝えてきました。「最初の面談でママの前に座っていた女の先生がいたでしょ。その先生がくれたの。」そう言って見せてくれたのは、スワローズの村上選手のシールで叫びそうになりました。「え~!最初の面談で、翌週はプロ野球観戦があるからお休みしますって話になった時、どこのファンか聞かれたからヤクルトだと伝えたこと、先生は覚えてくれていたんだね。それにしても、どうしてシールを持っていたのだろう。」「先生ね、ヤクルト飲料を宅配してもらっているから、そこでもらったみたい。」「なんだかすごいご厚意だな。R、頂いた気持ちを忘れないでいようね。大切に持っていよう。」そう話すと、嬉しそうに頷き引き出しにしまっていました。それはそうとして、息子の元にスワローズグッズが集まるのが不思議だなと。プレ幼稚園の親子教室は終わり、年少になり母子分離が始まった初日、予想はしていたのだけどギャン泣き。それでも先生達が宥めてくれてなんとかその場を離れました。半日経ち、早めにお迎えに行くとまだ泣いていて。すると、心配そうにこちらを見ている私に気づいたプレ幼稚園時の担任の先生が、息子と手を繋ぎながら出てきてくれました。「R君、ずっと泣いていたのだけど、おやつのヤクルトの時だけ泣き止んで頑張っていました~。」その話を聞き、思わず笑ってしまって。そりゃ先生、ヤクルトを飲みながら泣けませんよね、何かひとつでも息子の頑張りを伝えようとしてくれた優しさに胸がいっぱいでした。そんな息子は、コロナ禍の時にヤクルトスワローズという球団を知り、つば九郎に一目惚れし、すっかりファンに。今は中学生、1本のヤクルト飲料が大きな輪になったね。

息子の社会科の担当は、ベテランの女の先生。夏休みに新しいペンケースがほしいと言い出したので、一緒に買いに行くと教えてくれました。「これね、社会の先生が使っているの。」そう言って見せてくれたのは前方後円墳のペンケースで、随分リアルだったので盛り上がってしまって。「社会の先生らしくて面白いね!ぜひ一度授業を見せてもらいたいよ。」「担任の先生じゃないから、なかなか難しいね。」と息子。まだ二年半ある、どこかでチャンスを狙うことにしよう。教育実習先の恩師がよく言っていて。社会科という授業は、面白くしようと思ったらいくらでもできるし、つまらなくしようと思ったらつまらなくできてしまう教科なんだよ。興味を持ってもらえるかは話し方にもよるかもしれないし、その人の経験にもよるのかもしれないなと。だから、深みのある人になれ、そんなメッセージを実習中何度も込めてくれました。失敗を全部取り込んでいつか成功に変えろと。最初から最後までうまくいっている人を面白いと思うか?実習生がこの短期間で何を得て成長していくのか、生徒達は見ているぞ。恩師に言われた言葉が、細部にまで沁み渡っていた。自分があの時置かれていた境遇は、先生しか知らなくて。「日本料理店で着物を着て、お酒を扱うお店で深夜まで働いていたんです。毅然としようとするのだけど、時々嫌な思いもして、私何をやっているんだろうなって。このお金で教壇に立ってもいいのかなって。それでも、進んだ先に先生と出会えて良かったです。」深夜の校舎で二人だったからこそ、話せた本音に恩師は何とも言えない表情で微笑んでくれました。「その経験も全てあなたの味が出る。失敗を恐れず、いろんな思いをぶつけろ。先生の言葉に、子供達は顔を上げるぞ。」想いの深さとは何か、この時沢山のことを学んでいたのかもしれません。面白い人になれ、そこにはきっとinterestingもfunnyも含まれていて。恩師は両方兼ね備えている人だった。ずっとお手本だな。

祖父と母、彼ら二人は共依存の関係にあり、私はずっとその中で巻き込まれてしまっていたのかもしれないなと、少し前にひとつの解に辿り着きました。本当は、どこかでもっと前から気づいていて、それを認めたくなかったのかもしれないなとも。大学も就職も、祖父と母が心配で地元の愛知に決めました。でも、その後に司書資格が取れて、遠恋をしていた横浜の彼がこっちに来ないかと言ってくれたタイミングで、もう今しかないと思い実家を出たいと二人に言いました。母はどうしようもない状態になり、祖父には怒鳴られて。「お母さんはどうするんだ!」と。とても苦しい時間でした。私の幸せは?その言葉は、ぷかぷか宙に浮いてしまって。渦中にいると、目の前のことに必死過ぎて何も見えなかったのだけど、時間が経ち、改めて得られた知識を繋ぎ合わせてみると、そういうことだったのかと納得できた自分がいました。胸の痛みはゼロじゃない、でも随分薄くなっていて。自分のタスクを自分で解決していくということ、簡単じゃないけど、向き合ってきて良かったなと思いました。読者さん達がいてくれたからこそ。

息子の学習ボランティアの先生は、体育会系の大学生の男の方だそう。球技が得意で、波長が合い、彼が少しずつ馴染んでいくのが分かりました。朝練に行き、学校の授業があり、午後練があり、慌てて帰った日、5分で夕飯を食べすぐに先生の待っている場所へ。これだけパツパツのスケジュールだと、どこかではち切れて爆発してしまう息子が、充実した表情で帰ってきてくれました。ああ、穏やかにいられる相手と過ごすことってとても大事なんだなと。最初の面談の時、目上の女の先生が伝えてくれて。「中学もあって、習い事もあるということは、大人からしてみたらWワークと同じことです。だから帰ってきたら褒めてあげてくださいね。」私と息子が見つけた世界は、やっぱりあたたかかった。そのご縁を大切に持って、ゆっくり先へ。一年生も気づいたら折り返し地点。青春って早くてなんて濃いのだろう。