小さな波に揺られて

週末、雨も降り、冷えや気圧の変動もあってか、息子のメンタルがぐらついていたので、少し構えました。今回はハイテンションの方で、それはそれで別の大変さがあって。何も言うことは聞かないし、バタバタと動き回っているので、落ち着かせようと一苦労。自分も頭がガンガンしていたので、これは一体どうしたものかと思考を巡らせ思いついたひとつの名案。「夜になってもっと雨が降るみたいだから、今のうちにお寿司でも買ってくるよ。」「え~、だったら宅配にしたら?」いやいや、体も休めるしできればそうしたいのだけど、30分でいいからちょっと離れたいんだよなと思い伝えることに。「少し体を動かしたいし、ささっと出てくるよ。Rは朝練があったから、自宅でゆっくりしていてね。」「分かった。身の危険を感じるぐらい寒いよ。」秋の気温でそんなことを言っていたら、私達絶対に雪国には住めないなと笑えてきて。そして、ストールをぐるぐる巻きにして家を出ました。この時間を無駄にしないように、骨伝導のイヤホンを付けて音楽を聴きながら歩き出したらゆっくり気が紛れてきて。やっぱりこの判断は正解だった。こうやっていろんな局面を乗り越えてきたんだよね。きっとこれからも越えられる、越えてみせる。

息子と最近はまったブロックブラストというゲーム。ブロックをはめて消していくというシンプルさが楽しいものの、テトリス世代の私としては、上から落ちてきて変換ができるイメージがなかなか払拭できず最初は苦戦しました。一度植え付けられた先入観を忘れるのってなかなか難しいのだと痛感。息子がサクサク進めていくので、コツを聞いてみると意外な返答がありました。「あまり考えないで感覚的にやっているんだよ。その方が上手くいくかも。」なるほどなるほど。「ママは慎重なんだよ。たまには大胆でもいいかもよ。」ん?それは日常生活にも当てはまる?と思いながら場数を踏んだら、パターンがインプットされどんどん上達するので驚かれました。人間の脳って興味深いな。少し前、合唱祭の後に広報委員で一緒だった友達と話した時、何かストンと落ちるものがありました。彼女と話すと、姉や塾の講師で一緒だった友達を思い出す、その理由が分かって。「私ね、高校で理系のクラスに分かれる時、入ろうか迷ったことがあったの。」その話を聞いて、急に頭の中で繋がりました。塾の講師時代の友達は大学で文系を選んだけど元々理系だった、そして姉も高校時代に迷っていたことがあったなと。ふと、ネネちゃんが相談してきたことがありました。「私、英語と数学が得意なんだよ。でね、薬剤師の道もいいかなってちょっと考え始めていて。」そう言われた時、白衣を着ている姉も想像できたので、それはそれで選択肢としていいんじゃないかと応援したことがありました。でも結局彼女は、英語を磨きたいと英文科に進み、語学力を活かして航空会社に就職することに。その後、いろんな葛藤の中、もっと力をつけたいと思い切って退職し、カナダへの留学を決めました。そして、一年後に帰国し、仕事も貯金も恋人もナイナイ尽くしだと自虐的に言いながら、就職活動を開始。なかなかうまくいかない時、弱音を吐いてきました。「一年海外留学したけど、そんな人はごまんといるし、年齢も重ねて採用してくれる会社はなかなかないのかもしれないね。」と。そう言われても、そんな風には思わなくて率直な意見を伝えることに。「関空で働いていた姿も知っているし、カナダでもいろんな資格を取って頑張ってきた所を見てきたよ。ご縁さえあれば、必要としてくれる会社に出会う気がするよ。」そう話すと、いい感じで彼女の自信が戻ってきて、肩の力が抜けたことが分かりました。そのすぐ後に面接に行くことになった日、その表情を見て、今日決めてくる予感がして。そして、私も用事があったのか、面接終わりのネネちゃんと中村公園駅で待ち合わせをしました。その時、本当にいい表情をしていて。手応えは十分、その場でほぼ採用は決まったとのこと。姉が掴んだ外資系の道に感無量でした。その時着ていたチャコールグレーのスーツは、私の勝負スーツに。そして、その会社の社員さんと私が出会い、横浜名古屋間で遠恋が始まったのだから人生は面白い。ネネちゃんが繋いでくれたご縁は、仕事だけじゃなかった。それから何年も経ち、姉の退職日がやってきました。いろんな気持ちの中にいることは分かっていたのだけど、やっぱり何かを伝えたくて、会社のメールアドレスにひと言だけ送ることに。長い間お疲れ様でしたということ、そして中村公園駅で会って面接を無事に終えた時のネネちゃんの表情が嬉しかったということ、関空からカナダに留学して力を付けて帰国し、その経験を仕事に活かした姿は格好良かったよと伝えると、少し間を置いて返信がありました。毅然としていたのに、Sちんのメールで泣けてきた、仕事中にどうしてくれるんだと。その文面を読み、どこまでも彼女らしくて笑ってしまいました。いい職場に出会えて良かったね。その後、彼が教えてくれて。「○○さん(姉)の退職日、テレビ電話会議の時に横浜の社員とも繋いだんだよ。そうしたら泣いていたよ。」「ああ、メールで私が泣かせちゃったの。ずっと姉の背中を見てきたから。」そう言うと、とても優しい表情で微笑んでくれました。いい姉妹だなと。そのテレビ電話で、横浜にいた姉の女性の上司が、泣くんだったら辞めなきゃいいでしょと言いながら、もらい泣きをしていたらしい。本当の愛ってこういうことを言うんだろうな。退職理由は、不妊治療に専念したかったから。その真意はネネちゃんにしか分からない、でも沢山悩んで出した答えであること、知ってるよ。

私は何を紡ぎたいんだろうと改めて思った。周りにいたリケジョの視点が鋭くて、ドキッとさせられたことが懐かしくて、誰かと話すとまた誰かのことを思い出して。そういえば、随分前に似たようなことを言われたなと。そして、彼女もまたそんな風に自分のことを思い出してくれたりもするのだろうかと。みんなそれぞれ抱えている痛みがあって、でも優しさに触れると、自分の本心と向き合える勇気が持てたりもするのかな。姉に言えない話が沢山ある、そのことをネネちゃんは気づいていて、それがもう思いやりなんだよ、その気持ちだけで十分だと思っています。言葉だけじゃないものから、人の想いを深く感じ取る、その能力はもしかしたら大切な財産なのかもしれない。