明日への一歩

旭山動物園から旭川駅に到着し、まだ夜まで時間があったので、翌日に予定していたサイクリングを息子とすることにしました。私はシティサイクル、彼は子供用のマウンテンバイクで、レンタサイクルのスタッフさんに道を聞き、いざ常盤公園へ。旭川市内を息子と気持ちよく走ると、彫刻の街らしく、いろんなモニュメントを見ることができ、沢山の木々を潜り抜け、胸がいっぱいになりました。この街に溶け込んでいるかのような感覚、優しい人達に触れ、綺麗な景色を見て、このひとときを忘れないでいようと思いました。そして、本に載っていた常盤公園へ。雨だったら難しいと思っていたサイクリング、行きたいと思っていた場所に辿り着くことができ、感無量でした。そして、めちゃくちゃ広い!入り口で息子と交代でカシャリと写真撮影。その後、園内を自転車で走らせると、綺麗な噴水が見えて、カモさん達が気持ち良さそうに泳いでいて、緑に囲まれたこの公園は自分のパワースポットのように思え、不思議な力をもらったようでした。その後もぐるぐる回り、たこの遊具で遊んだ後、噴水まで戻りカモさん達にバイバイ。来た道をゆっくり帰り、最高のサイクリングが終了。スタッフさんにお礼を言うと、駅の反対側の景色も勧めてくれて、沢山の自然に触れながら最後の晩餐に出かけました。そこは、北海道の食材を使ったブッフェ。お腹がいっぱいになっても、デザートを取りに行き、新しいぬいぐるみ達をテーブルに並べ、笑い転げた楽しい時間でした。

帰り道、息子がやりたがっていた北海道限定のガチャガチャへ。動物のキーホルダーが出てきて、大喜び。その後も、ローソンで夜食を買い、まさかのからあげクン2連チャンに笑い、最後の夜を噛み締めて最終日の朝を迎えました。睡眠不足がきついなと思いながらも、朝食ブッフェに向かうと、息子がすっかり気に入った旭川ラーメンを自分で作り始め、私も食べ納めておきたいと思い、二人でミニサイズの朝ラーが完成。そして、相変わらずメロンでしめて帰ろうとすると、昨日とは別のスタッフさんが声をかけてくれました。「あれ?今日はカワウソじゃないんですか?」と裏側で伝言ゲームが行われていたよう。「昨日旭山動物園に行って買ってきたので、今日はライオンなんです~。」と言うと一緒に笑ってくれて。軽く雑談をした後、最終日だと分かると最後に伝えてくれました。「夏の北海道、涼しかったでしょ。気を付けて帰ってくださいね。」そのトーンがあまりにも優しくて。人の温もりっていいな、改めて感じさせてもらいながら、ライオンを抱きしめた息子と一緒に手を振ってお別れ。いい旅をありがとう。

そして、慌ててパッキングし、散々弾けたお部屋ともお別れして、フロントスタッフさんに写真を撮ってもらい、お礼を言ってホテルを後にしました。スーツケースを引きながら歩いていると、息子がぽつり。「ボク、一週間はいたかった。」「分かるよ~。お母さんもそれぐらいいたかった。居心地良かったね。旭川の街ももっとゆっくり歩きたいと思ったよ。」そう言って、二人でわいわいしながら旭川駅に到着しました。バスまでの時間があったので、構内でのんびりしていると、『特急札幌行』の文字が。父の弟である叔父さんに最後に会ったのは、まだ20代半ばの新宿駅。東京の単身赴任を終え、札幌に帰るから最後に会っておきたいと連絡をくれました。北海道、寒いからと叔父さんの誕生日プレゼントに手袋を渡すと本当に喜び、一人で頑張る私を心配しながら応援してくれて。この特急に乗ったら、叔父さんに会いに行けるんだ、でも今の私の状況を知ったらきっと心配をかけるから、いつの日か笑って会える日を楽しみに待とうと思ったら、新宿駅で別れた叔父さんの笑顔を思い出し、泣きそうになりました。「一人で頑張るな。」そんな叔父さんの声が聞こえてきた気がして。大丈夫よ、年は小さいけど、あたたかい世界を持った息子がいるから。老後に、一人でまた来たいと思っているのだけど、息子も気に入ったから付いてきちゃうかも。また会えたらいいね。札幌行の表示を見て沢山のことを思いました。そして、バスの時間が。息子と乗り込み、綺麗な街ともお別れ。段々と田園風景が広がる一本の道をバスが走り、旭川空港に到着しました。見事な快晴、降られたのは1日目のほんの数分だけ、北海道で過ごした全ての時間に感謝しよう。その後、チェックインを済ませ、まだまだ時間があったのでおみやげやさんを行ったり来たり。フードコートで遅めのランチを済ませ、空港から見えた旭川の景色を覚えておこうと思いました。そして、搭乗口へ。「ボク、帰りが飛行機なのも嬉しい!」とまたワクワクが始まって。今回もまた窓際に座り、ゆっくりと離陸が始まるとわっといろんな気持ちがこみ上げてきました。「北海道にバイバイしよう。」そう言うと、息子も窓の外に向かってバイバイ。沢山の思い出がこの地に残ってくれた。

全行程を無事に終え、ほっとしたのか連日の睡眠不足で眠ってしまっていたよう。「トイレに行かなくて大丈夫?」と近くで声がしたので、はっと目を覚ますと、息子に優しく声をかけてくれていたのはCAの方でした。機内を守ってくれている大きな大きな存在だな。ネネちゃん、あなたの夢は叶わなかったけど、そこを目指していた姿をずっと覚えておくよ。強く、綺麗だった。その飛行機に息子と乗れたこと、幸せでした。翼、ネネちゃんの心にあると信じているよ、そして私にも。苦しい家庭環境だったね、でも重たい雲を突き抜けた空は別世界だった。自分は自分でいいんだ、そう思えた人はきっと強いんだ。気が付くと、着陸態勢へ。夜の羽田空港は幻想的でした。「東京に帰ってきたね。」「ボク、『あつ森』では何度も飛行機に乗っていたんだけど、実際には初めて乗れたから嬉しかった!」そう話してくれて笑ってしまって。その後も、回転ずしでスーツケースを受け取り、高速バスや電車に乗って、お疲れモードの息子と若干喧嘩しながら、ロッテリアで夕飯を済ませ、機嫌が直ったので仲良く帰ってきました。いつものように寝かしつける前、北海道で何が心に残ったか聞いてみました。「ゆめちゃん!!元気に遊んでいる姿が見られて嬉しかった!」「そうだね。お母さんも感激だったよ~!」とまだまだ大盛り上がり。そして、ぐっすり眠ってくれた後、急に泣けてきて、頭を過ったのは、息子と気持ちよく旭川の街をサイクリングしたあまりにも優しい時間でした。明日への一歩はめちゃくちゃ大きいぞ。
旭川のみなさん、沢山の笑顔をありがとう。私も頑張ります。