穏やかな熱量

昨日、息子が学校から帰宅すると、忘れ物をしてきた!と大騒動。どうやらその日は、学校から持ち帰らなければいけないものがあり、そのことですっかり飛んでしまっていたよう。「水筒を忘れてきちゃったんだよ。」「え~!まだ暑い日が続くし、持って帰ってきてね。」と対策会議。よりによって次の日は、学校から直接中学校の見学に行くのだそう。かなり大きな水筒も自宅にはあるのだけど、荷物になるなとあれこれ考えていると名案が浮かびました。「お母さんのミニミニサイズの水筒に氷だけ入れて明日持って行きなよ。それで、学校にある水筒を洗った後、その氷と水道水を入れたら氷水になるから。」「う~ん、そうする。」と仕方がないので納得した様子。さてさて、今日はお迎えなしで中学校から直接帰ってくることになり、道順を教えました。早いな、もう小学校生活も半年か。

別居をした時、学区外申請さえ出せば今までの小学校へ通えると思い込み、市役所へ行くと、学区境から2ブロック離れているということで上の方と面談が必要になってしまいました。読みが甘かったなと思いながらも、息子の様子などを話し、送り迎えの条件付きで許可して頂きました。本当に有難くて。その時は3年生の3学期、もう2年半小学校への道を歩き、四季を感じ、息子の歩くスピードの変化に微笑ましくなりました。親がやることって、本当はそんなに沢山ではなくて、子供が自分で掴んできてくれたものを応援する、そんな役割でもあるのかなと思ってもみたり。中学校へも学区外申請が必要なのだけど、またみんなと一緒に進学できるよう頑張ってみようと思います。そして、幼稚園が一緒で小学校では離れていたお母さんとも、中学で再会の予定。それぞれの6年間をまた語り合える日が楽しみです。それまでに私は、焦らず気持ちの整理をしていけたらなと。「色々あるって、そりゃ人間だもん。よく話してくれたね。」きっとそんな言葉をかけてくれる友達。気持ちを汲み、さらにその先へ引き上げようとしてくれる彼女に会った時、どんな気持ちになるだろうと思っています。また道が重なるんだね。

母が精神的に相当不安定になり、巻き込まれてしまった時、かなりのダメージを受け思い切って距離を取ったことがありました。その後、まだ名古屋にいた父のフォローもあり、母の状態はやや落ち着き、そして両膝の手術が待っていて。悩んだ挙句、母の手術には自分が必要だろうと思い、再会することにしました。怖さもあった、でもそれを上回る心配もあって。会ってみると、母の波は比較的落ち着いていて安堵したものの、手術の前後はやはり大変で、それもまた想定内。そして、いろんなことが落ち着き、母の自宅で二人になるとやっぱり切り出されました。「私の何がいけなかったの?」と。うーん、その説明すらする余裕がないのだけど、今持っている力で緩い変化球を総動員してみるか。まず、お母さんのことを嫌いになったとかそういったことではないのだということ。これは大前提。むしろ好きだからこそずっと悩んできた。私が苦しんでいた時、お姉ちゃんが様々な検索をかけてくれる中で、ある人格障害に行き当たり、お母さんの状態に当てはまる所がいくつも出てきた。妹が受けてきたダメージを知った姉は、言葉を選びながら離れるように言ってくれた。落ち着いて、いろんな角度から考えてみたのだけど、お母さんの人格障害は後天的なもので、きっと厳格だったおじいちゃんの元で育ったお母さんの精神を圧迫していたのも原因だったんじゃないかって。だから、お母さんそのものに怖さを抱いている訳じゃないんだ。でも、やっぱりマイナスの感情をぶつけやすい私には集中してしまう。きっとあまり自覚はないと思うし、これまで受けた痛みは自分の中でゆっくり処理していこうと思っていて、その途中でお母さんの手術があったから、まだ会えそうにもない中で再会したから、時期が早くて整理が追い付いていないんだ。お母さんを責めるつもりは全くなくて、ただそっとしておいてほしいの。落ち着いたトーンでこういった内容を本人に伝えると、案の定母は泣いていました。それでも、真意は伝わってくれて。心の病が娘に向かってしまったのだと。今の母は、その会話さえきっと覚えていないのだけど、彼女の芯に届いてくれたその時間は忘れないでいようと思います。

そんな気を張った日常の中、顎関節症が悪化しないように通っている接骨院で若い男の先生がこちらの仕事を聞いてくれました。「エッセイを書いているんです。」「へえ、僕にはよく分からないんですが、似たような言葉でエンゼルフレンチなら知ってます!」いやいや“エ”しか合っていないし!全然違うし!!と思いっきり突っ込んでしまおうと思っても、うつ伏せなので笑うしかなくて。そして別の先生が伝えてくれました。「僕がまだ専門学校に行っていた時、男の子の顎関節症を見たんですけど、お灸をしたら改善が見られたことを思い出して、良かったらやってみますか?」と意外な提案をされたのでトライしてみることにしました。すると、体が緩む感覚があり、本当に兆しが見えて。意外な所にきっかけがあるんだなと嬉しくなった帰り道。思考を今までとは違う所へたまには飛ばしてみようか。いろんな別れがあり、いろんなことがあり、ひとりになった時ふと涙が溢れそうになるのだけど、共に過ごした時間は心の中に。さあ、中学校見学から帰った息子を迎えよう。母親としての旅はもう少し続いていく。多分そろそろ折り返し地点。