電話は好き?嫌い?

子供の頃から、電話はあまり好きではありませんでした。理由は、相手の顔が見えないから。どのタイミングで相槌を打てばいいのか、話せばいいのか、自分の声はきちんと届いているのか、なんだかとても曖昧で、なんとなく不安でした。

息子が熱を出し、幼稚園をお休みすると、夕方必ず先生が電話をかけてきてくれます。
「大丈夫ですか?今何していますか?」と聞いてくれた時は、「プーさんを見ているぐらい元気です。」と伝えると、「さすが、くま好きですね~。」
先生の返しいいね!と思いながら一緒に笑い、息子に代わると、恥ずかしがって取ろうとせず。先生大好きなのに、息子も電話は苦手なようです。
一対一で話せるチャンス、なかなかないよ!

一人暮らしをしていた時、愛知にいた祖父がよく電話をかけてきてくれました。メールが主流の時代でも、祖父はもちろん電話が中心。私の携帯番号をいつも暗記し、自宅から、入院先からたあいもないことを話してくれました。
病院の中を点滴と共に歩き、小銭を持ってかけてきて、話している最中に公衆電話のお金がチャリンと落ちる音がする度に、なんとも言えない気持ちに。
そばにはいられなくても、ちゃんと話ができて、電話でいくらでもコミュニケーションが取れるからねって心の中でずっと思っていました。

祖父が自宅にいる時は、私が勧めた公共図書館を利用していました。大分年老いて、運転ができなくなった時は、母の運転で町の図書館へ。多分そこの図書館の誰よりも利用していたんじゃないかな。
ある時、祖父が電話をかけてきてこんな話をしてくれました。
「この間、本を借りようと思ったら、借りた本三冊をまだ返していないことに気づいて、自宅にあるんだけど、今日借りようと思った本を借りられないかと窓口にいた人に聞いてみたんだよ。そうしたら、パソコンで調べてくれてSちゃんも同じ家に住んでいることになっていて、利用者カードも持っているから、お孫さんが借りたことにしましょうねって言ってくれて、借りられちゃったんだよ。嬉しかったな~。」

年を取った祖父の趣味はどんどん減っていき、大好きな運転もできなくなり、本を読むことを生きがいのようにしていました。昔は強かった祖父も、母の顔色を見て図書館の往復をお願いするようになり、せっかくきたのにという気持ちを、そこにいた司書の方は感づいてくれたのだろうと思うと、遠く離れたところからお礼が言いたくなりました。

図書館の本は、利用者登録をした本人が借りて、返すというのが大原則。そのことは司書なら誰でも知っていること。そのルールを飛び越えて、祖父の気持ちを察してくれたこと、それをとても嬉しそうに電話で話してくれた時、祖父の表情が手に取るように分かり、私も一緒に微笑んでいた、電話もいいなと感じた嬉しい時間でした。

遠く離れた人にすぐ伝えたい、今の温度をそのまま届ける、本当は素敵なツールなのかも。
息子とは、糸電話から始めよう。近いわっ!!