小さな芽

学校から帰ってきた息子とわいわい過ごす夕飯の時間、クラスの話になり、何気なく聞いてみました。「そういえば○○君、よくサッカーチームのユニフォームを着ているよね。何度か授業参観で見かけたの。」「そうなんだよ~。人生をサッカーに賭けているんだって。」めちゃくちゃ格好いいなと、思わず笑ってしまいました。若いのに、ビジョンがしっかりしている。「見るからにサッカー少年って感じだよね。おっとりしているのに、先生に対してツッコミもあったりでそのギャップがまたいいね!」とこちらが言うと、ゲラゲラ笑っていました。息子の友達は、いつもCanterburyのTシャツを着ているラグビー少年もいて、競技は違ってもスポーツを愛する者同士が集うってなんだかいいなと。今のうちにサインでももらっておこうか、いつの日かぼんやりと観ているテレビの向こう側でボールを追いかけているかもしれない。

いろんな想いが巡る中、お墓探しをゆっくりと再開しました。母からは、早めに探してほしいと以前言われていたものの、急ぐことではないと思っているので、自分の心のあるがままに。みんなにとってハッピーである選択をしたい、そのみんなというのは祖父や祖母、そして生後一週間で亡くなった母の兄である伯父さんも含めた気持ち。姉夫婦がいずれ名古屋に戻る可能性、息子が気に入った大阪へ単身で行く可能性、何より私がどうしたいのか。我が家にとって要は、やはり私自身なのかなと思いました。心理学も哲学も本当にかじった程度にだけ学んできて、全然足りないのだけど、祖父母や伯父さんの魂は今も生き続けている、そんな気がしていて。そういったことを、ネネちゃんは理解し、だからこそSちんの気持ちやタイミングがとても大事だと伝えてくれていました。祖母が乳がんで闘病中、母は病院につきっきりで、自宅で姉妹だけで過ごすことが多い中、祖父母の親類が近くに住んでいたので、何かしら世話を焼いてくれていて。何十年も経って、それがどれだけ有り難いことだったのか身に沁みました。昭和という時代背景もあった、そして世話好きだという地域性もあった、なんだかんだで大人の人に助けられ、その優しさに包まれ、きっとネネちゃんの方が長女で沢山大変だったのだけど、その時支えてもらったことは忘れてはいないだろうと思いました。その地域からお墓を移すということはとても大きなこと、だからこそ、後悔のない選択をしたいと思っています。
祖父がとても大切にしていた囲碁仲間。毎週土曜日の夜になると、仲間の家を順番に回り、うちの時は一人また一人と縁側からやってきてくれました。玄関からじゃないというのも、なんだか近さを感じて。その後、囲碁を囲むのだけど、奇数の時は一人の方が対戦を見守ってくれていて、そんな光景も好きでした。時にお年玉をくれたり、ドーナツをくれたり、自分の成長を喜んでくれる人がこんな近くにもいて、他人のあたたかさを知りました。ある時、皆さんにコーヒーやお菓子を出している最中、負けそうになったおじいちゃんは目の前の囲碁をぐちゃぐちゃにしてしまい、こちらは大慌て。それでも、そんな祖父には慣れっこなのか、しょうがないなとみんなが半笑いしていて、彼らの器に助けられ、おじいちゃんは居心地がいいのだろうと、皆さんの方が一枚上手だよと思いながらお茶菓子を出したことがとても懐かしいです。そんな祖父が他界、盛大な葬儀には空席も多く、囲碁仲間はみんな先に逝ってしまったと母が話してくれました。父が家を出て、ご近所中に噂は知れ渡り、わざわざあざ笑いに来た人もいて。小さくなった祖父は、毎年楽しみにしていた老人会の旅行も行かなくなりました。それでも、囲碁仲間はおじいちゃんの安らぎでいてくれました。そういった方達を、祖父は最後まで残って見送ったんだな、時に葬儀場で、時に病院のベッドから、そっと涙を流したのだと思うと、堪らない気持ちになりました。手を合わせたら、届いてくれるだろうか、おじいちゃんの仲間でい続けてくれてありがとう。

両親にも姉にも誰にも相談しないで、まずは一人でこっそりお墓の見学に行ってこようか。なかなか時間が取れないのだけど、いいひとときになるような気もしていて。そこに行けば、対話ができるような気がしました、祖父母や伯父と、そして自分自身と。少し前、息子が話してくれて。「コミュニティセンターに友達と行くと、たまにメガネをかけたおじいちゃん達が白と黒で何かやってるの。王手!って。」「いやいや、それは将棋だし。きっと囲碁の方だよ。Rのひいじいちゃんも趣味でよくやっていたの。」「へえ。何が面白いかよく分からないけど、昭和っぽいね。」令和の小学生がそんなことを言うものだから笑ってしまいました。祖父が渡したバトンは繋がり、いつか息子へ。おじいちゃんの姪っ子、おばさまが幼少の頃、これでもかというぐらい世話を焼いてくれたから、寂しくなかったよ。いろんな人の愛を持って進んだ。その小さな芽のひとつひとつを拾う旅に出た。時に苦しさを伴うのだけど、越える上で大事な痛み。いつか完結するのだけど、今を大切に生きようと思う。ミッドフォーティ、何を残せるだろうか。