学級閉鎖中、社会科の教科書を読むという宿題が出たので、息子は私がパソコンに向かっている最中、とりあえず目を通したよう。本当かなと疑っても仕方がないので、どんな内容なのか気になりこちらもざっと読むことに。すると年表があり、一番右には令和の元号が。当たり前なのだけど、今この時代を生きているのだと実感として沸き上がってきました。右へ右へ進んでいく中で、過去を振り返ると忘れてはいけないことがそこにはあって、息子の教科書を読んで色々と考えさせられた時間。そして、学級閉鎖も終わり、卒業式の前日最後のお迎えがやってきました。半日授業だったので、昼過ぎには待ち合わせの公園へ行き、ぼんやりと待つことに。すると日に照らされた一本の木が目に留まり、見入ってしまって。木って、とてもバランスがいいな、幹が太ければ太い程、自信を持って枝を広げているように見える、私もそんな風に息子を育てていけたなら。そういったことを思っていると、いつものように帰ってきました。最後のランドセル姿だね、全ての時間が愛に包まれていく。おかえりなさい、大きくなったね。
その日の夜は、東京ドームでメジャーリーグの開幕戦、二人でものすごい勢いで準備を済ませ、歴史的な戦いを見た後、リズムを崩さないように早めに寝ました。が、眠りは浅くいつもより早めに起きると、外は雨。早く止まないかなと願いながら息子を起こし、大事なことを忘れていたと大慌て。「Rにてるてるぼうず作ってもらうのを忘れてた!」「今から作るよ。」と言ってバタバタの中用意をしてくれました。そして、スーツを着せると感極まりそうになって。少し前に試着に行った時は少し大きめだったのに、ぴったりだ。この成長に沢山の感動が詰まっているんだろうな、そう思いました。「後で会おうね!お母さんも準備したら学校に向かうから。いってらっしゃい。」「うん。止むといいね。いってきます。」10年後の彼はもっと背が伸びて、本物のネクタイを締めて家を出るのかなと思うと、ぐっときました。共に歩んでくれてありがとう。
その後、二倍速の勢いで自分の支度をし、外を見ると雨足は強くなり、そして猛烈に寒くて困惑してしまいました。気圧の変動と冷えでやられそうな状態を薬で抑え、ワンピースを着てジャケットを羽織り、真珠のネックレスとコサージュを付けることに。ワンピースは姉が前にプレゼントしてくれたもの、そして真珠は随分前に母が買ってくれたものでした。いろんな人の想いを重ねていく。さらにジャケットは、離婚調停の一番最初に着ていったもの、裁判所に行くので気合いを入れて着ていくと、弁護士の先生の方がラフな格好をしていていい感じで力が抜けた勝負服でした。息子に寂しい思いをさせてしまうのではないか、決断までに沢山悩みました。手を取り、一緒に飛び、穏やかな日常の中でも術後の辛さは続き、彼を不安な気持ちにさせてしまっていないか、毎日自分との対話を繰り返していて。それでも、積み重ねた日々は、二人の絆を強くしてくれました。卒業式もきっとお父さん率は高い、でもまた一緒に越えようよ、そんな気持ちが重なり今日という日を迎えました。だから、前だけを見て開けた玄関のドア。さむっと思いながら、コートのボタンを留め、急いで学校へ。すると雪が降ってきて、笑ってしまいました。雪が好きな息子は、まさか特別な日に雪化粧が見られるなんてね。そんなことを思いながら慌てて昇降口へ行くと、約束をしていた広報委員の友達と旦那さんが待ってくれていて。「Sちゃん!」彼女の声を聞き、寒さが少し和らぐ程ほっとしました。そしてご主人に挨拶すると、「広報委員で一緒だった友達。」と紹介してくれて。その時、気づいたことがあって。彼女は、私が離婚したことをご主人にも話していないのだと。大事な式の時に、Sちゃんを少しでも悲しませるようなことをしたくなかった、勇気を出して話してくれた気持ち大切にしたいんだ。友達から沢山の思いを感じ、泣きそうでした。それから、靴を脱ぎ、受付をすると、2年生の時に担任だった先生が。名簿から息子の名前を見つけられないでいると、笑いながら一緒に探してくれました。その時、初めての面談でのことが思い出されて。その日も土砂降りの雨、濡れながら昇降口に入るとスリッパを忘れたことに気づき、仕方がないのでストッキングのまま教室へ入ることに。いろんなお話をさせて頂き、優しい時間は流れ、スリッパを忘れたことがバレずに済んだか?!と思っていると、廊下まで出て挨拶してくれるので気づかれてしまいました。そんな日までもが懐かしい。いろんなことがありましたね先生、手術の時沢山助けてもらいましたよ、ありがとう。なんだかその時は、言葉にしなくても伝わっている気がしました。先生の未来にも幸多かれ。
その後、廊下を渡り体育館に入ると、椅子が並べられ、本当にこの日が来たのだと思いました。友達が端の席を譲ってくれて、甘えさせてもらうことに。そして、卒業式が始まり、児童が一人一人入場してくると、流れてきたのはパッヘルベルのカノンで一気に溢れそうになりました。この曲にはきっと、私の秘密が隠されている。実家で何かがあった、でもどうしても思い出せないんだ。淡く切なく、何か大切なことがそこにある気がして、本当にもしかしたら生を終える時に映像で流れるのかなと思ってみたり。すると、スーツをバッチリ決めた息子が入ってきました。すぐにこちらに気づき、小さく微笑んでくれて。ねえR、お母さんね、イベントがある度、絶対に崩れる訳にはいかないってものすごく気を張っていたの。これ以上寂しい気持ちにさせちゃいけないって。でも、いつしかお母さんの気持ちに気づいていたね。そばにいるって、共に生きるってこういうことなのかな。拍手をしながら、息子が目の前を通り過ぎ、大きくなった背中を見た時、こみ上げました。1秒1秒を噛み締めて。雪の卒業式は、次回へと続く。