式が始まり、6年間の月日を噛み締めました。こんなに早いなんて。義務教育が始まったと思っていたのは、まだ少し前だと感じていた。それでも、いろんなことがぎゅぎゅっと凝縮されたこの小学校時代を忘れないでおこうと思いました。そんな感慨にふけっていると、卒業証書授与の時間がやってきて。すると、呼ばれた児童は舞台の上に立ち、一人一人がいろんな方に向けて感謝を伝えてくれるので余計に涙が溢れ、息子の大切な記録を残しておこうとビデオカメラを手にしました。父親の代わりをしようとするのはやめよう、そうじゃなくて、司書だった自分が強く蘇ってきました。記録物が沢山集まった場所でお母さんは働いていたよ、それは書籍だけでなく、動画もあった。いろんな方の記録がそこにはあって、一冊の本には沢山の手垢が残っていた。時にポテトチップスの破片であり、時にコーヒーの丸くなったしみであったり、少し破れ、色褪せるページもあり、そこには間違いなく人と歴史を感じた。だから、あなたの成長の記録を残すよ、これが今の私にできること。そう思いながら、震えそうになる手でカメラを回しました。そして、階段を上り、聞き慣れた担任の先生から名前を呼ばれ、元気よく返事をした息子。『この6年間、小学校生活を支えてくれてありがとう。中学生になっても、難しいことがあると思うけどがんばります。』この瞬間を幸せというのだろうか。今までの苦しさが吹き飛ぶ程、涙が溢れて。こちらこそ、お母さんを励ましてくれてありがとう。中学校でも二人で乗り越えよう。息子の言葉は一本の道で繋がっているようで、なんだか自分がこれまでやってきたことは、間違っていなかったのかなと胸がいっぱいでした。そして、受け取った卒業証書、凛々しい彼を見て、教わっているのは私の方だなと。その後、みんなが正面の階段に上り、こちらを向いてくれた時、息子が見つからず慌てました。すると、友達が気づきすぐに教えてくれて。Sちゃん、二人分頑張ろうとしているんだよね、私知ってるよ。彼女の優しさが届き、なおさら泣けてきて。そして、ビデオカメラを向けました。老後にね、一人でもう一度見ようと思うんだ。お母さんね、だから一人じゃないよ。あなたと過ごした毎日が宝物、だから自分の人生をお腹いっぱい生きてほしい、画面越しからいろんな気持ちを込めました。『旅立ちの日に』(作詞:小嶋登、作曲:坂本浩美)、歌ってくれたこの曲はずっと胸の中に。あなたのこれからが、輝き続けますように。
式は、沢山の感動に包まれ、閉式の時間がやってきました。担任の先生が立つと、4年5年と担任だった女の先生が袴姿で泣いてくれていて。4年生の最初の面談で、まだ離婚調停中の私の心のそばにいてくれました。「お母さんの気持ち、R君に届いていますよ。」と。私の両親も離婚を経験した、自分も複雑な気持ちの時もあった、でもその経験があったからこそ辛い思いをしている子の気持ちも分かった、R君もきっとそうなりますよ。だから大丈夫と、目に涙を溜めて伝えてくれたその時間は、挫けそうな時そっと取り出すあまりにも大きなひとときになりました。見守ってくれてありがとう、花束を持って歩く先生にそっと届けました。そして、男の担任の先生も泣いていて。初めて6年生の担任、長い教員生活の中で忘れられない一年を共に歩んでくれてありがとう、こちらもそっと伝えました。ゆっくり退席していく子供達。プレ幼稚園の時からの友達も何人もいて、一緒に階段を上れることが嬉しくて。学区外申請が通らなかったら、ここでお別れだった、その時息子も私もどんな気持ちでいただろう。それを思うと、繋がりが途切れないことに感謝しないといけないなと改めて思いました。息子が、卒業証書を持ち、ゆっくりアイコンタクトをして目の前を通過していって。言葉は時に凶器になる、そして、人を優しく包むこともできる、きっと私は両方知っていて、せっかく使うなら後者でいたい、ずっとそう願いここまで歩いてきたのかなと。言語化できない感情が沢山渦巻いてきた、でも、形にするのがこの仕事、目の前の一瞬を残す、それが今なのだと息子の背中を見て思いました。助走をつけて、ゆっくり羽ばたけ。
最後は、体育館で保護者が道を作り、教室から戻ってきた子供達を拍手で迎え、それぞれの写真撮影が待っていました。すると、広報委員の友達が息子と私のツーショットをすぐに撮ってくれて。彼女の配慮に精一杯の感謝を。以前、カメラマンの友達が伝えてくれたことがありました。プロのカメラマンがどれだけ頑張っても、カメラを構える親御さんには勝てない時がある、やっぱり子供っていい表情をするんだよねと。友達が、心を込めて撮ってくれたこの一枚を忘れない。Sちゃん、私には頼っていいんだよ、そんな思いが込められていたから。そして、慌ただしい中、仲良しのKちゃんが走ってそばに来てくれました。前日に写真を撮る約束をしていて。袴姿の娘ちゃんとスーツ姿の息子のツーショットをカシャリ。「成長の記録!」そう言って彼女が笑ってくれました。その時、幼稚園のお祭りで法被を着た二人も、幼稚園の制服を着て卒園式を迎えた彼ら、桜の木の下でランドセルを背負い撮った入学式、何枚ものツーショット写真が頭の中で流れ、それはきっとKちゃんも同じで堪らない時間でした。またアルバムに一枚増えたね。その後、担任の先生に写真のお願いをすると、伝えてくれて。「昨日、悲しいことがあったんです。」え?息子が最後に何かやらかしたか?!と若干慌てていると続けてくれました。「ドロケイをみんなとやったら、僕警察だったんですけど、全然Rを捕まえられなくて。」ああ、逃げ足だけは速いんですと思いながら一緒に笑ってしまいました。そして、思い出の写真をカシャリ。最後のミッションだと思い、先生にお手紙を渡しました。その中の一文をここに残してもいいだろうか。『先生達、自分のことよりも、子供達を守ろうとしてくれたこと、私達は忘れません。』やわらかく届いてくれたなら。
息子と、疲れた~と言って雨の中帰宅。夜寝かせる前、ハグをしてお礼を伝えました。なんてあたたかい時間。そして、ここに記録を残し、本当の意味での卒業式が私の中で終わりました。あとどれだけの日々、言葉を紡げるだろう。そんな時を幸せに思う。