嬉しいお誘い

毎週日曜日の午前中は息子の野球の日。この前は、雨で野球の練習そのものはお休みだとメールが入ったものの、昼に行われる自治会のもちつき大会には参加をさせてもらえるとのこと。私服で、メンバーだと分かるように帽子だけはチームのものを被らせました。歩いて送り届ける中で、「ボク、まだ全然お腹空いていないよ~。」と言われたので、ぐるっと走っておいでよと伝えると、10m程走って戻ってきてしまう始末。はやっ!というか短っ!!と相変わらず二人で目的地まで盛り上がりながら到着し、挨拶をしてささっと帰るつもりが、しっかりご年配のコーチに捕まってしまいました。「お餅食べていきなよ。」「いやいいんです。息子だけお世話になれたら。」「あそこにいるのは自治連の会長さんだよ。」「お世話になっております~。」ととりあえず会釈しながら言ってみると、なぜかすっかり気に入られてしまい、色々と質問攻めに。「今日、天気が悪いからお客さんの出足が悪いんだよ。だから食べていって。」そう言われながら腕を掴まれ強制連行。人の良さが掴まれた腕から伝わるようで、寒い日なのに温かい気持ちをもらい、こんなイベントはずっとなくならないでほしいと心から思いました。ふとテーブルを見ると、そこにはビールの缶が何本も。良かったらお酌しますよぐらいの勢いだったのですが、自宅に帰ってやることが山のようにあったので、ケースに入れてもらったお餅二個のお礼を会長さんに伝え、もう帰っちゃうの?という顔をされながらお別れしました。お餅よりも、もっと大切なものをテイクアウトさせてもらいましたよ。そう、人に気を使わせないさりげない心遣い。この野球チーム、何があってもやめさせるわけにはいかないようです。

吉野家の牛丼屋さんの看板を見かけると、時々思い出す優しい記憶。まだ大学生の頃、マブダチK君の友達から電話があった時のこと。「今男子二人で遊んでいるんだけど、男二人じゃ味気ないし、Sも誘ってゲーセンにでも行かないかって話になってさ。今ひま?」「たまたま自宅にいたから大丈夫だよ。後で迎えに来て~。」そう伝えると、早々と迎えに来てくれた高校1年3組の仲間。「早く彼女作りなよ。」「うるさいな~。お前だって男を見る目がなさすぎるって有名だよ。」「それ言いふらしているのK君じゃない?!」「みんな気がかりなんだよ。まあ、友達と遊んでいる時の方が楽しいって思う間はそれでいいんだよ。」そう言われ、3人でバスケをやったり、エアホッケーをやったり、散々笑い転げた後、お腹が空いたので吉牛へ寄ることに。「並盛!ちょうどいいサイズなんだよ。つゆだくもたまごもなしで、純粋に食べたい!女性一人ではなかなか入れないからちょっと嬉しい。」とひとしきり感想を述べ、くだらない話で盛り上がった帰り道。先に一人の男友達が降ろされ、私の自宅まで送り届けてくれる途中で、ドライバーの友達がぽつりと伝えてきました。
「Kさ、彼女ができただろ。Sのことだから何かあっても俺の所には連絡してこないって。だから、ふとアイツのことを思い出したら、連絡してやってくれないかって。簡単に弱音を吐くヤツじゃないけど、気分転換に外に連れ出してやってほしいって。そう言われたんだよ。3組の皆って本当に仲が良くて、恋人ができるとそっちを優先させるのはごく自然なことで、でもあの頃のままの友情っていいよな。お前の前では格好つけなくていいし、女友達と普通に楽しめるっていいなって、周りは皆そう思っているよ。俺達今日楽しかったし、でもKは状況が変わってもいつもお前のことを心配してる。絶対言うなと言われたけど、やっぱり伝えておこうと思った。」

サイドミラーを見たら、私はその時どんな顔をしていたのだろう。K君の痛い程の気持ちも嬉しかったし、それを自分の中に留めないで伝えてくれた男友達の気持ちも、男子二人の友情も何もかも。
その友達は、最後に行ったナゴヤドームに誘ってくれた人。今思えば、アイツの気持ちも乗せてくれていたのかもしれない。