運動会の開催に喜びを

今年、小学校初めての運動会は、台風19号の影響で延期。その日は、近くの川が氾濫するかもしれないという警告が何度も入り、気が気ではありませんでした。何事もなく落ち着いた翌日、ニュースを見ると、各地での被害が報告され、居たたまれない気持ちに。そんな中で、小学校からメールが入り、3連休の最後の日に運動会を行うことが分かりました。
朝から小雨が降り、寒さの中での開会式で語られた校長先生の言葉で胸がいっぱいに。そこには、来てくれた保護者の方に対する感謝、被災された方達の一刻も早い復旧を願う気持ち、そして、ここまで作り上げてくれた先生達を褒め称える労いの気持ちが込められていたから。前日まで、避難所になっていた小学校の校長先生もまた、沢山の想いがあるのだと感じました。

降ったり止んだりの雨の中、低学年親子の鈴割のレクレーションがあり、夫にお願いをし、ビデオを回そうとスタンバイをしていると、遠くから夫に呼ばれて慌てて走りました。するとそこには担任の先生もいて、「行っちゃって、行っちゃって。」と煽られ、私も参加をすることに。どうやら、子供一人に対して親一名と決められていなかったらしく、折り畳み傘を脇に挟み、ビデオケースを手首に引っかけ、ちびっこ達にまみれて無邪気にボールを掴んで投げました。全然当たらないのに、楽しくなってしまい、自分の大人げなさを痛感。終わった後、特に得点に結びつかないことが分かり、周りにいた皆と爆笑。そこまで本気になる必要なかったじゃん!得点に結びつく方が燃えるのは大人になった証拠?!
そして、楽しみにしていた1年生のダンス、クレヨンしんちゃんの主題歌、ゆずの『マスカット』(作詞作曲:北川悠仁)に合わせて踊る可愛らしい演技の時間がやってきました。幼稚園の時、年長になった姿を見てこんなにも大きくなったのだと感じたのに、小学校では最年少。まだまだ小さいなと、6年生のお兄ちゃん達を見て思いました。それでも、最高学年になった時、1年生の演技を見て堪らない気持ちになるのだろうと。だから今日、こうして目に焼き付けておく。マスカットの帽子を被り、両手首にキラキラのポンポンを付けて踊り出した息子を見て、なぜか小学校の図書室でのことが思い起こされました。

勤務していた小学校で、運動会に踊る曲が校庭で聴こえる度、自分の仕事そっちのけでエプロンのまま正面玄関から児童達の練習を見た日々。指導していた男性の先生も、こちらを向いて軽い会釈。皆頑張れ、そう思いながら作り上げられていく過程を見ていたので、運動会当日の演技はこみ上げるものがありました。そんな数日後、1年生の図書ボランティアのお母さん達5人が図書室に集まり、仕事を手伝ってもらっている最中に校長先生がやってきて、なぜかみんなで運動会の反省会。「校長先生、私、子供の演技を見て、涙が頬をつたって、育児を頑張ってきて良かったなと思いました。感動的でした。」そう半泣きしながら語ってくれたお母さん。「S先生、親になるってきっとこういうことなんだと思います。」なんだかその言葉を言われた時に、“お母さん”には敵わないなと思いました。私が、司書として感動したその気持ちとはまた違った、もっと深く愛情に満ち溢れた想いがそこにはあるのだと思いました。

息子が元気よくブリブリダンスをしている姿を見て、大粒の涙が二粒ポロリ。“親になるってきっとこういうこと”あの時言われたお母さんの言葉が、心からの実感として分かったような気がした雨の中の運動会。息子にいつの日か、この時感じたものを伝える日が来るのかもしれない。無条件に溢れる親の気持ち。そして、一つの学校行事が沢山の人の支えの中で行われていたことを。