ゆっくり味わっていた仙台駅で買った牛たん風味のかきの種。最後の一袋になると、息子が伝えてきました。「もう最後だ。あ～あ、もう一生食べられないのかあ。」「そんな大袈裟な話じゃないでしょ。何がきっかけでまた仙台へ行くか分からないよ～。」そんな話でわいわい。そして、ふと伝えてくれました。「そう言えばね、前にヤクルトの球場へ行った時、ママが外でユニフォームを着た選手に声をかけていたでしょ。」「ああ、嶋さんね。去年まで選手でいてくれて、今はコーチをされているよ。」「うん。その時にボクも手を振ったんだ～。」と嬉しそうに話す姿を見て、息子の中で何かが繋がったのだと思いました。楽天ゴールデンイーグルスが仙台に拠点を置き、新チームとしてスタートをした数年後、東日本大震災が起きた。東北に起きた大災害、その時、嶋さんは楽天のチームにいた。そして、ヤクルトへ移籍、その後コーチとしてまたユニフォームを着てくれて、そこでママは会うことができた。だから、嬉しかったんでしょ。なんだかボクも嬉しくて、だからあの時手を振ったんだ。息子からそんな気持ちが感じられ、胸がいっぱいになりました。彼は点と点だったものを線で繋ぎ、多角形にした後、それを少し俯瞰してみるところがある。それにはタイムラグがあり、自分の中で整理し、理解を深めるまでには時間がかかることも。私にもそういった所があるので、息子が繋いでいってくれたものは、きっともっと太くなってくれるだろうと思うと、色々な気持ちがこみ上げました。絆、宮城県の方達とのご縁を忘れないで。「震災の後、電力が不足し、計画停電もあったの。予め時間が分かっていたから、仕事から急いで帰ってその時に備えた。３月に入ってもまだ寒くてね。被災された方達がどれだけの思いでいるのか、想像をはるかに超えるものだと思ったよ。」その話をじっと聞いていた息子。ママと歩いた景色、ボク覚えておくよ。彼の心に優しさの火が灯った日。
そんな時間が過ぎ、なんだか新規開拓がしたくて、今まで行かなかったゲームセンターへ二人で行くと、桃鉄のメダル落としを発見。たまたま席が空いていたので、やり始めるとすっかりはまってしまい、大盛り上がり。それでもいまいちルールが分かっていなくて、サイコロを落として進んだものの、ぴったりのマスに止まらなければ目的地を過ぎてしまうことが分かりました。近くにはいるのだけど、ずっと長岡駅周辺をぐるぐる。「新潟県の長岡市だよ。米どころだから、お米の好きなRはいいじゃないか！」とぐずらないようにこちらもポジティブな発言で必死。「へえ、そうなんだ～。お米いいよね～。」と乗ってくれて、ようやく駅に辿り着いてくれました。桃鉄をやりながら次の旅を決めようか。日本のいい所、沢山見つかりそうだ。
そう言えば、仙台駅を息子と歩いていたら、エスカレーターに乗った時、とても自然に左側に立ち、ふと大阪に住んでいたネネちゃんとの会話が思い出されました。難波の駅を二人で歩き、エスカレーターに乗ると伝えてくれて。「Sちん、大阪では右に立って、左側が歩く人達なの。」「え？なんで？！」「私も良く分からないんだけど、大阪ではそうみたい。地域によって違うのかもね。」面白いなと思いながら、また別のエスカレーターに乗ると、ついつい左側に立ってしまい、右右！と後ろにいた姉に促され、懐かしくなりました。「他には、大阪のルールというか文化みたいなものってある？」「とりあえずボケたら、ツッコむのは礼儀だよ。Sちんは、よしもとを見て育っているから、そこは大丈夫なんじゃない？」「いやいや、見てるのと実際にツッコむのは違うって。」「まあ、Sの場合、ボケの方だけど。」「お姉ちゃん、大阪に来てどう？」「ここで頑張ろうって思った。」そこにあった沢山の決意、感じていたよ。簡単に妹に弱音を吐くわけにはいかないと、自分に誓ってくれていたことも。美味しかったね、たこ焼きも豚まんも。難波の駅で笑い転げた二人だけの時間、ずっと大切に持ってここまで来たんだ。外の空気を吸いに行けた場所、何もかも特別だった。
「お母さんが初めてこっちに来た時ね、新横浜駅と横浜駅があることを知らなくてちょっと混乱した。名古屋駅ってひとつだけだったんだよ～。」「ああ、そうか。慣れていないと迷っちゃうね。」と息子。「大阪駅と新大阪駅も別だから、気をつけてね。そのうちRの方が詳しくなるかもね。」彼がヤクルトファンだと知り、母が連れて行ってくれた東京ドームのヤクルト対巨人戦。その話を聞いた父が、ヤクルトの本拠地の方が喜ぶだろうと、神宮球場へ促してくれて、母と神宮にも行ってくれました。その後は、私とも観戦を重ね、今度は仙台のモバイルパークへ。息子の心の中で、プロ野球の球場のスタンプラリーはもう始まっていて、大人になってからも続いていたらいいなと思っています。沢山の人や空気に触れ、柔軟な多角形を目指して。これは一生をかけての自分の目標、丸みもあったら上出来。