両膝のリハビリで、プールに通い始めた母。それはいいことだと応援していたある日、急に連絡が入り、「初回で30分しかやれなくて、余裕があるからRを見てあげるわよ。30分後に連れてらっしゃい。」というあまりにも展開の早い内容に困惑。気合いを入れて行ったはいいけど、エネルギーを持て余してしまった?!と半分笑いながら返信。すると、水酔いをしてしまったから散歩がてらお迎えに行くわ!とこれまた有難い内容だったので、流れのままお願いすることにしました。
そして、約束の時間に息子をお迎えに行き、路駐をしてスマホに到着した旨を連絡しても既読にならず。電話をしても出ないので、何かあったかと心配になり、ハザードランプを炊き、鍵を閉めてささっとインターホンを鳴らすと、随分呑気な声が聞こえてきました。「あら、お迎えに来たのね。今から行くわ。」無事だったのねと安堵しながら、車に戻ろうとすると、目の前にパトカーが止まっていて、私のゴールド免許が~と思いながら本気で慌てました。「すみません~、すぐにどかします!!」と短時間だったアピールをして、若い男性警察官の方に謝ると、「お願いします~。」と頭を下げられ、一件落着。あと1分遅かったらアウトだったかなと、冷や汗をかきながら車に乗り込み、のんびり出てきた母と息子に安堵と厳重注意。「今、警察官の方に声をかけられちゃったから、スマホには気づいてね。」「あらやだ!テレビに夢中で盛り上がっていたの~。」それは結構なことで。預かってもらっていて、これ以上文句は言えない。とりあえず、難は逃れたので、お礼を言って気持ちよくお別れしました。ゴールド免許を維持した珍事件、18歳の時から死守しているよ。
そして、日曜日の少年野球を送り出し、パソコンを持ってスタバに行こうとすると雨がぱらつき始めてしまいました。もしかしたら途中で終了かもしれないと思い、グラウンド近くまで様子を見に行ってみると、雨の事なんて全く気にも留めない部員達がそのままランニングを始めていて、一安心。土砂降りにでもならない限り、練習は続くのか?!
学校からの帰宅時間に雨が降りそうだった時も、折り畳み傘を持たせ、その日に学校に用事があったので、友達と仲良く帰る息子の後姿を見ていました。すると、雨が降り出しても誰も傘をささず、女の子3人とわらわら帰っていく姿に笑ってしまいました。雨だし、ソーシャルディスタンスはどこへ行った?と思いながらも、近くないと会話が成り立たないのねと、その近さがそれはそれで微笑ましく、Kちゃんの娘ちゃんと目を合わせて笑う表情を見て、邪魔したらいけないなと距離を取りながらの帰り道。雨よりも、1歳からの友情を大切にする息子の選択は間違っていないのかも。
週末、夫と息子と三人でドライブをしながら緑の多い公園へ行きました。山を思わせるその空気を吸い込むと自然に思い出すのは、岐阜にいた小学校時代。社宅で一緒の父の上司であった息子さんとは、同じ学年で子供ながらに少し気を使いました。そして、銀行の支店で、意見でも食い違ったのか、気の短い父がその上司にキレて書類を投げてしまったそう。いつもより早く帰ってきた父が、切羽詰まった顔で母に何やら話していて、それを敏感に感じ取った私は、翌日やんわりと母に聞いてみました。「お父さんね、○○さんに大切な書類を投げちゃったみたいなの。それで、気まずくなって、これからの仕事どうしようということになってね。銀行一筋の人だから、転職といっても何かピンとこないんだけど、お父さんなりに家族を支えようとしているから、その決断を応援したいと思っているよ。」祖母が亡くなり、核家族で知らない土地へ引っ越し、それで上手くいくかと思えば、夫婦喧嘩は絶えず、なんなんだろうと子供ながらに思っていた時だっただけに、こちらが思っているよりも二人にしか分からない所で繋がってもいるんだなと嬉しくなりました。そうだよね、銀行員の父を見て母は好きになった。だから、たった一度のことで銀行員生活を終わらせてほしくはない、でも夫が選ぶ道ならついていく、妻としての覚悟を感じました。
その後、穏和な上司は穏便に事を終わらせてくれて、父も謙虚になり、丸く収まったよう。月に一度程、祖父の様子が心配で実家に母だけ帰省する時は、その上司のお宅に夕飯をご馳走になったこともありました。出されたのは天ぷら、粗相のないように、質問されたら受け応えて、適度に笑って、味なんて分かったもんじゃない。大体なんで私だけ呼ばれたんだ?と頭の中でぐるぐるしながら、食卓を一緒に囲んだ、優しくも苦い思い出です。
その上司が先に名古屋に戻り、栄転。そして、その後父も栄転で戻り、地元の大学に入学した私は、大学近くの最寄り駅の駐輪場を利用しました。そこで見つけた、一つの名前。それは、一緒に天ぷらを食べた上司の子の自転車でした。自宅に帰り、父にそのことを伝えると笑いながら教えてくれて。「そう言えば、○○さんちの子も、Sと同じ大学なんだよ。」と。全然偉そうじゃなくて、いつも控えめで、Sちゃんこれからよろしくねと声をかけてくれた優しかった彼。お互い、慣れない転校生で、社宅生活で大変だったね。でも、あなたのお父さんも優しかったから、うちのお父さんは助けられたよ、そんな気持ちが一気に駆け巡り、同じキャンパスを歩けているのだと思うと堪らない気持ちになりました。
緑が多かった大学内で、彼は何を思っただろう。坂道多いよね、学校遠いね、冬寒いよね、そんな私の弱音を聞き、ランドセルを背負いながら、笑って一緒に帰った日を思い出してくれていたらいい。