息子の制服の採寸へそろそろ行った方がいいと思い、予約を取って学校が終わった後に二人で家を出ました。すると、あ!とひと言だけ言って、うろたえていたのが分かったので聞いてみることに。「自転車のカギ、屋根の上に乗っちゃった!」マジか?!とこれまた大慌て。いつも小さなカギを上に投げ自分でキャッチするのが彼の習慣で、何度注意しても直らなかったのでそのうち排水溝にでも落とすのではないかと思っていたら、上かい!!さすがに今回は腹が立って、落ち着いたトーンで怒りを伝えました。「お母さんね、テレビを壊したこと、もっと反省してくれていると思っていたの。でも、すぐにこういうことが起きると悲しくなるよ。」育児に悩みは尽きず、ママなら許してくれるだろうという安心感が、緊張感を半減させていることも分かっていて、そのさじ加減が難しいなとあれこれ思いながらも、予約の時間が迫っているんじゃ!と頭をフル回転。とりあえず、身長が足りなかったので、慌てて自宅に戻り、バルコニーに出してあった椅子を持ってきて乗ってみると、駐輪場の屋根の上にぽつんとカギを発見。手を伸ばしても届く距離ではなく、何か長いものはないかと考えると、目に留まったのはお掃除の業者さんがいつも使っている長いほうきで、これならいけると思いフックから拝借。するとうまいこと滑らせて落とすことに成功し、ほっ。息子に渡すと、「ありがとう。」と言われ、「・・・ごめんなさい。」と追加してきたので、まだ怒りはゼロモードにならなかったもののお店に向かうことにしました。そして、さらなる珍事件が待っていて。長い夜のはじまりはじまり。
ようやくお店に着くと、昭和感の漂う女性店員さんが待っていてくれて、すぐに中学用品の採寸が始まりました。すると、ジャージを用意し、3年間は一番背が伸びる時期だからと大きめを渡してもらい早速試着。そして、学年カラーは赤なのでラインが入っていると教えてもらいました。「R、エンジェルスの色だ!」さっきまで怒っていたのに、ママって単純だなと一人盛り上がる私に息子は若干引いていて。本当はね、赤と言えばサッカーの名古屋グランパスエイトのカラーだった、それがあなたとの野球観戦でエンジェルスのイメージが強くなったんだよ、そんなことを心の中で呟いてみる。その後、1年生の時に一緒に学校へ行ったことのある女の子の親子も来店し、お互い微笑みながら会釈。その時、息子達が黒と赤のランドセルで手を繋いで歩いていく後ろ姿を思い出し、胸がいっぱいになりました。もしかしたら彼女も同じ気持ちだったのではないかと。すると、目の前には制服に袖を通した息子がいて、次のステップまであと少しなのだと思いました。ちょっと大きめだけど似合うよ。そういった気持ちでいると店員さんがひと言。「少しサイズは大きいけど、3年生になったらちょうど良くなるから、写真を撮ってお父さんに見せてあげてくださいね。お父さんの身長は何㎝?お父さんを超すかしら?」息子の前でNGワード炸裂やなと変な汗が出てきそうで、彼も少し戸惑っているのが分かったので、とりあえず写真を撮り、さらっと流すことに。息子よ、今自分で心を守ったな、それでいい、強くなったね。すっかり店員さんに押され気味の採寸で、半笑いでようやく終了。彼なりに頑張ったのが分かったので、お気に入りの宮城県のお米を使ったおにぎり屋さんで夕飯を済ませて帰ることにしました。すると、淡々とした女性店員さんが注文を聞き、目も合わさずお料理を提供してくれた後、よく見てみるとセットで付いてくる竜田揚げが、二つから三つになっていて。「店員さん、私達が常連であること気づいてくれているよ。こんな気持ちが嬉しいね。」「うん。なんかボク、前回もそうだった気がする。今日ね、店員さんがちらっとこっちを見てきて目が合ったの!」「そうか。こういう優しさを大切にしたいね。」お世辞にも愛想がいいとは言えない店員さん、でもこんな形でいつもありがとうを伝えてくれて、人は見かけじゃないなと改めて教えてもらえたようでした。「ごちそうさまでした!美味しかったです!」「はい。」こちらのありがとうは届いただろうか。
そんな慌ただしい翌日、息子の学校でもちつきのイベントがあり、3年生の時に広報委員をしていた友達と現地集合で待ち合わせをしました。よく晴れた日、華やいだ校庭を通り、6年生の教室の前まで行くと彼女が待っていてくれてご挨拶。そして、クラスの子達が考えた謎解きのイベントに参加すると、息子の友達がiPadを使い問題を出してくれて、みんなで大盛り上がり。私はさっぱり分からず友達が答えてくれて、無事にスタンプをゲット。そして、校庭に向かい、おもちを受け取り、快晴の空の下で食べました。「あれから3年か~、早いね。」と言われた途端、広報委員としてエプロンに三角巾を付けて、ひたすらおもちのパック詰めをしていた自分を思い出して。その日は、元夫との話し合いの直後、息子と二人で飛ぶと決めた後でした。それはもう沢山の覚悟で、その勇気を周りの方達が後押ししてくれているような不思議な一日でした。その日と同じような青空で、彼女が目の前にいてくれて、次から次へといろんな感情が自分のポケットに入っていき、涙が溢れそうでした。「私達、子供がひとりっ子だから、この景色を見るのも今日が最後で、どの行事も最後で、なんだかいつも凝縮された時間を過ごしてきたのかなと思ったよ。」そう伝えると、「そうかもしれないね。」と同じような気持ちで返してくれました。すると、目の前には友達と戯れる息子が手を振って通過してくれて。「Sちゃん、間違っていたらごめんねなんだけど、引っ越した?」「あ、うん。そうなの。」「来月には必ずランチしよう!」珍しく彼女がぐっと踏み込んできてくれたのが分かりました。もう腹を割って話すしかなさそうだなと、最後は笑ってお別れ。そして、息子がお当番だという時間になったので、また教室前の廊下まで行くと、かわいい女の子と一緒に受付をやっていました。「先程もう謎解きはやったから、Rにも会えたし、お母さん帰るね。」と伝えると、隣の女の子が「Rママ?」と聞いてくれたので、笑顔でご挨拶。すると、息子が貸してと言ってこちらのスタンプカードを受け取り、6年2組の欄に改めて上からコナン君のハンコを押してくれました。そして、それを見た女の子も隣に押してくれて、もうその欄だけハンコまみれで笑ってしまって。来てくれてありがとうの想い、受け取ったよ、クラスのみんなの分も。
ひとり、賑やかな雰囲気をまとい、ゆっくり帰宅の途へ。これだけ詰めてもらったら、空っぽになることはないな。ガチャガチャを回し、何が出てきても微笑みたくなる、その中の一日。どの瞬間も大事に生きていたい。