振り返った時間

息子の歯医者さんへ一緒に行くと、いつもの優しい男の先生が待っていてくれました。そして、記録を書いたカレンダーを見ながら伝えてくれて。「ここ最近は、嫌がっていた感じですか?」「そうなんです。二日連続お休みをしてから、急にモチベーションが下がってしまって。その分、トレーニングの方を頑張っていました。」「そうですか。今日、改めてかみ合わせを見せてもらったんですけど、短期間で治っているみたいなんです。これからは定期検診の度に見せてもらう形でいいのかと。一旦矯正は終了して、ご家庭でも様子を見て頂けたら助かります。」やった~!!思いがけず早い終了に、心の中でガッツポーズ。先生にお礼を言い、恒例のガチャガチャの消しゴムをゲットし、ローソンへ。「早く治療が終わって良かったね!今までよく頑張ったよ!」「うん、良かった~。ママ、からあげクンが食べたい。」もう全種類買い占めようか!という気持ちになったものの、ここは息子が挑戦したいと言っているレッドのみを購入。自宅ですっかり盛り上がり、寝かしつけの時間になると、隣にいることに慣れてしまった息子が寂しがり、寝付くまで一緒にいることにしました。息子も頑張ったけど、お母さんも頑張った!!

そんな一山を越えたのも束の間、姉がここ最近の私のメンタルを心配し、一度専門家に診てもらってきてと世話を焼いてくれたので、あれこれ考え、以前母の相談に行った心療内科の予約を入れました。「家族だから心配をかけると思って言えないこともあるだろうし、Sは物事を多角的に捉えるから、医師の意見を聞くと楽になることもあると思う。」そんな姉の気持ちが嬉しくて。久しぶりに連絡が来た入院中、数回のメッセージのやりとりの中で彼女は違和感を覚えたそう。それからまた少し間を空けて、夫の話をすると伝えてくれました。『Sちんは何かを隠していると思っていた』と。姉と私の心の中に流れる湧き水、その細い線を辿った彼女にしか分からない違和感に気づいてくれていたことに胸がいっぱいでした。
その後、日曜日の診察になってしまったので、ミーティングをMさんに入れてもらい、夫に病院だと分からないよう待ち合わせ。母のことで悩んでいた時と同じ場所で会い、色んな気持ちが交錯しました。「なんで私の身に降りかかるんだろうね。母のことも、夫のことも。でも何か意味があるんだろうね。」ちょっとしょげながら話す、それでも視線の先は前を見ている、そんな私を彼は知ってくれていました。なんだか有難かった、そこにいてくれることが。どうしようもなく。そして、診察後の私を心配し、別のお店で待っているから気が向いたら連絡してと、さりげなく伝えてくれて一旦お別れ。5年ぶりぐらいに入った心療内科で問診票を書き、待合室で待っていると呼ばれました。ドアを開けると、30代の男の先生がにこやかに待っていてくれて。ご挨拶をし、いくつかの質問に答えた後、こちらの話を深く聞いてもらいました。妊娠中のこと、休校中のこと、手術前後のこと、夫の休職中のこと。相手から受けた言動で傷ついてしまったことを、できるだけ詳細に伝えると、こちらの辛さをよく分かってもらい救われました。そして、夫のある障害の可能性を言われ、驚いて。「これは、○○さんのフィルターを通してご主人の話を聞いたので、あくまでも僕が感じたことだと思ってください。○○障害のような感じにも見えます。本当に“分からない”のではないかと。自分の言動が相手にどう影響してしまうのか分からないから、それが日常的に繰り返されてしまうのは苦しいですよね。本当にもしかしたら性格の問題なのかもしれませんが、障害を抱えていた場合、ご本人が自覚をされることから始めないといけません。○○さん、その障害を受け入れて生活するか、離れるかのどちらかだと思っています。」提示された二つの道、きっともう決まっている。私が離れることで、夫がようやく自分と向き合うきっかけになるのではないか、そうであってほしいという願いも込めて選択する。

そして、穏和な先生が伝えてくれました。「別の視点からも言わせてください。その障害だった場合、いろんな生きづらさを抱え、専門家のサポートを受けながら学習して段階を踏んでいったりします。“ふつう”という言葉は幻なんです。そんなものは存在しません。それでも、みんなに合わせようと頑張ったりする、それは容易なことではないです。」この先生の真ん中にあるものは、あまりにも温かく愛に満ち溢れたものなんだろうな。それにしても先生のイントネーションがどうしても気になり、最後に出身地を聞いてみると面白い返事が。「僕、広島出身なんです。でも関西にも住んでいて、色々な方言が混ざりこうなってしまいました!ちょっと強かったですか?」「いえいえ、楽しかったです。」そう言って笑うと一緒に笑ってくれました。一番成分の低い少量の安定剤を出され、通院することに。もう大丈夫って言えるところまで、この先生に見守ってもらおう。

待っていてくれたMさんと合流。「いい先生に出会えた。自分が置かれている状況も理解した。辛い思いをしている人、沢山いるんだなって思った。だから、ありのままを書こうと思うよ。」「さっき会った時よりもすっきりした顔をしてるよ。本当にいい先生だったんだね。」あなたの強さ知ってるよ、弱さもね。でも一番真ん中にあるものは強さでしょ、そんな表情で微笑んでくれました。越えられるかな、越えられるよね。感謝と勇気を持って、優しさをポケットに詰めて、タイミングがきたら飛ぶよ。助走をつけて、思いっきりジャンプしてみせる。