本当に大切なこと

何気ない平日の朝、いつものように準備をしながらテレビを点けていると、大谷選手が2盗塁を決めたというニュースが飛び込んできました。「えっ?51盗塁目?!そういえば、今日BSで朝から試合が観られるかも?!」と慌ててチャンネルを変えると、本当にマーリンズ戦がやっていて、息子と釘付けに。そして、大谷選手の打席で49号のホームランを二人で観ることができ、朝から大盛り上がり。その後もバタバタと身支度をしていると、またドジャースのチャンスだったものの、息子を送り届ける時間だったので家を出ました。道を歩きながら熱狂は続いていて。「大谷君のホームラン観られて良かったね!」とわいわい話し、いつもの場所でお別れしました。これも私の大切な時間、緑を感じ、息子とのなんでもないひとときを包むそんな朝でした。そして、慌てて自宅へ戻り、テレビを点けると右上には大谷選手の50号ホームランの表示が。え~!!あの後また打ってくれたの~?!と嬉しさと驚きともうなんだかよく分からない気持ちがこみ上げ、今日の試合これ以上見逃すものかとソファに張り付きました。そして最終回、すっかり点差も開き、9回ツーアウトにまた大谷選手の打席が回ってきて。すると、ものすごいホームランが飛び出し、感激してしまいました。49号と51号は観られて、50号の記念ホームランは息子とのんびり学校への道を歩いていたなんてね。なんだか不思議な一日だなと。50/50を達成したのは、マーリンズの本拠地、ローンデポパーク。そこはイチロー選手が在籍していた球団でもあり、いろんなシーンが蘇りとても感慨深くて。それから、沢山の感動を持っていつもの公園へ息子をお迎えに行きました。
「おかえりなさい。あのね、あの後の試合なんだけど。」と話そうとすると、伝えてきて。「大谷君、50/50達成したんでしょ!」「なんで知ってるの?!」「1時間目が理科の授業で、iPadで調べ学習をする時間だったんだよ。開いたら、大谷君のニュースが出てきてそれで分かったの。もう授業どころじゃないし、ボクも観たかった!」それはそれは、今時の小学生らしい情報の見つけ方だなと笑ってしまいました。「でもね、49号ホームランは一緒に観られたよ!今日ね、6打数6安打、3打席連続ホームラン、打点10で盗塁2だったの!」と詳細を話すと、驚きながらぼそっとひと言。「もうね、今日は祝日にするべきだよ。それぐらいのことだって!!もう、大谷君の誕生日も祝日にした方がいいよ。」と言うので、本当にそれだけのことをやってくれたよねと小学生の意見に拍手を送ることにして。いい一日、この喜びと笑顔をありがとう。

去年のヤクルト戦、息子がスワローズクルーのキッズ会員になって、初めてライトスタンドに向かった日のことをふと思い出しました。一昨年は、母が一塁側のチケットを不思議なルートで持っていたので、いつも有難く楽しませてもらっていて、通路側だったので気持ち的に楽でした。そして、今度はクルーの会員特典からチケットを購入することに。息子を連れ、ライトスタンドに入ると、いつもと見える景色がまた変わり感激しました。席を探し、ようやく見つけると、そこは横並びのちょうどど真ん中、しかも後ろも前も沢山の方達で、どんどん増えていくので慌ててしまって。ホルモンバランスがガタガタの状態、よく分からないタイミングで汗は吹き出すし、気持ちは悪くなるし、それでも息子に応援団のいるライトスタンドの熱気を肌で感じてもらいたくて連れてきたはいいのだけど、ひとつのブロックのど真ん中になってしまった~と一人で動揺してしまいました。彼は、攻撃のタイミングになると席を立って声が枯れるまで応援するヤクルトファンに囲まれて、テンション爆上がりで嬉しそう。なんとか悟られないようにしている中、一度トイレに行って気分転換してこようと思い、チェンジになったタイミングで出られそうな場所を探し、一旦出ました。ひと呼吸置くことができ、戻ろうとすると、席がまた埋まってしまっていて困惑。すると、その様子を見た一人の若い女性ファンの方が隣のお母さんに向かって伝えてくれました。「入りたい方がいるようだよ。」すると、二人が気を利かせてくれたおかげで連鎖的に戻れるスペースができ、お礼を言いながら息子の隣に座ると、先程空けてくれたお母さんが娘さんに伝えていて。「野球ファンってみんな優しいんだよ。」と。その言葉を聞いてなんだかほっこり。心を落ち着かせられるかって周りの環境も大きくて、トゲトゲしているのか、ふんわりなのか、その空気で辛い日の出方って違うこともあり、きっと私はこうやって野球ファンの方達にエネルギーと優しさをもらって帰ってきていたんだな、だから今日、息子を連れてくることができたのかもしれないなと思いました。シングルママであることも、手術後の辛さも、もちろんここで誰も知らない、でも、みんなそれぞれが大変さの中にあって、人の悩みに小さいも大きいもなくて、苦しい時にもらった気持ちにそっと涙するのはきっと私だけじゃなくて、息子と初めて行ったライトスタンドの感動を忘れないでいたいなと改めて思いました。今年の観戦3試合目も、試合の途中に肩をトントンされて。「後ろからビールが流れてきますよ。気を付けてくださいね!」と年齢の近い女性の方が教えてくれました。2戦連続の液体事件だなと思いながら、そのあたたかさになんだかほんわかしてお礼を言いながら笑えてきて。さらに、少し離れた席には、去年息子の席の近くで気持ち良さそうに一人でビールを飲んでいたおっちゃんを見かけました。その雰囲気が、ずっとそのままでなんだか嬉しくなって息子に伝えると、ボクも気づいていた!と嬉しそうに教えてくれました。ホームグラウンドって人それぞれで、私も息子もまたここに来られる日まで頑張ろうと思わせてくれた夜、その気持ちを心にくるんで。

父が前立腺がんの手術を終え、退院しました。今度は、甲状腺の手術が来年控えているのだそう。父の体にメスが入る度、いろんな気持ちがこみ上げて。世界中の誰よりも一番腹が立っているのがうちの父なのだけど、やっぱり最後に思い出すのはなぜかナゴヤ球場で。カラーの広告を沢山集め、ドラゴンズ戦をテレビで観ながら紙吹雪をひたすら作っていた小学生時代。ビニール袋に入れ、父とライトスタンドへ行き、中日の選手がヒットを打つと、待ってましたと言わんばかりに紙吹雪を投げ入れた日。すると、目の前にいた若い男性のビールのコップに入ってしまい、父が慌てて謝ると、もちろん中日ファンの男性は笑って許してくれて。それを見た近くのご年配の男性ファンは、「兄ちゃん、紙吹雪が入ったビール、美味しいよな!」とよく分からないフォローをしてくれるものだから、そのやりとりを見ていた近くのみんなは一緒になって笑ってくれました。私の中にいるインナーチャイルドは、悲しみよりも笑っていた記憶の方が多かった。そのことに気づけた時、本当の意味で越えられる気がしました。自分を知って、空を仰いでみる。まだまだだけど、探し続けよう、ありのままの気持ち。