親の背中が心に届くとき

私も息子も大好きな幼稚園の担任の先生のルーツが知りたくなり、お話を聞かせてもらいました。
どうしてこの仕事を選んだのかという質問は、意外な答え。
「母が幼稚園で事務の先生をしていて、そこで園児だった私は事務室で帰りを待って、母の仕事をずっと見てきたんです。本当は、音楽関係の仕事も考えていたんですけどね。へへっ。」

息子が幼稚園から帰ってくると、「ボク、太陽さんに負けなかったよ!」と暑い日に話してくれたのは、先生の明るい雰囲気をそのまま持って帰ってきてくれていたからなのね。

私の父は本当に寡黙な人で、何を考えているのかさっぱりわからず、どんな時も本を持ち歩いている姿をずっと見てきました。
父の世界観が知りたくて、いつの間にか本が好きになっていた小学校時代。
私が図書館司書になりたいと思ったのは沢山の理由からで、その話はまたいずれさせて頂こうと思っているのですが、父が本好きだったのも大きなきっかけの一つです。
先生と話していたら、大学生の頃まともに話せなくなり、電車の中で吊り革を握って片手で文庫本を持つ父の後姿が過り、はっとなりました。
幼稚園の廊下で、その光景だけが切り取られたかのような淡くて、胸が詰まりそうな記憶。

担任の先生は、得意だった音楽を通して、子供達の感性がより豊かなものになってくれたらと笑顔で話してくれました。
音楽関係の仕事には就かなくても、自分の意志を違った形で届けようとする姿に元気をもらった優しい時間。

大学図書館や学校図書室で働いていた時、私も本を通して、少しでも心が豊かになってもらえたらといつも願っていました。
担任の先生と通ってきた道も、見てきた景色も違うけど、目的地はきっと同じ。
だから話していて、心地が良いんだろうな。

先生達の必須アイテムも聞いてみたら、これも意外なことにカメラでした。
そこには、親にもプロのカメラマンさんにも撮れないような、子供達の思いがけない一枚が写っている。
見せてもらったら、泣いてしまいそうだ。

担任の先生のお母さんが、自分の仕事を楽しいと感じていなかったら、また別の人生が待っていたのかもしれません。
お母さんの園児達を想う気持ちが、先生の心にずっと届いていた。
そのことを、息子がいつも無邪気な笑顔で証明してくれています。

先生も私も、親の背中を見て“今”があるということ。
心の奥底で、いつも大切にしているということ。
そして、そんな姿を見せてくれて、ありがとうと思っていること。