学んでいたこととは -長編-

息子がまだ小さかった時、って今でも小さいのですが、大阪の大学で学んでいたのは、司書教諭という資格を取得する為でした。

本当であれば、大学在学中に学びたかったのですが、これまで書かせてもらっているように、とてもそんな状況ではなかったので、いつかチャンスがあればとずっと思っていて。
そんな転機はやっぱり教育現場から。
不思議な巡り合い』でも触れたのですが、以前働いていた小学校の同系列の教頭先生に仕事の声をかけて頂いた際、「今回はご縁が無くて残念だったけど、司書教諭の資格を取っておくといい。あなたなら、いつか役に立つ時が必ず来るから。」と力強く言って頂いたことが、大きな励みになりました。
同じ職場では働けなくても、私の未来にエールを送り、道を作ってくれた大切なご縁でした。

ここで頑張らないなら、いつ頑張るの?今でしょ!!

そんな大きなきっかけから、この資格を通信教育で取得できる日本中の大学を、片っ端から資料請求。まだまだ息子は夜泣きの真最中。預けられる人もいない。そうすると、スクーリング(一定期間通学して受ける面接授業のこと)も受けられない。残された道は、全部を通信教育だけで行うという選択でした。ダメもとでパンフレットに目を通すと、たった一校だけ見つかったのが、大阪の大学。それを見た時、私のような身動きが取れない状況の人にもちゃんと進める選択肢があることが本当に嬉しかった。
教育は、学びたい人に用意されている。そんな喜びを実感した瞬間でした。

それから、出身大学の卒業証明書や、司書課程で学んだ単位修得証明書などを送付し、書類審査。この資格は、教員免許を持っている人、教職課程を勉強中の人しか取れないもので、司書課程で学んだ1教科は内容が重なっていた為、2単位分は免除。
それを証明する為の書類が通り、学生証と教材等がどっさり送付されてきました。

教材を見て、育児中に大丈夫かなという不安もありましたが、それよりも、大阪の大学に所属している学籍番号が付いた学生証を見た時、色々な想いがこみ上げて、涙が溢れました。
本当に足を踏み入れることができたんだ。
もしかしたら、18歳の時に行っていたかもしれない場所。そこに16年もの月日を経て、違った形で学べることに、心が震えました。絶対に結果を出そう。

司書と司書教諭は何が違うのか、よく聞かれるのですが、ざっくりと説明をさせて頂くと、司書は図書館法が、司書教諭は学校図書館法がベースになっています。
公共図書館や大学図書館では司書、小中高校の12クラス以上ある学校では司書教諭を勤務させないといけないと一応決められているのですが、なかなか難しいのが現状のようです。

両方を学んでみて、司書は本当に図書館の専門的なことが中心で、司書教諭は、色々な角度からどうして図書館は必要なのだろうと、教育と結びつけながら、根本から考えさせられました。
あまり試験内容を話すと大学側に迷惑をかけてしまうので、大まかにしか言えませんが、『情報化社会って何だろう』と、この辺りで苦戦してしまい、まさかの2連敗があったわけです。
テキストを見て、参考文献を読んで、私なりに解釈し、まとめた試験内容はなぜ評価されなかったのか。
理由は簡単でした。自分で情報を集め、考えて言葉にすることが必要な教科なのに、私の見解はとても曖昧だったことが敗因。

情報が溢れている世の中で、情報に埋もれることなく、自分の考えを持つ、その為には疑ってかかることも、色々な角度から考える視点も必要。それを学校という場所で教えるための勉強をしていたのに、私自身ができていませんでした。
あの2連敗があったからこそ、今こうしてここにいるのかもしれません。

大学在学中に取得していたら、ここまで情報化社会に触れていたかなと学びながら思っていて。時代の変化が凄まじく、学ぶ内容も多少違ったのではないか、せっかく今学べた内容を、いつか生かせられるチャンスがあったらと願っていました。

まだ1歳の息子をようやく寝かしつけ、さあ勉強するぞとテキストを開いた瞬間、泣き出して振り出し。最大2年間在籍できると分かっていても、1年で取得することが目標でした。そして、月に1度ある試験も、自分でスケジュールを立て、自信がなければスルーしてもよく、1年間のペース配分を決めました。
無理なく、でも休むことなく、学んだことを力に変えていけられるように。

レポート提出4回、筆記試験4回。全部で8単位。一度も大学に行かず、教育に関わる国家資格を取得することの難しさを痛感させられた日々。育児中に無謀だったかなと、教員免許や司書の資格を一緒に取った仲間が恋しくなって、深夜に泣けてきたことも。それでも、そんな思い出がずっと私の根底にはあって、ここで乗り切ったら、また一つ強くなれる気がしました。

試験時間中は、夫や息子に出てもらい、自宅のパソコンから。睡眠を削った1か月が、たった50分の試験で結果が出る。そんなことを思うと毎回手が震えていて。試験結果も全てパソコンから。その内容に一喜一憂。何度も挫けそうになり、周りに助けられ、これを最後にすると決めた試験は、1年で見事に通りました。

教員免許と、司書で取得した2単位分と、そこの大阪の大学で取得した8単位。
その3つを、文部科学省に送ってもらい、ようやく司書教諭の証書が届いた時は、本当に胸がいっぱいでした。笑ってしまうぐらい大変だった。だから、その価値の大きさを自分自身が知っています。届いたのは3月。桜が咲く前の暖かい春でした。

教育現場にいなくても、伝えることはできる。3つの資格は、私だけのものではありません。悔しい思いも、溢れそうな思いも、小さな努力も、数えきれない人達の応援も、すべてが詰まった大切なものです。

情報化社会のほんの一部分に桜を咲かせることができたら。それが司書教諭として学んだこと。