世界野球プレミア12、日本対韓国戦の決勝。テレビの前でその時間を待ちわびていたら、オープニングで流れてきたのは『思い出せあの歓喜を、思い出せあの屈辱を』というアナウンス。4年前の前回大会は、私は何をしていただろうと思い出してみたら、まだまだ2歳の息子の育児に奮闘中で、思うように試合が観られていなかったことに気づきました。その時の結果は3位、それを思うと冒頭の言葉がどれだけの重みを持つのか、ひしひしと伝わってきて。この試合を絶対見逃さないでいようと思いました。
稲葉監督が、試合前にスタメン発表を選手達にしている映像が流れ、そこには愛称で呼ぶ指揮官がいて、それに気持ちよく返事をする選手達がいて、それだけでもう十分一つになったチームを感じました。各球団から集められた選手をまとめる稲葉監督の大きな集大成、その気持ちに応えたいと願う選手達の気持ちが画面を通して伝わり、胸がいっぱいでした。
先制されてしまった日本チームに向けて送られる東京ドームの声援を目にして、私もそこへ行きたいと思っていたら、画面下のツイッターの文字が今回も目に飛び込んできました。『まだまだこれからや!一点ずつ返して行こ!』一緒に観ている同じ野球ファンの方に励まされ、画面からでも一緒に応援できるよねって、嬉しくなっていた矢先の攻撃で、山田哲人選手(ヤクルト)の逆転3ラン。文句なしの絶妙な当たりは、ファンの後押しがあってこそ。そして何より本人の気迫がバットに乗ったような気がしました。
その後も日本ペースで試合を運んだ9回表の韓国の攻撃、最後の選手が空振りをして試合終了となった瞬間、稲葉監督が溢れる涙を堪えきれず両手で顔を覆った姿を見た時、一緒に泣きそうになりました。それは紛れもなく歓喜の涙であり、そこに稲葉監督の苦悩も喜びも全て詰まっていたから。ここまでくるの、大変だったんだ。稲葉コーチとして世界大会で涙を飲み、頂点を極めることの難しさもよく分かっている稲葉監督の想いが、一気に溢れ出したのだろうと思いました。
ヒーローインタビューで、山田選手が話してくれました。「世界一になるのは決めていたこと」だと。それを聞いた時、明暗って、勝敗ってここで決まるのかもしれないなと感じました。もう、グラウンドに出る前から決めていた強い気持ちが生んだホームラン。忘れないでいようと思います。
そんな感動的な試合の後に和ませてくれたのは、侍JAPAN公認サポートキャプテンの中居正広さん。どの試合も好投した甲斐野投手(ソフトバンク)に、「まだ一年生ですよね?」と笑いながらインタビューした時、ふと力が抜けた笑顔で、「はい、一年生です。」と答えた表情を見て、微笑ませてもらったと同時に、戦いの後のこんな瞬間が見ていて堪らないなと思いました。そして、4番の役割を格好よく果たした鈴木誠也選手(広島)。「個人の成績はどうでもよくて、優勝することが目標だった。」と。個人よりも、日本代表としてチームみんなで世界一になるということ。
翌日、まだ舞い上がっている気持ちのままパソコンを開くと、シャンパンファイトのニュースが目に入ってきました。會澤捕手(広島)が開幕前の決起集会で、皆で手を繋いだエピソードを持ち出したそう。ナインは盛り上がり、「最後も手を繋いで締めたいと思います。」と呼びかけると全員が手を繋いで輪になり、万歳三唱で解散。野球ファンには、泣きたくなるようなチームの絆。
稲葉監督が勝利インタビューで何度も伝えてくれました。「オリンピックで戦おう」と。その輪には、侍JAPANサポーターも入れてもらおう。この気持ちは、東京オリンピックへと続いていく。