約束した場所へ

ビジネスパートナーであるプログラマーのMさんから、一本のメッセージが。『トップリーグの試合、抽選に当たったよ~。』え?本当?難しいと思っていたので、思いがけない吉報に感謝と感激が押し寄せてきました。シェアオフィスのラガーマンTさんに報告したくても、たまたまタイミングが合わず、不動産関係のHさんに伝言をお願いすると喜んで快諾。『なんで地球は丸いんですか?』なんていう全然関係ない伝言をしてくれていたりして。行ってきたではなく、行ってきますという未来形を、どうしても彼に伝えたかったんだ。そう、元気になったら試合を観に行くと約束したから。思いがけないぐらい早く、実現できそうだよ。

そして、試合当日の朝、前に買っておいたチームのTシャツを着て、ジーンズとスニーカーを履き、準備は万端。また表参道の駅でMさんと待ち合わせをし、途中のカフェに寄り、急いでサンドイッチを食べながら、なぜかまたプロ野球の話になってしまいました。「今の監督って、現役を知っている方達ばかりなんだよ。私も年取ったなあって実感してしまう。」「分かるよ~。応援していた選手が監督だからね。」と乗ってくれて、結局こうなるんだな。それでも、早くグラウンドへ行きたくて、慌ててお店を出ると道行く人達はラグビーファンの方達ばかり。仲間がいっぱいで胸が熱くなりました。応援しているチームのテントへ行くと、アプリからマスコットキャラクターのミニぬいぐるみが当選し、子供みたいに喜んでしまいました。「とってもほしかったんです~。」とはしゃぐと、スタッフさん達も一緒に微笑んでくれて。ありがとう、本当にありがとう。

その後、彼が取ってくれた席に行くと、またメインスタンドで、グラウンドがさらに近く泣きそうになりました。前回来た大学ラグビーの時は、秋でまだ体が元気でした。それから、あまりにも沢山のことがあって、本当にまたここに来ることができたのだと溢れそうになりました。選手達の練習する様子が見えた時、一気に色んなことが駆け巡ったようでした。紹介状を持って、婦人科を訪れた時、卵巣がんの疑いが出て、これは何かの間違いだと思いました。悪い夢だからどうか早く覚めて。私の体で起こっていることではない、そう自分に言い聞かせながら超音波の印刷された画像をおじいちゃん先生に見せてもらった時、現実を目の当たりにしました。入院、手術は避けられないということ。それから出会った婦人科のセンター長。「卵巣がんは、他の臓器に比べて厄介なんだよ。だから、慎重に取り出すよ。もし、手術中に行われる迅速病理検査でがんと出た場合、泌尿器科の先生にも執刀をお願いすることになると思う。どう転ぶか分からない、開けてからの判断になるよ、いいね。」穏和に、それでも僕に任せなさいという強い信頼を感じさせてくれる先生の気持ちに、不安と安心が混ざり、最後は安心感が大きく勝ってくれました。「先生の判断に全てお任せします。よろしくお願いします。」そう言って頭を下げた入院前。グラウンドで、試合が始まると沢山のことが鮮明に蘇ってきました。

退院し、初めて行ったシェアオフィス。そこでラガーマンのTさんがどれだけ復帰を喜んでくれたことか。まだ本調子じゃないけど、元気になったら試合を観に行きたいです。そんな私の言葉に微笑んでくれた日に、届いていた沢山のサインが書かれたTシャツ。そこに書いてくれた選手達が、相手チームに本気でぶつかり、タックルされ、もみくちゃになり、倒れ、流血し、それでもボールを繋ごうとする姿に、涙がこぼれそうでした。こんなに苦しかったのに、こんなに励まされていたんだな。「もうね、僕も色んな所にぶつかったんで、意外とぽっくりいっちゃうかもしれないです。」なんて笑わせてくれたTさん。そりゃ、これだけ仲間の為にぶつかったら、体壊れても全然おかしくないよ。それでもそんなプレーに、生きるエネルギーをどれだけの人がもらっているのだろうと思うと、グラウンドからの熱気にどれだけ顔を上げることができただろうと思うと、堪りませんでした。Tさんの同期である一人はプロップのポジションにいると教えてもらっていました。その選手を応援しますと言い続けていた中で、初めて生の彼を見ることができた時、足にはテーピングだらけで、それでも一番前で、全力でスクラムを組む姿を見て、胸がいっぱいでした。Tさんにはなんて伝えよう。やっぱりあなたの仲間でした、どんな言葉なら彼の心の一番奥深くに届いてくれるだろう。

一進一退の試合は、惜敗。とっても悔しく、それでも、ノーサイドになったすぐ後に、相手選手にハグをし合う選手達を見ていつまでも凹むのはやめようと思いました。横一列に並び、お辞儀をしてくれた時、席を立ち拍手をしながら心の中で呟きました。病院のベッドの上で、トップリーグの応援に行くことを励みにここまで来たよ。本当に来ることができた。選手の皆が魅せてくれる沢山の想いは、応援する全ての方達の力に変わる。今日確信したから、結果よりも今の感動を持って帰ることにする。ナイスゲームでした!!拍手から、最後は大きく手を振りバイバイ。また来るね、そう誓いグラウンドに背を向けました。

ラガーマンのTさんに出会い、彼のチームを応援し、その気持ちがプログラマーMさんに伝わり、二回目のチャレンジで当たったチケット。繋がったね。「今度彼に会ったら、どうやって今日の試合結果を慰めてもらおう。本当に惜しかったんだよ。」「いや、彼の所属していたチームが負けたんだから、慰めるのはSちゃんでしょ。」ああそうか。そんなことで盛り上がりながら、グッズを片手に秩父宮ラグビー場を後に。勝っても負けても、チームのファンでい続ける。だって、心のこもったTシャツをもらったし、感動したし、何よりあなたのチームだから。約束守ったよ、彼に届ける気持ちに終わりはない。