時間旅行へ

顎関節症は一向に治らず、左半分の体がガチガチだったので、また前回お世話になった接骨院へ行ってきました。すると、マッサージを受けながら先生が伝えてくれて。「○○さんは野球がお好きなんですよね。」前回の会話を覚えていた先生は、すっかりイメージが出来上がっていたよう。「そうなんです。息子はヤクルトファンなんです。」「へえ、そうなんですね!」「先生は好きな球団とかありますか?」「昔、阪神ファンだったんですよ。新庄さんとか、亀山さんとか好きでしたよ。」なんだろうな、阪神ファンの方が多いことは知っているのだけど、定期的に出会うんだよな、私が引き寄せているのか?!と笑えてきて。「中学時代にテニスでダブルスを組んでいた友達も亀山さんのファンでしたよ。実は私、名古屋出身で中日ファンなんです。でも息子は些細なことがきっかけでヤクルトファンになったんです。」そう話すと驚き、続きを待ってくれていたので伝えました。「小さい頃息子が、ヤクルト飲料が好きで、よく飲んでいたので、そう言えばヤクルトの球団があるよ!と教えると、喜んでそこのファンになるって。つば九郎もかわいいし、今は村上選手の大ファンです。」そう話すと大笑いしながらひと言。「ドアラよりもつば九郎だったんですね!」という何とも言えない子供目線に、こちらも笑ってしまいました。その後も、先生が話す選手の名前をこちらが全員知っていたので、二回目にして引く程野球好きなことがばれた接骨院での一コマ。ヤクルト対中日戦を是非観戦してきてくださいね~というおまけ付き。野球を通して一体どれだけの方達と繋がっただろう。先生は、黄金期の西武も好きだったと言った、それは秋山幸二さんや清原さんがいた頃のこと。初めて野球観戦したのは、母と観に行ったナゴヤ球場での近鉄対西武戦。まだ野球熱に火が点いていなくても、秋山さんがホームベースを踏む時、バク宙をする選手だと知っていました。あの選手だ!バックネット裏で見かけることができた感動は今も胸の中にあります。先生の過去が、私の過去と重なった。見えていた景色は違っても、持った熱量はきっと近いのだと。

そして翌日、大谷選手のドジャース入団会見を見ようと朝からそわそわしていました。ブルーのユニフォームに袖を通した時、感極まりそうになって。今この時を過去の映像ではなく、リアルタイムで見られること、同じ時を生きていられることにこみ上げそうでした。大谷選手が決断したその大きさは言葉にできない程のことで、そして、いつもそばにいる水原通訳の存在が光りました。二人の信頼関係がどれだけ深いものなのか、それを感じさせてもらえる会見に嬉しくなって、ふと思い出した一つの記憶。ロサンジェルスは、いろんな意味で思い出が詰まった場所でした。

アメリカ育ちの元彼のいとこが、カリブ海のあたりで結婚式をするからと呼ばれた20代。最初にロスに降り立ち、彼の大学時代の友達夫婦の所に泊めてもらった時は、とても優しい時間が流れました。その後、ロスの空港でお別れのハグをし涙が溢れて。そのまま、マイアミ空港まで飛び、さらに飛行機を乗り換えた後、船に乗り、ようやく現地に着いた時は乗り物酔いと時差ぼけで最悪のコンディションでした。それでも、サマードレスを着てディナーに参加。場違いなのは良く分かっていたものの、あと少しだからとなんとか自分に言い聞かせ翌日の船上パーティにも乗船。ようやく最後のディナーが待っていました。すると、座席は英語が堪能な彼と離されてしまい違和感を覚えていると、私の隣に座ったのは日本人の伯母さんでした。つまり彼のいとこのお母さん、そして彼の近くには伯父でアメリカ人のお父さんが座りました。英語が飛び交い、必要最低限の会話しかできない自分はどんどん小さくなっていた時、伯父さんが私に質問を投げかけてきて。雑音もあり、うまく聞き取れないと分かった伯母が、煩わしそうに日本語で伝えてきました。「アメリカについてどう思うかって。」そのやりとりが分かり、間にいた方達も会話をやめ、こちらの発言を待っているのが分かり、混乱と共に出てきた言葉は、『とても大きい』というものでした。ありきたりだと感じた伯母は、隣で小さなため息をつき、私の言葉を聞いた彼がそのまま訳して伝えているので、なおさら情けなくなって。何十年も経ったから言いたい、もうちょっとアレンジして英訳できんかったのか!!と。緊張していたし、語彙力もなく、ましてあの場で表現力を求められても困ってしまっていたけど、それがもし姉だったら別の伝え方をしていたような気がしました。妹がイメージしている大きさとは、壮大さであったりダイナミックさであったり、それこそアメリカンドリームのようなもの。洋画を沢山観て、スケールの大きさを知った、それを映像ではなく自分の目で見た世界に妹の心は動いたのではないかと思う。感じるという気持ちが人一倍強いSは、言葉で表すよりももっと内側で沢山のことを思っている。私の知っている妹はそういう子です。ネネちゃんは、カナダ人の元彼にきっとこんな感じで私のことを伝えてくれていて、だから下手くそな英語でも深く分かり合えた、それは姉が心を込めて繋げてくれたから。それを思うと、やっぱり彼とは何かが違うんだろうな、その“違い”は少し努力すれば埋められるものではなく、学歴などを重んじる彼のご家庭に私は合わないんだろうな、いろんな答え合わせをわざわざカリブ海までしに行ったのかなと辛くなった帰りのフライトでした。それでも、またロサジェゼルス空港に戻ってきたら、彼の友達夫婦があたたかく迎えてくれた時間を思い出し、空港のホテルで泣けてきて。いいことも辛いこともあったロス、何年も経って大谷選手のドジャース入団が決まり、リトルトーキョー周辺が映し出された時、友達夫婦と歩いたひとときを思い出し、自分の心に残っていたのは優しい時間の方で、胸がいっぱいでした。エンジェルスもドジャースも同じロサンジェルス、私にとって大事な場所。
L.A.の空港でやけ食い用に買い占めたGhirardelliのチョコ、またピンチの時に食べたら元気が湧いてくるかもしれない。