意外さを楽しむ

5年生になり、2回目の面談がやってきました。半日授業だったので、慌てていつもの公園まで息子をお迎えに行き、自宅に着いた後、友達と遊びに行くと言うのでそこでお別れ。そして、また同じ道を自転車で通り、学校へ。とても気持ちよく晴れた空を仰ぎ、先生の待っている教室に向かいました。すると、図工の授業で描いた絵が廊下に飾られていて。自分のイメージするいい町を自由に描くテーマの中、息子の世界には遊園地や水族館、なぜか恐竜と、お菓子屋さんもあり、そして野球場がとても自然にそこにはあって、嬉しくなっていると、先生に呼ばれご挨拶。正面に座り、いきなり言われて。「昨日、R君が二人でメダルゲームをやりに行ったって教えてくれたんです。みんなも聞いていて、Rのお母さんって穏やかそうで、そんなイメージないから意外~ってみんなで話が弾んでしまって。静かな所を好む印象だったので、私も驚きました~。」一体なんの話で盛り上がってくれているのやらと笑えてきて。「桃鉄のメダルゲームに今はまっていて、結構メダルは好きなんです。子供達、半分以上私のことを知っているから、なんだか笑えますね。」そんな話で大盛り上がり。幼稚園時代からの付き合いや、野球チーム、旗振り当番や、広報委員など、いろんな関わりですっかり顔を覚えられてしまった様子。図書館やカフェにいる印象を持たれやすいのだけど、野球場も好きなんだよ~。と、この場で今さら言うまでもない。

さてさて、面談の中で息子の話になり、束ねたテストを渡してもらいながら、率直な感想を伝えると、さすがですねと言われて。「算数は1年生の時から苦戦しているんです。どうもマルチタスクになると、一人で混乱してしまうようで。論理的に物事を捉えるのは、あまり得意ではないのかもしれないです。逆に英語は感覚的に覚えるので、そういったものの方がすっと入るのかもしれませんね。学級閉鎖中などは、10時から11時がRのゴールデンタイムなので、その時間に集中して算数をやっていました。」そう話すと一緒に笑ってくれました。「お母さん、本当によくお分かりですね。算数も周りの友達が助けてくれるのですが、音楽会の前もそうだったんです。音楽の楽器のテスト、同じグループの子達がRを絶対に合格させるってみんなが教えてくれていました。これは、R君の人柄ですよ。みんなに優しいから、どんな教科でもみんなが返したくなるんだと思います。そして、この作文は授業で書いたものです。みんな教科書の資料を参考にしていたのですが、R君はiPadで調べ、銃社会について自分の意見を書き、それを発表してくれました。自分の考えをしっかり持っていますよ。」社会のテストは飛び抜けていい訳じゃない、でも社会という教科を息子は好きだと言った、なぜなら世界を知れるから。ひとつのニュースに対して、ああでもないこうでもないという二人の時間があって、そのなんでもないひとときが息子の中に蓄積され、自然な流れの中で出てくれたのかもしれないなと思うと、堪らない気持ちに。別居前、姉が伝えてくれました。「Sちんはなんとかしていくの。それは知ってる。でも、繊細なR君が心配。」だと。ネネちゃん、Rの心に根が張り出したよ。小さな芽が出た、そこに光を届けてくれる人達にも出会っている、その実感がさらに“らしさ”を育んでくれることでしょう。だからネネちゃん、大丈夫よ。甥っ子の心配をありがとう。
いろんな気持ちがこみ上げた面談、お礼を言い、席を立つと先生が伝えてくれました。「大谷君、ドジャースに決まりましたね!」と。「感無量です。」その決断の深さを感じ、それ以上の言葉が出てきませんでした。「大谷選手のグローブ、楽しみにしています。」そう伝えると返事が。「野球少年、うちのクラスではR君ぐらいなんです。きっと喜んでくれるだろうなと思って。サッカー少年は沢山いるんですけどね。」その意外な言葉に驚き、お互いに笑って会釈しお別れ。野球人口、本当に減っていたんだと痛感し、だからこそ届けてくれる大谷選手の想いに、また泣きそうになりました。

寒くなるにつれて、メンタルも落ち込んでしまっていた年末。パソコンを開く前に少しでも気持ちを上げようと何気なくテレビを点けると、たまたま1996年9月に行われたドジャース対ロッキーズの試合がやっていて、マウンドに立つ野茂英雄投手が映り、くぎ付けになりました。ドジャース2年目の野茂投手がノーヒットノーランという偉業を成し遂げた試合、それがどういったものなのか改めて知ることができて。場所は、標高が高い敵地のクアーズ・フィールド、バッター有利の球場だったのだそう。そして、その試合は雨で2時間も開始が遅れていました。画面の両サイドは黒、その映像そのものに歴史を感じました。やや緊張気味の野茂投手、ぬかるんだマウンドで、投球ホームを調整しながら、気持ちを落ち着かせようとしている姿がありました。近鉄時代から応援していた投手、自分が学生の頃から野茂さんに何を感じていたのだろうと緊迫した試合を観ながら考えていると、ひとつの答えが見つかったような気がして。野茂投手の中にある“孤独”が自分の中の何かに触れたのではないか、だからメジャーに行っても活躍できますようにと願い続けていたのかもしれません。試合は、いよいよ9回に。敵も味方も関係なくスタンディングオーベーションする中、野茂投手は9回のマウンドへ。そして、ノーヒットノーランが決まると、選手達が集まり、歓喜の輪の中で軽く持ち上げられた後、初めて野茂さんがほっとした表情で笑ってくれて、その一瞬をこれまでもずっと自分の中で大切にしていたのだと思いました。球を受け続けて好リードをしてくれたのは、WBCでイタリア監督だったピアザ捕手。その二人の信頼関係がとても好きでした。野茂投手が切り拓いてくれた道がある、歴史がある、そのドジャースのユニフォームに大谷選手が、袖を通してくれるのかと思うと胸がいっぱいで。そして、エンジェルス。息子が推していたオホッピー捕手がいて、私が推していたネト選手がいて、時間がある度観ていたエンジェルス戦もまた思い出が詰まったチームになりました。ドジャース対エンジェルスの試合の時は、大泣きしてしまいそうで。本当に大切なことを魅せてくれる方達へありがとうと、もらった気持ちを開花させられるように今をがんばろう。「ママにとって野球選手って誰?」選べない、これが答え。一人じゃないし、ひとつのチームじゃないし、きっと野球そのものが好きだから。大谷選手が蒔いてくれた数えきれない種の中に、きっとあなたもいるよ。その想いをまた次世代へ。その円であり球であり、繋がる歴史が好き。