息子が時々思い出したかのようにやり出す『あつまれ どうぶつの森』のゲーム。引っ越してきた直後からやっているので、そこから流れてくる音楽を聴くと、とても自然にその当時のことを思い出します。切なさや胸の痛みは、完全に消えたわけではなくて。それでも、薄れつつある、その実感が息子のゲームで分かるなんてね。「あれ?カッパ着ているあの子誰?」とキャラについて聞いてみると、「ブス!」といういかにも反抗期中の男子らしいコメントに、笑ってしまいました。「あつもりに出てくる動物達はみんな可愛いでしょ。」とわいわい。中学2年生って本当に難しい時期だなと思いつつ、そんな時間までも楽しめたらいいなと。光陰矢の如し、このひとときを見落とさないで大切にしたい。
季節がゆっくりと秋の色になっていくここ最近、ふと大学時代のことを思い出しました。1年生の時に入部したマウンテンバイク部。部員達で、大分の別府港から何日もかけてサイクリングを開始しました。ゴールだった阿蘇山を下りた後、自転車だけを実家に郵送し、佐賀の祖父母宅へ向かう為、みんなとバイバイ。本当に楽しい旅でした。その後、春休み中に自宅にいると、高校も同じだったサークル仲間の女友達から電話が。「今、他のメンバーと遊んでいるんだけど、Sちゃんもどう?」とそこにいた名前を教えてくれて。「おじいちゃんの昼ごはんの準備が終わったら、空いてるよ。もし車ならみんなでうち来る?お好み焼きを作りすぎちゃったから良かったら食べに来て~。」と誘うと、女の子二人と男子君一人がやってきました。応接間に通し、みんなでお好み焼きを食べて盛り上がった時間。すると、誰かが部長に電話しようと言い出し、テンション高めのまま話し出すと、先輩もその場のノリでうちに遊びに来い!という流れになって。「ええ!いいんですか~。」と言いながらもみんな行く気満々で笑ってしまいました。「っていうか、先輩んちって浜名湖の近くじゃね?」と電話を切った後作戦会議をすることに。「私はみんなに会えたし、ここでお別れするよ。」と伝えると、「Sちゃんがいないと辿り着ける気がしない!」と友達が言い出し、強制参加が決定。祖父に遊びに行ってくることを伝え、助手席に乗り、地図を広げて高速へのルートを促すことにしました。やっぱり連れてきてよかったとみんなに安堵され、4人の賑やかなドライブが始まって。カーナビもなく、ガラケーはネットに繋がっている訳もなく、頼りになるのは地図と青看板のみ。いきなり便乗することになったので、ヒールのある靴を履いてきてしまい、そういえば運転代われなくてごめんと言いながら、ナビ役に徹しました。その後、なんとか浜名湖辺りに着き、先輩に電話。目印になる所まで車で迎えに来てもらい、後ろを付いていき、ご自宅に到着しました。すると、後輩4人が来たことを喜んだ先輩は、うちに泊まっていけと言ってくれて嬉しい悲鳴。ええ!お泊りセット、歯ブラシしかないんだけど!!と一人で混乱。そもそも自宅でお好み焼きを作っていただけで、展開が早過ぎないかとあたふたしていると、先輩はお構いなしで、お言葉に甘えることにしました。祖父に電話をし、理解してくれてほっ。その後、浜名湖を案内され、穏やかな景色に感激した後、みんなで焼肉屋さんへ。散々盛り上がり、戻ってくると、お父さんが大量のアイスを買ってきてくれていて、お腹がはちきれそうでした。弟君達と共有で使っている大きな勉強部屋に、彼らが恐縮しながら入り、教材だけ取ってまた出て行ってくれて。なんだか申し訳ないなと先輩に謝ると、一日ぐらいいいのいいのと笑ってくれました。メイクも落とさないまま、歯磨きだけさせてもらい、深夜まで語り合い就寝。翌日も同じ服で、先輩やご家族の皆さんにお礼を言ってお別れしました。なんだか、宝箱のような時間でした。
それから2年生になり、いよいよ両親の関係がどうしようもない状態まで悪化。色々考え、退部をさせてもらう為、部長に話があると伝えると、空気を読んだ彼は信頼できる同級生の女性の先輩も一緒にいいかと聞いてくれて、3人で飲む機会を用意してくれました。いつもは、車通学している先輩、でもその日は電車で来てくれていて。腹を割って話そうや、俺は男だし、女性の視点からも何か伝えられるかもと思って連れてきた、そんな気持ちを感じ泣きそうでした。大学近くのおしゃれなバーのテーブル席、照明はオレンジ色で夕日のようだなと思いました。ちょっと重い内容でごめんなさいと前置きをした上で、伝えることに。うちは二世帯で、時々介護が必要な祖父がいること、両親が不仲で離婚は時間の問題かもしれないということ、父は銀行員でリストラの危機もあるということ。大学の学費がいつ滞るかも分からなくて、それでも2年から始まっている教職課程を諦めたくないこと、時間が許す限りアルバイトの時間を増やしたいから退部させてほしいと伝えると、二人は深い優しさを向けてくれました。「もし、Sちゃんさえ良ければ、退部せずに籍だけ入ってくれていても全然構わないよ。私達はいつまでも待つから。相談相手にもなりたいし、何か力になりたい。」九州の旅でも先輩の家でも、衣食住を共にしたからこそ、開けた心があった。この人達には正直でありたいと。そうしたら、とんでもないあたたかさが返ってきて、感無量でした。人は、こんな気持ちを向けてもらえたら、頑張ってみようと思えるのかもしれないなと。籍だけ入ったままだと合宿の予定を立てる時など迷惑をかけてしまうからと、お礼と共にお断りすると、こちらの気持ちをよく分かってくれました。「それでも、俺達の後輩でいることに変わりはないから。」じわり、こんな想いが自分の中に沁みこんでいたんだね。
卒業式、土砂降りで袴はべたべた、そんな中で学食に転がり込むと社会人になった部長がみんなに会いに来てくれていました。「Sちゃん、卒業おめでとう!」「その節は、ありがとうございました。急に押しかけちゃったりして。」そう話すと笑ってくれました。「一緒に写真を撮ろう!」と言われ、先輩のカメラと私のカメラ、それぞれに収まって。その一枚は、もしかしたらクローゼットの一番奥に、埃を被って収納されているかもしれないな。どこかにいってしまったかも、でも、バーでのことは絶対に忘れないでいようと。日本料理店のバイトで、お酒を扱うお店だったから嫌な思いもした、きっと何度も。でも、お酒の匂いが嫌いにならなかったのは、その夜があったから。女の先輩が飲んでいたのは、甘いフルーツのお酒でした。五感が思い出させてくれた大切な記憶がある、共にいてくれようとした人達の深い気持ち。