見慣れたお店の安堵感

カフェ好きなのは間違いないけど、同時に小心者なのも否めない。とにかく新しい地域に行き、馴染みのカフェのマークを発見すると、ほっとしてしまう所が未だにあります。新宿のスタバやタリーズにはどれだけお世話になったことか。お店の雰囲気や商品、価格が分かっているとやっぱり安心感が違いますね。

そんな私がオーストラリアで新規開拓したのが、グロリアジーンズコーヒー。外から見た感じが通い慣れたカフェに近く、お店に入ると価格も明確で、スタバのようなセルフサービスで仕組みもよく分かりました。「Short hot latte, please.(Sサイズのホットカフェラテをください)」これだけで通じ、ほっとしたのも束の間、店員さんに名前を聞かれ慌ててしまいました。なぜ?と思いつつも、なんとなくファーストネームを伝えると、日本名だからなのかよく分からなかったようで、スペルを教えるとマジックを持って、紙カップに書き込んでくれました。
そうか!!これが、このお店のやり方なのか、オーストラリア発なのかは分かりませんが、ラテを作ってくれた店員さんが、「S」と呼んでくれて、他のお客さんと間違えないようにするためでした。
随分親しみを込めて呼んでくれたことが嬉しくて、それからすっかり常連さんに。いくつも店舗を構えているので、電車の旅に出てもそのマークを見つけると迷わず入ってしまい、結局いつものラテとサンドイッチ。この辺りは昔も今も変わらない。

懐かしくなって調べてみたら、日本にもあったことが判明したのですが撤退してしまっていました。また上陸してくれることを願うばかり。
実は以前、デニーズのモーニングを食べた後、そこで記事を書いていたら、途中から泣けてきて、隣に座っていたおばさん達に驚かれてしまったことがありました。最後まで書き上げたいけど、溢れてきて目が曇り、紙のナプキンで拭いていたら完全に怪しい人の出来上がり。そんなことも、このサイトには大切なスパイスだったりして。思い入れのある場所がこうして増えていく。

現地のグロリアジーンズコーヒーで、語学学校に行く前の勉強場所にもしていました。『another dream(ほかの夢)』というテーマが与えられ、皆の前で自分のもう一つあったかもしれない夢のような話を語る授業でした。下手な英語でまとめた文章を、ラテを飲みながら練習し、色々な国の学生さん達の前で緊張しながら発表。「洋菓子を作ることも食べることも好きな私は、日本のヒルトンでパティシエになるのが夢だった」と8割増しで話した後、「日本に来た時は、どうぞ食べにきてください」と最後に笑って締めくくったら、皆が一緒に笑ってくれました。自分の大袈裟な夢を語るだけでなく、国籍関係なく“一緒に”という想い。語学がまだまだでも、ウェルカムな気持ち。それが、人を繋いでくれる。そう感じた緊張と嬉しさに満ちた、忘れられない授業でした。

気が強そうで苦手なタイプの南米出身の女の子が、その授業以来、すれ違う度に声をかけてくれた言葉は、「Hi!」。たったそれだけなのに、ぐっと近くなった距離が堪らなく嬉しかった。

グロリアジーンズコーヒー、やっぱり行くしかないか!オーストラリアになかなか行けなくても、あのマークを見ただけで、一気にこみ上げるんだろうな。現地で常連さんになれたぐらい居心地が良かった。「S~」とマジックで書いてくれた紙カップを洗って、日本へ帰るお土産にしたよ。
トランクの中でぐしゃぐしゃになっていたけど、なかなか捨てられなかった大切な思い出。