救済措置

息子が寝る前、たまにやっているスーパーマリオのゲーム。順調にアイテムもゲットし、前に進んでいると、いきなりスコンと落ち、マリオ×2に。「え~、上手くいっていたのに落ちちゃったよ。」とぶつくさ。これはまるで、最近の私じゃないか。今日はちょっと軽やかだなと油断していると、ズンと体が重くなり、メンタルも一緒に急降下。さくらいろ×1なんだから、急に落ちるのを何とかしたい。落ちたかと思わせて、下に大きなかごが用意され、鳥さん達がのんびりと引き上げてくれたらいいのにね。

そんなブルー続きの日常の中で、マイタンブラーを忘れてスタバへ行った時のこと。タンブラー値引きで20円お得だったのになと思いながら、レジで並んでいると、「こんにちは!」と素敵なスマイルで声をかけてくれたのは、年長の時に同じクラスだった女の子ママの店員さんでした。何度会っても癒される温度に感動し、何でもないやりとりをして少し気持ちを上げてもらった後、紙カップを見てみると、別の店員さんが『Thanks!』と書いてくれていて、ぐっときました。タンブラーを忘れて良かったなと。そして席に着き、おしぼりで手を拭こうとすると、『Have a good day!』の文字が。スタバファンには堪らないこんな気持ち。気分が沈みやすいこういった時期だからこそ、もらった優しさが自分の中で膨らみやすいのかな。さくらいろ×無限大、もう意味が分からない。

冒頭の記事で書いた、対話が苦手だという内容。え?周りの人達と沢山話しているよねって思われそうなのですが、自分の話をすることが苦手なんです。ここまで書かせてもらった内容を、もちろん全部知っている人は周りに誰もいなく、自分の中に留めようと思っていたことを掘り下げました。そして、これまで出会った沢山の方達の苦悩も届けさせてもらっている訳で。ペンネームでい続けなければならない理由があり、匿名だからこそ書ける想いを大切にしたいと思っています。
そんな中で、気づかれてもいいと公言してくれたラガーマンのTさん。何気なく彼のSNSを覗いてみると、コーチをしている大学ラグビーチームの下に、ジュニアチームを作り、そこの監督に就任していることが分かりました。言ってよ~とも思ったのですが、いつも謙虚な彼は自分の話をあまりしないので、今度さりげなくつついてみようと思います。そこから、日本代表になる選手が育っていくのかな、なんて夢のある仕事。就任祝いは、何にしよう。以前、どれだけユニフォームが汚れるのかを聞いた時、もうドロッドロです!と笑って教えてくれたので、せっけん1年分なんてどう?ピラミッドにしたら、結構楽しめるかも。って、本来の目的ちゃうし。

日本料理店で可愛がってもらっていた調理長。私が社会人になった後、お店の売り上げが伸びないという責任を取ることになり、関西のお店の副調理長に降格させられることを知りました。なんだかやるせなくて。威厳がある中で、人のことを思い、とても控えめな人であることは雰囲気からも、話してくれる内容からも感じていて。ある時、お酒の席で何気なく伝えてくれた話がありました。「俺さ、友達に頼まれて借金の保証人になって、そいつが急にいなくなって、何百万っていう借金を背負うことになったんだよ。結婚の約束をしていた彼女にそのことを話したら、振られちゃってさ。なんか悔しかったよ。」一回り以上離れた調理長が吐いてくれた苦悩、それでも、本当の後悔をしていないような気がして、それが何とも言えない人の良さを感じました。「友達さ、とっても困っていたんだよ。助けてやりたかったんだ。」なんだかわかるよ、その気持ちと思いながら、ただただ隣でそっと頷き聞いていました。「Sちゃんさ、親のことで苦労しているのは分かる。でも、自分を犠牲にしてまで、大切なものを失ってまで頑張ろうとするなよ。俺みたいにはなるな。」自分の失敗を、恥を晒して伝えてくれる人がいる。同じような思いはするな、その時間も、繋がった人達も、戻ってこないのは悲しいから。3限目から始まる講義の前に、傘をお店に忘れたことを思い出し、途中下車をして取りに行ったことがありました。すると、仕込みを一生懸命している調理場の方達の姿が。いつもとは違う時間帯に行ったので、なんだか沁みました。挨拶だけして帰ろうとすると、調理長がわざわざ顔を出し、「これから大学か?行ってらっしゃい。」そう言って片手をひょいと上げてくれてお別れ。愛想はない、言葉数も少ない、それでも愛情深いことを知っていました。人柄は、滲み出るもの。

そして、関西のお店に異動になる調理長の送別会を小料理屋のママのお店ですることになり、私も呼んでもらいました。泣いても笑っても最後のお別れ。「調理長、本当にお世話になりました。なんだか年齢の近いお父さんみたいで、嬉しかったです。」素直にそう話すと、寂しそうに言ってくれました。「Sちゃんが辛そうにしていた時期、俺、男だから気の利いた事言ってやれなくてごめんな。まさかの転勤だけど、腕一本で頑張るしかないから、またそこで這い上がるよ。」最後の最後まで、人を思う人。そして、とっても不本意だっただろうなと。月に一度変わるお料理の試食会で、下っ端の私の意見を聞いてくれたこともありました。「どう思う?」一つの品について真剣に考え、自分に厳しく、食材と器と向き合ってきた後姿を見てきました。また、這い上がってオンリーワンの料理を作っていてほしい。もしかしたら、再度異動になり、関東にいるかもしれない。そんな奇跡が、世の中起きることを知っている。そういった想像が、気持ちをふわっと上げてくれるんだ。会えたら、どれだけの感謝を伝えよう。