意表をつく発想

学校後、ボランティアの方が預かってくれる場所で遊ぶことに慣れた息子が、ギリギリの時間までお友達と遊んで帰ってきました。持って帰ってきたのは、そこで作った工作。「これなんでしょう?」「電車かなあ?」「ブッブー、焼きいも屋さんでした~。」斬新やな、というか思いっきり季節外れだしと思いながらもなかなかのクオリティで一緒に大盛り上がり。なぜかリモコンが付いていて、自分で操作できるという仕組みだそう。女の子のお友達と仲良く作っている光景が浮かび、彼の得意分野をどう伸ばしていこうかと嬉しくなりました。苦手なことよりも得意なこと、そこに目を向けた方が、きっと自信を積み重ねていってくれるのだろうと。

そして、連絡帳が切れたので新しいものを渡すと、使い切った連絡帳の時間割に自分で何やら書き込んでいました。1時間目図工、2時間目体育、6時間目までその繰り返し。「これさ、1時間ごとに着替えるの、面倒くさくない?」と冷静に突っ込んでみると、あっそっか~と笑っている姿を見て、二人で一緒に笑ってしまいました。コロナ禍の中で、今も変わらず子供達の心のケアを意識してくれている先生達、学校が楽しいものであってくれることに、感謝の言葉が尽きません。

そんな学校生活の中にいると、自然と思い出す蜜の濃かった4週間の教育実習。中学1年生の社会科の授業を学ぶ為、後ろに立っていようとすると、余っていた生徒用の椅子と机を指導してくれる先生が運んで来てくれました。「学びに来たのなら、いつも生徒達の目線でいてほしい。立っていたんじゃ、見えないものもあるから。」そう言われ、社会科の教科書、資料集、地図帳、自分のノートを広げ、生徒達と同じように言われたページをめくり、板書を写し、時に笑いました。楽しい、悔しいぐらいに楽しい、なんでだろう。そこには絶妙なテンポがあり、抑揚があり、引き込むポイントがありました。そして、自分が教壇に立った時、同じような雰囲気を作るのは至難の業だと思いながらも、下手くそなりに進めた何回目かの授業中、ふらっと先生がいなくなってしまいました。あれ?と思いながらもそのまま無事に授業を終えて、職員室に行くと何事もなく椅子に座っていた先生を発見。「途中で姿が見えなくなったので、忘れ物でもしたのかと思いました。」「真ん中あたりで授業が盛り上がったでしょ。僕がいない方がより先生の肩の力が抜けると思ったから。気負わない方が、あなたらしさが発揮できると思ってね。残りの時間はどうだったのか、生徒達に聞けば分かるから。」そう言って笑ってくれました。車輪の外し方が絶妙で、こんな風に育てようとしてくれているのだと、自分が逆の立場や親になった時、こうやって見守りながらそっと進ませてあげられたらと思いました。
「そうそう、後で言おうと思っていたんだけど、ヨーロッパの地図、イタリア半島が抜けていたよ。」あらあら。あのブーツの形だけは忘れないでいようと思っていたのに・・・すみません。

そして、相変わらず職員室で恩師と授業研究や反省会をしていると、やってきたのは50代の男の校長先生。「ちょっと休んで、3人で話そうよ。」そう言われ、応接セットに呼ばれました。「あなたね、この社会科教員に指導を受けて、ラッキーだったよ。とっても丁寧に指導してくれる、これでもかっていうぐらいにね。生徒達にとっても正直鬱陶しいと思うこと、あると思うんだよ。ねちっこく細かいことを叱ったりするからね。でも、この先生は嫌われることを恐れていない。だから、今はどちらかというと面倒くさい先生でしかない。それでも、何年かすると気づくんだよ。先生に言われた言葉が過って、いい先生だったんだなって。そういう人からあなたは指導を受けている。もらえるだけもらうんだよ。なかなかこんな教員はいないから。」そう言うと、いえいえなんて言いながら照れて笑っている恩師がいて。私が頷き微笑むと、笑いながらその場を離れてくれた校長先生。出会えたことはラッキーだった。幸運。こんな一つ一つの巡り合わせを大切にしていきたいと、形の無いものをもっと自分の中で大切に膨らませていきたいと思いました。
先生、届いていますか。あなたの教え子は今日も言葉を紡いでいます。拙いし、感情が先に来てしまうけど、それが私らしいのなら、授業にマニュアルはないのだと教えてもらったように、その時の全てを一つ一つの記事に載せていこうと思っています。

市内のあるカフェレストラン。クラウドファンディングで支援を募り、集まったお金で洋食を作り、それを医療従事者の方などに提供していました。そのことを知り、恥ずかしいぐらい少額のお金を支援。すると後日、支援先の病院関係者の方達から沢山のお礼のメッセージが。なんだか、堪りませんでした。応援したつもりだったのに、とっても大きなものが返ってきて、こんな風に巡ってくれた一つの出来事に温もりを運んでもらったようでした。

感受性の強さを、フル回転させなければ。ここに集まってくれる沢山の方達に、小さな喜びを届ける為に。