今日は、久しぶりに新宿に用事があり、いい天気の中で電車に揺られながらスマホを開くと、『イチロー会見「喪失感ない。野球の研究者でいたい」』の文字が飛び込んできました。
慌てて詳細を読むと、マリナーズの特別アドバイザーに就任するという内容。色々な気持ちがこみ上げて、本気で泣きたくなりました。
目の前の座席で、スマホを持っている4人は、このニュースを読んでいるのかな。違うかな。イチロー選手本人は、喪失感がないと言ってくれているけど、私にはある。あまりにも大きな存在で、マリナーズのユニフォームを着て、打席に立ってくれた時、もう一度夢を見せてくれたような気がしていたから。そして、エイミーさんの『イチメーター』が、やっぱりそこにあってくれたことが嬉しかったから。
チームに合流する前、自主練習を積んでいたとはいえ、調整が遅れていたイチロー選手は、開幕スタメン出場の知らせを監督から聞いた時、大きなギフトをもらったような気持ちになったそう。その時、オリックス時代の仰木監督を思い出したようです。オリックスが対戦相手に負けた試合のバスの中で、チーム全体の雰囲気が沈んでいる中、仰木監督はイチロー選手にこう伝えました。
「イチローは、下を向くな。今日、2安打も打っただろう。チームの敗戦は監督である私の責任だから、気にしなくていい。」と。
それを聞いたイチロー選手は、この監督の為に頑張ろうと誓ったそうです。今回、マリナーズに呼ばれ、開幕スタメンに選んでくれた監督に対して、その時と同じような気持ちがよみがえった。
“監督の為に、チームの為に、自分ができること全てをかけたい”
だから、イチロー選手は、どんな状況になっても、どんな展開が自分を待っていても、このチームの為になるならと、心の準備はできていたのかもしれません。
「18年間で最も幸せな2か月間」と語ってくれたその言葉を聞いて、喪失感よりも、イチロー選手の集大成である2か月間を毎日大切に噛み締めていたのだろうと思った時、私の中で、温かい気持ちが溢れました。
まだまだマリナーズのユニフォームを着たイチロー選手は見られるよね。引退ではないと明言してくれているよね。生涯契約を球団と結ぶぐらい、偉大な選手であると世界中の人達に証明してくれているよね。
そして、自分が経験してきたことの全てを、その球団に捧げようとしてくれているよね。
オリックス時代、イチロー選手がバッターボックスに立つ度に袖に書かれた『がんばろう神戸』の文字が見えて、胸がいっぱいでした。自分の為に打っていたヒットが、いつしか復興のシンボルになったイチロー選手。震災の前の年、日本記録を達成し、200本安打を目前に足踏みをした時、愛工大名電の恩師に電話を入れたそうです。自分の肩に乗った沢山の人達の想いを感じたからこそ、ヒットが打てない悔しさを目の当たりにし、そっと弱音を吐いていたのかもしれません。
そんな積み重ねられた、イチロー選手にしかできなかった数々の経験が、今度はアドバイザーという立場で、マリナーズに生かされていく。そんな彼を誰もが応援し、そして励まされる、永遠に。