新鮮さもいい

シェアオフィスの棚の上をふと見ると、経済書の端に、旅行雑誌を発見!明らかに一冊が浮いていたのですぐに目に留まり、意外なものが置かれていて驚きました。週末ぐらい、仕事を忘れて出かけちゃおうよ!というスタッフさんからのメッセージだったりして。

大学図書館でも、学生さん達が喜びそうな旅行雑誌やファッション雑誌を置こうかと議論になった時のこと。置く、置かないは大学によって違い、どれが正解ということもないので、色々な意見が飛び交いました。雑誌名は敢えて伏せますが、名古屋でも東京でも、雑誌の読者さんを集めた座談会があり、それに参加をさせて頂いたことがあり、こんな風に1冊の雑誌ができ上がっていくのだと嬉しくなったことがあって、本にはない良さがそこにはあるような気がして、私は置くことに賛成派でした。皆でああでもない、こうでもない、そして大体年齢によって意見が分かれ、結局は見送る形になったのですが、その時に伝えてくれた女性の上司の言葉がとても嬉しかったです。「定年間近の私達よりも、○○さん達の方が年齢的にはるかに学生さん達に近い。今回は見送るけど、あなた達の意見はこれからの図書館運営に大切なものとして、残しておくわね。」利用者さんだけでなく、そこで働く者を大事にしているそんな上司の言葉が沁みました。

最近寒くなってきたので、ジャケットを羽織っていくこともあり、シェアオフィスのハンガーにかけたら、そこにはビジネスマンの方のスーツのジャケットもかけられていて、なぜか実家にいた頃の父を思い出しました。ほとんど話をしてくれなくなった頃、父のワイシャツのアイロンがけをした後に、ジャケットの下にかけておこうと思い、手に取ると小さな膨らみを発見。どうしても気になってしまい、取り出してみるとそれは一枚の写真でした。そこに写っていたのは、玄関先で撮った父と子供の頃の姉と私。そして、その隣にいるはずの母は切り取られていました。まともに口を利いてくれないのに、父が親としての自分を大切にしてくれていたこと、そして母のことはもういいのだと、その写真が全てを物語っているようでとても切なかったです。

時は流れ、一人暮らしを始め、銀行の関連会社で働き始めた父。関東から帰省すると、元気を取り戻していた母が、名古屋駅まで迎えに来て、伝えてくれました。「今からお父さんの会社まで迎えに行くことになっているの。Sが戻ってくるなら、3人でご飯でも食べようと思って。」こんな日が本当に来たんだな、そんなことをぼんやり思いながら車に乗って待っていたら、やってきた父の格好を見て大爆笑。いつもスーツで決めていたのに、すっかりビジネスカジュアルの格好をしていて、拍子抜けしました。しかも、表情や体まで丸くなっているし。そして、慌てて父の後を追いかけてきた若い男性の方が、何やら話しかけていたのが聞こえてきました。「○○さん(父の名前)、忘れ物ですよ!」と随分ラフに傘を渡されていて。女性行員の方達に囲まれ、肩書で呼ばれていた頃とは全然違い、逆に父がなんだか寛いでいるかのような雰囲気に、何とも言えない新鮮さを感じました。これで良かったのだと。

段々と日が暮れるのが早くなった夕方。1時間だけ息子にお留守番をしてもらい、近くの接骨院へ行って戻ってきたら、しくしく泣いていて慌てました。何度か待っていた時は、お菓子を食べ散らかしながらテレビを観て寛いでいたのに、今回は目が真っ赤。外が暗くなって急に寂しくなってしまったよう。最近強気だったのに、なかなか可愛いじゃないか。よしよしとハグをしながら腕の中で宥めた夜は、そっと覚えておこう。息子の結婚式で、こんな日がふと蘇えるのかもしれない。