まっすぐな気持ち

私のドレッサーの上に置いてあるレシートの山が気になった息子が、とってもピュアな気持ちで質問を投げかけてきました。「ママ、レシート屋さんでもやるの?」そんな訳ないやろ!だいたいレシート屋さんってなんだ?もう印字されているし、誰に売るんだ?と心の中で散々突っ込みながら笑ってしまいました。「レシート屋さんじゃなくて、買ったものを記録する為に取っておいたんだけど、ちょっと面倒でそのままなの。」てへっ。「そうなんだ~。そんなにいっぱいあるからボク、レシート屋さんかと思ったよ。」この話、まだ引っ張るつもりなのか?!と、どうでもいいことで盛り上がった朝の時間でした。タヌキ商店、買い取ってくれないかな。

私の女性弁護士の先生、初めてお会いする日、待ち合わせのカフェで先に待っていると、一つ空けたテーブル席でそれらしい方を発見しました。時間は予定の20分前、横顔だけしか見えなかったけど、ホームページで拝見した先生に似ていたので、会釈をしてみるとこちらに気づき、手を叩きながら爆笑するので、思わず一緒に笑ってしまいました。それは紛れもない“人”としての一面で、この先生のこと好きだなと思えたあの瞬間は今でも忘れられません。「先に来てランチしてからお会いしようと思っていたら、隣に座っていらしたんですね!申し遅れました、弁護士の○○です。」先生、もう私知っています、数分前から。そんなことを思いながら、笑顔でご挨拶。肩書を通り越したその人の温もりを感じた時、出会えて良かったって思うんだろうな。私の代わりに夫のことで怒ってくれた先生、その温度は姉と似ていて堪らない気持ちになりました。何の狂いもなく私のセンサーが働いた時。この人は信頼できる人。

そんな気持ちのいい出会いを用意してくれた姉の幼少期を、最近よく思い出すようになりました。母がヒステリックに姉を怒り、じっと耐えていた後、ネネちゃんの心の温度がどんどん下がっていくのをどこかで感じるように。そんなことは繰り返され、姉は母にその冷たさを向け、悪循環が始まりました。「あの子は冷たい子。」母にそんなレッテルを貼られ、どんどん自信を無くしていったんだろうなと。私なんて、生まれてこなければよかった。そんな悲しみの底でうずくまる姉の痛みにようやく到達できた時、カウンセリングにどれだけ通っても闇の中にいると言った意味が理解できた気がしました。「去年の夏休み前、一旦終了してまた予約を入れますって伝えたんだけど、通う気になれなくて、そんな時にSちんと4年半ぶりに会うことができたの。」タイミングはベストだったんだね。そんな暗闇にいたのに、泣きながら伝えてくれました。「私はもういいの。自分の中で解決していかなきゃって思っているから。それよりも、あの人達がSちんにしてきたことがどうしても許せないんだよ。お父さんが何かやらかす。それでお母さんがおかしくなってSにぶつける。それを見てお父さんは煩わしくなって逃げる。玉突き事故なんだよ。二人の問題なのに、私やSまで被害が行った。私は抜け出したけど、最後まで引き受けた妹がどれだけ深い傷を負ったのかあんた達知ってるのって。今のSがどんな思いでR君のことを守ろうとしているのか、少しは考えなさいよって思う。もうね、お父さんのことはATMだと思いなさい!」姉の怒りの大きさに驚きながら、最後のセリフでふふっと笑ってしまって、姉妹っていいなと思いました。怒りが悲しみに変換される妹、もっと怒っていいはずなのにそれをしない、それじゃあ苦しいよ。その分をずっと引き受けようとしてくれて、その途中で自分の痛みの大きさに気づき道に迷った。こんな私が母親でいいのだろうか。そこに佇む姉がいて、妹が手を取った。ネネちゃん、こっちの道だよ。あなたが歩いてきた道、険しかったし、同じ所ぐるぐるして疲れちゃったと思うけど、もっと小さい時あなたが手を引いてくれたから、今度は私がお姉ちゃんを明るい方に引っ張るよ。大丈夫、私は大丈夫。自分の為に生きることを覚えたから。沢山の人が、教えてくれたんだ。ようやく分かった。だから、あなたの手を離さない。

もうすぐ、名古屋へ。先に車で行っている両親の元へ、私と息子が新幹線で向かうことになりました。マブダチK君に連絡をすると、時間を作ってくれて。『久しぶりに会えるの楽しみだよ。名駅付近でランチでもしよう。』名古屋駅を“めいえき”と呼ぶのは地元ならでは。会ってもいないのに懐かしい空気を運んでくれる彼、出会ってくれてありがとう。どれだけの気持ちを乗せて、K君に届けようか。沢山笑い、沢山泣いて、私が私でいられる人。会う前から幸せを届けてくれるマブダチはどんな言葉をかけてくれるだろう。きっと9年間の治療を吹き飛ばす力があるに違いない。名古屋のみんな、待っててね。