心機一転

なんとなく何かを抱えて学校から帰ってくる息子。私の前で反動があるものの、出してくれることを有難いと思わなければ。あっさりキャッチできるぐらい、分かりやすい。「ねえ、明日七夕よね。天気はあまりよくなさそうだけど、一緒に七夕飾りを作らない?」「そうだった~。ボクが竹を作るから、ママは短冊を書いてね!」竹じゃなくて笹じゃ!まあこれで、気が紛れてくれたらいいな。

そして、お風呂上がり、予め集めておいたトイレットペーパーの芯に折り紙を巻き、なかなかしっかりした竹を作ってくれました。太さがもうすでに竹・・・突っ込むエネルギーは他で使うことにして。さらに短冊を書こうとすると、そこにはルール説明の張り紙がありました。『まずじぶんがかなえたいことを書く、書けたらホームセンターにもっていってください、いいよといわれたらかざってください、だめといわれたらもう一どやりなおします。』なんでホームセンター?そして、チェックが入るのはなぜ?と訳の分からない疑問が次から次へと出たものの、7歳児の夢の世界へ行くことにしました。「すみませ~ん、書けました~。」と私が言うと、「あいよっ。」というなぜかぶっきらぼうなおじさんが。『みんながわらって、しあわせにくらせますように☆』その文面を読んだおじさんが箱で作ったテーブルをバンバン叩き、合格!のサイン。なんなんだこのイベントは。文字起こしをしながらシェアオフィスで吹き出している場合ではない。まだまだ、単純な時期。抱えたストレスを、なんでもないことで吹き飛ばせたら、ぐっすり眠れるよ。小さなことでもため込んだら大きくなっていく。小さな風船を気持ちよく割ってあげるのが、今の私の役割なのかも。

何でもない週末もまた、少し凹みがちな息子が気になり、蒸し暑いのは百も承知で夫も巻き込み三人でサイクリングへ出かけました。同じ場所にいるよりも、景色がどんどん変わっていくことで吹っ切れていく感覚を知っていたから。目的地の公園まで辿り着くと、三人で三角形になりキャッチボール。以前何かのテレビを観ていた時、ソフトボール日本代表の上野由岐子選手に、なかなかうまくならないソフトボールを教えてもらっている子供達が集まったチームが出てきました。それぞれのポジションにつき、順番に球を投げていき、誰かが落としたらもう一回。それを繰り返すことで、集中力や団結力が生まれていくのだと。思うようにうまく捕れない女の子が、チームに申し訳ないと思いながらも一生懸命キャッチをしようとする姿に、上野選手や皆が励まし、最後に捕れた時はなんだか自分のことのように嬉しくて。チームプレーの良さがここにある、一人では投げ出したくなるようなことも、皆となら諦めない。そうやって上野選手は登りつめてきたのだと、だから教えられるものがあるのだと越えた人の強さを感じ、胸が熱くなりました。その時のことがずっと残り、息子とのキャッチボールでも落としたら0に戻るというルールに。意外と誰も落とさないので、キャッチする度に数字が増えていき、30を超えたあたりだったかな、息子に言われてしまいました。「声が小さい!!」「ごめんなさい!」「はい、もう一回!!」いつからこんなに体育会系になったんだと笑えてきたのですが、それはもちろん野球チームのコーチ達のおかげ。ね、体を動かすとくよくよしていたことがちっぽけに思えてくる。出るよ、出て行こうよ、外へ。

そんな野球チームがようやく通常の練習になり、久しぶりだったのでグラウンドまで送り出すと、手前であっさり言われてしまいました。「ママ、もう行っていいよ。」と。二年生にもなって送迎してもらうのは恥ずかしいこと、これは息子のポリシーでした。本心がまだ別の所にあっても、強くあろうとする気持ちを尊重することも大切な気がして、あっさりバイバイ。その背中がどこかで大きく見えて、少し凹んでスタバへ。なぜだろう、小さい自分と重なるのは。

岐阜の小学校に転校になった時、転校生ということでどこか一目置かれてしまい、話せる友達がなかなかできない中で助けてくれたのは、一人の男の子。彼もまた愛知から来た転校生でした。学校指定ではなく、前の学校から使っていた黒のランドセル、それを見て仲間意識が芽生えました。「S、俺も転校生なんだよ。だから何かあったら俺に相談しなよ。」本当に嬉しかった。それでも女子に人気のあった彼に頼るのは、何か違う気がして、冷たい返事。「自分のことは自分でできるから大丈夫。」日本一可愛くない女の子だろうなと自分で言って思いました。それでも、彼はどこかで本心は別の所にあるのだと分かってくれていました、なぜなら彼もまた転校生だったから。この中でうまくやっていくしかないのだと。また、転校すると聞いた時も、お礼の一つも言えなくて。最後に目が合った時、「頑張れよ。」って伝えてくれたような気がして、また新しい環境で心機一転頑張ってほしいと心から思った切ないお別れでした。
ありがとうと思ったなら、素直に伝えられる人になろう、一人の少年が幼い少女に教えてくれたこと。