ピースがはまる感覚

三学期のこと。我が家のわんぱく7歳児が、学校から帰宅すると、相変わらず手も洗わずにランドセルをガサゴソ。汚い手でいたらダメでしょ!と怒っていると、取り出したのは細いモールで作った指輪でした。「朝ね、学校についてから思いついて、ママに作ろうと思ったの。はい、プレゼント。」もう、怒りの後の喜びは半端ない。もっと早く言ってよ~と照れながら受け取り、左の薬指にはめてみるとぴったりで、感激してしまいました。息子との波長が合うように、ピタッとくるこの感覚が心地いい。

そんな嬉しいことがあった翌日、いつものようにシェアオフィスのラガーマンTさんと談笑していると、ランチの話題になり、近くの吉野家の牛丼を勧めました。「ライザップサラダもありますよ!」と言ってみると、「そこまでストイックにはなりたくないです~。」と笑われ、絶妙な返しに嬉しくなった昼下がり。現役の頃は、食べるものも相当意識されていたのだろうけど、今はビジネスマンとしてだからね。食べたいものを食べたいです~とまだ付け加えてくれて、さらに爆笑。東北のお料理、本当に美味しいですよ!だからぜひ!と勧めてくれた年末のやりとりが何気なく胸をかすめました。どのタイミングで、どのスピードでパスをすればいいのか分かってくれている人。
朝は、エレベーターに乗る前、閉まりそうになったドアが見えたので、慌てて走ったら挨拶されながら開けてくれたのは、毎日見かける若いIT技術者の方。この間は、給湯室でお会いしたので、「祝日でも必ずいらっしゃいますね。」と話しかけると、「仕事をしながら資格を取る勉強をしているんです。」と言われ、なんだか嬉しくなりました。「頑張ってくださいね!」と笑顔で伝えると、本当に嬉しそうにしてくれて。ほんの一瞬、大学図書館のカウンターからエールを送った自分を思い出しました。届けた想いが跳ね返って、こちらがエネルギーをもらう時。

大学在学中、父が風邪を引き、私の所に電話をかけてきたことがありました。とても辛そうにしている様子を感じ、何も考えずに慌てて自宅のキッチンへ。米一合を袋の中に入れていると、背後から母の気配が。しまった!と慌てながら、「友達が風邪を引いたからお見舞いに行こうと思って。」と平静を装って言ってみると、少し間があり、冷蔵庫を開けながら伝えてくれました。「だったら、これも持って行ってあげて。」そう言いながら渡されたのは、梅干しと父が好きな佃煮。直感で気づいた母の様子に泣きそうになりながら、色々な気持ちを抱えて父宅へ。おかゆを作り、看病をし、ほっとした数日後、無事に治ったお礼の連絡をもらい、ようやく安心しました。その話をマブダチK君に話すと激怒。「風邪引いたなら、彼女にみてもらえばいいだろ。なんでそういう時だけお前を呼びだすんだよ。そんなの知るかよ。勝手に寝込んでりゃいいだろ!言っとくけどな、これは俺の意見じゃないぞ。Sのことを大切に思う人ならみんな同じことを思うよ。もっと自分自身を大切にしてほしいって。」「家に行っておかゆを作っていたら、シンクが磨かれていて、とっても綺麗だったんだよ。よく分からないんだけど、なんだかそれを見て安心した。家庭的な人といるんだろうなって。格好悪い所は見せたくないんだろうね。辛そうにしていたから、後先考えずに行ってしまったけど、状況が分かって良かったよ。マニキュアとか普通に置いてあって、父の無頓着ぶりは相変わらずだったけど、実家にはない温もりを感じた。」なんとも言えない間があった後、ふっと笑ったK君が私の顔を見て、伝えてくれました。「ばーか!!お前絶対ばかだろ。大バカ者だ。」本当はもっと言いたいことがあったはず。それでも、本気で私が納得している様子を見て、一緒になって笑ってくれた彼。“人がなんと言おうと、こいつは自分で納得してから前に進もうとする。面倒くさい女だ。でも悪くない。”アイツの言葉を代弁するときっとこんな感じ。ばかと言われて嬉しい時なんてそうそうない。